ケントはイライラすると色んなものにあたっていた。
わたしや弟たちにもあたるが、クッションをたたきまくったりしていた。
それで、パンチングボールを買った。
先端に赤いボールが付いていて、それを叩くとバネが入っているので戻ってくる。
これは大正解で、ケントはクッションの代わりにパンチングボールを叩くようになった。
わたしもやってみたが、良い感じだった。
土台の部分に水を入れて重しにするようだったが、水だと腐るので、猫砂を入れてみた。
わが家にはその当時三匹のニャンたちがいたので、それを思いついた。
これは良いアイデアで、パンチングポールとさよならするまで、重しの入れ替えをしないで済んだ。
多分、パンチングポールには3年くらい、お世話になったと思う。
同じ頃、家庭用のトランポリンも買ってみたが、これは誰も使うことがなく、たたむ前の洗濯物置き場として使われていた。
それはそれで助かっていたが‥
ケントは、教育相談所は気に入っていたので、1ヶ月に1回のペースで通っていた。
わたしも一緒に行って、先生に話を聴いて頂けるので、楽しみだった。
ケントも「今日は何をしようかなぁ?」と先生と遊ぶものを考えながら楽しみに出かけた。
ところがある日、教育相談所に行くために車に乗った瞬間からブツブツ言い出した。
「今日は歩かないからな」
「それじゃあ、今日はやめておく?」
「嫌だ、行く。
だけど歩かない」
「どこか痛いの?」
「痛くないけど歩かない」‥‥
こういうやり取りを駐車場に着くまでやっていた。
そして車を降りるとき、疲れ果てたわたしが言った一言が逆にケントが降りるきっかけとなった。
つづく
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次回、ケントのzoomお話会は「思春期からおとなになってから」8月13日金曜日、夜の9時からです。
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