★International news of last week(先週の国際ニュース3月25日号)
↓メルマガ「国際ニュース・カウントダウン 3月18-24日(日本時間18日午前) by INCD-club」
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◆モスクワでテロ、130人超死亡(22日)☆
・モスクワ郊外のコンサートホールで乱射事件が発生。130人以上が死亡した。
・IS(イスラム国)が犯行声明を出した。ロシア当局は実行犯4人などを拘束した。
・プーチン大統領はテレビ演説し、実行犯らがウクライナに逃亡しようとしたなどと主張。
・ウクライナは関与を否定した。米国はテロ情報を掴み警告していたと述べた。
・17日に大統領選でプーチン氏が再選されたばかり。治安の揺らぎを指摘する声もある。
・一方、事件を機にプーチン氏が更なる統制強化に動く可能性も指摘される。
・ウクライナ戦争にも様々な形で影響する可能性があるが、方向性は不透明だ。
◆日銀がマイナス金利解除、米欧は緩和方向(19日)☆
・日銀はマイナス金利の解除など、大規模緩和策の解除を決定した。
・政策金利はマイナス0.1%→0-0.1%に引き上げる。利上げは2007年以来17年ぶり。
・超短金利操作の廃止や上場投資信託などリスク資産の新規買い入れ終了も決めた。
・足元のインフレ率が上昇。2%の目標の安定的実現が見通せるためと説明した。
・日銀はデフレ対応のため、2013年から異例の緩和策を採用してきた。
・米欧中銀は2022年以降引締め→今後緩和に動こうという局面で、日本とは逆だ。
・中国は2010年代以降金融緩和の傾向にある。
・米FRBは20日、政策金利(5.25-5.5%)の据置きを決めた。年内3回の利下げを示唆した。
◆米司法省がアップル提訴、規制当局GAFA全てを提訴(21日)☆
・司法省はアップルを反トラスト法違反の容疑で提訴した。
・iPhoneなどで寡占的な地位を乱用。公正な競争を阻害していると主張する。
・具体的にはアップルストア出店への高額手数料、他スマホへの乗換え妨害などを挙げる。
・米司法省とFTC(連邦取引委員会)は2020年以降大手IT企業の規制を強化している。
・GAFA4社をすべて提訴した。
・GAFA側は反論。提訴の行方は、IT業界の未来図を変える。
◆香港国家安全条例採択、締付け一段と(19日)
・香港立法院は国家安全条例案を可決した。
・2020年施行の香港国家安全法を補完する内容。
・スパイ行為の取締りなど、従来の規制を一段と強化している。
・ネット検閲などが強まる恐れもあり、外国企業の経済活動に影響する可能性も強まる。
・香港の1国2制度は一層形骸化。アジアの金融・情報センターとしての機能低下が進む。
◆エヌビディアが新型AI半導体(18日)
・エヌビディアは最新のAI用半導体を2024年に投入すると発表した。
・GB200 といい、新型の画像処理(GPU)と演算処理(CPU)の半導体を組合わせて提供。
・最新のLLM(大規模言語モデル)の処理速度は従来の半導体の30倍に高まるという。
・同社はAI向け半導体で世界の8割のシェアを握る。
・時価総額は過去1年で3倍増し、現在はMS、アップルに次ぐ。
・同社は自社工場を持たず、生産はTSMCなどに委託する。
・AI用半導体は半導体市場の中でも比重を高め、2027年には2割超に達する見込み。
・エヌビディアの動向から、IT産業の動向や方向性が浮かび上がってくる。
◎寸評:of the Week
【世界経済分断の時代の金融動向】
日本の日銀がゼロ金利政策を解除し、17年ぶりに利上げを実施した。一方欧米は過去約2年の引き締めを終了し、緩和に動こうとしている。(→国際ニュースを切る)
【英キャサリン妃】
