次男は今日,仕事の後に移動するため,昨日の夜に次男のリクエストでブロンコビリーに行った。
案内された席に座ると次男は言った。
「最初にブロンコビリーに来た時に座った席と同じ席です」
10年くらい前のことなのによく覚えている。
食べながら,次男はポツポツ話し始めた。
「二人で仲良くやってくださいね。
あなたはイラつかせるときがあるので‥」
「どういうとき?」
「例えば、明日が期限ということがあると、『〇〇はやったの?』ってあなたが聞くと、『明日やるから』って答えたときに、『ほんとにやるの?』って言ったりするじゃないですか。
そうではなく,最後に、相手を安心させることが大切なんです。
『明日やる』って言ったら、『そうだね。明日やれば間に合うね』って言えばいいんです。
それで,相手がやらなかったときには責めるんじゃなくて『なんか考えはあるの?』って聞いて、「〇〇をやってみる』って言ったら、『それなら、大丈夫だね』って皮肉じゃなく心から言うんです」
「分かった。そうするよ」
「良いんですか?
自分よりずっと若い人間の言うことを、そのまま聞き入れて」
「言った人が若かろうが,年を取っていようが,納得すれば,それをやってみるだけだよ」
書いてみると,なんか変なやり取りだとは思うが、次男はわたしに必要なことを言ってくれたと感じたし、次男が教えてくれたような、人を信頼し、温かく応援できる人間になりたいと心から思った。
食事の後,いつもの恒例のじゃんけんになった。
負けた人が支払う。
わたしはかなりの割り合いで勝つのだが、昨日は負けた。
次男が言った。
「勝つべくして勝ちました」
「勝つって決めてたの?」
「はい。そうです」
「ママは、ご馳走したいなって思ってジャンケンした。
だから,二人の思う通りになったね」
帰ってからは,引越しの準備。
そして,次男はみくと過ごせる最後の日になるだろうからと,みくを自分の部屋に連れて行った。
みくは,よく次男の布団の上や枕元にいた。
家には次男が買った,キャットタワーや爪研ぎなどがたくさんあった。
みくは次男に大切にされていることをよく知っていた。
次男がみくと最後の時間をどんなふうに過ごしたのかと思うと胸がいっぱいになる。
そして、翌朝。
次男はいつものようにさらっと出て行こうとしたので、
「握手して」とお願いしたら,手を差し出してくれた。
「これからもたくさん楽しんでね」
それだけ言うのがやっとだった。
次男は「ありがとう。バイバイ」と言って出かけた。
この「バイバイ」は、次男が毎朝言う言葉だ、
わたしは「行って来ます」って言って欲しいのだが,決まって「バイバイ」
なんだか,今日の「バイバイ」を聞いて、この日のために,ずっと「バイバイ」って言ってたのかなって思った。
坂道を登って行く次男の姿を見届けた。
泣かないで見送れた。
まぁ 気を許していないだけなんだけど‥
本当に言いたいことは「ありがとう」だったと後で気づいた。
あなたのお母さんでいさせてくれてありがとう。