英ウィリアム皇太子の妻のキャサリン妃が、がんと診断され化学治療を受けていると22日発表した。ニュースは瞬く間に世界を駆け巡り、多くのお見舞いなどのメッセージが送られた。英王室や同妃に対する世界の関心の高さを改めて見せつけた。英王室では、チャールズ国王もがんを診断され、治療を受けている。
◎国際ニュースを切る
◆世界経済分断の時代の金融動向
日本の日銀がゼロ金利政策を解除し、17年ぶりに利上げを実施した。一方欧米は過去約2年の引き締めを終了し、緩和に動こうとしている。中国は経済減速の中で、2010年代半ば以降緩和を続けている。世界経済の分断が進み先行き不透明感が増す中、各国の金融政策も複雑な動向を示す。
▼米は引締め→緩和へ
米国の金融政策は、2008年のリーマンショック以降、おおむね次のように動いてきた。
・2008-2010年代初め:リーマンショック対応で緩和。非伝統的な量的緩和も採用。
・2010年代半ば以降:金融の正常化を目指して引締め
・2020年:コロナ対応で再び緩和
・2022年:ウクライナ戦争などに伴うインフレ対応のため引締め
・2023年後半以降:引締め停止、緩和のタイミングを探る
▼欧州も緩和探る
欧州の場合、2010年代前半にユーロ危機を経験。経済が力強さを欠く中で、欧州中銀(ECB)は緩和策を続けた。2014年には民間銀行がECBに預け入れる資金の金利をマイナスにするマイナス金利政策を導入。2022年まで続けた。
2022年に入るとインフレ対応から引き締めに転じ、同年7月から2023年9月までに合計10回の利上げをした。その後は据置を続け米国同様緩和のタイミングを探っているところだ。
▼日本は引締めへ
日本は1990年代からデフレが続き、欧米とは異なる独自の金融政策を採用してきた。2000年代にゼロ金利、あるいはゼロ付近の金利を維持したがデフレ脱却のめどが立たず、2013年に日銀は黒田総裁の下で超緩和策に踏み切った。黒田総裁下の政策は、大規模な量的緩和策に始まり、マイナス金利の導入(2016年)や長短金利操作の導入(2016年)などに広がった。
超緩和策の効果については議論が分かれるが(そもそも立場の異なる人の間で生産的な議論が行われることが少ない状況)、大規模な緩和にも関わらず、目標とした物価の(安定的な)2%上昇は、2020年代初めまで実現しなかった。
2022年のウクライナ戦争による世界的なインフレで、日本の物価も上昇。日銀は2023年に発足した植田体制の下で政策転換の機会をうかがっていた。
▼中国派緩和続く
中国の金融政策も欧米や日本と異なる動きを見せる。中国は日米欧と異なり、アナウンスメント効果狙いより小刻み調整が目立つ。インフレや人民元相場、経済成功率などに配慮して政策を判断しているとみられる。
中国経済は成長率が徐々に低下し、最近はデフレ懸念もささやかれる。こうした中で、金利は2010年代半ば以降下降(緩和)局面にある。
▼途上国の金融:米政策が左右、混乱も
途上国の金融は、米国の金融政策の影響を受けて動いてきた。通貨相場維持のために、米国の政策の後追いを迫られることも多い。米国の利上げが通貨安やインフレをもたらすことも少なくない。通貨安が対外債務(ドル建てが多い)負担の増大につながることも多い。通貨危機からハイパーインフレや国家の財政破綻に至るケースも見られる。
▼各国・各地で様々な方向へ
世界の経済・金融は激しく変化している。冷戦後には経済のグローバル化が進み、各国の経済や景気のシンクロ(同期化)が進むとの見方があった。
現在は米中対立やウクライナ戦争の影響で世界経済の分断が進む。経済より安保優先が強まり、様々な規制が入り込む。金融市場はFintechなど新しいサービスが発達する一方、新たな規制も強まり、一段と複雑で見えにくくなっている。
日本のゼロ金利解除、欧米の緩和への転換、中国の緩和継続。複雑化する世界経済の中で、各国・各地の金融政策も様々な方向に動いている。
◎今週の注目(3月25-31日&当面の注目)
・ウクライナ戦争、ガザ戦争は引き続き世界の注目事項。
・インドの総選挙が4-5月にかけて行われる。