International news of last week(先週の国際ニュース3月18日号)

 

↓メルマガ「国際ニュース・カウントダウン 3月11-17日(日本時間18日午前) by INCD-club」

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ロシア大統領選、プーチン圧勝で5回目当選(15-17日)☆

・大統領選が行われ、現職のプーチン氏が約9割の得票で当選した。投票率は74%。

・2000年に就任以来通算5回目。任期は2030年までで、通算30年の長期政権になる。

・同氏は17日勝利宣言。ウクライナ戦争継続の姿勢を改めて強調した。

・選挙は立候補制限など締付けが強く、当選は確実視された。得票率などが注目された。

・併合したウクライナ東部4州でも投票が行われ、プーチン氏が各州で約9割を獲得した。

・大統領再を受けロシアがウクライナ戦争などでどう動くか、世界が注目する。

米下院がTikTok規制法案可決(13日)☆

・下院は米国内でTikTokの利用を禁止する法案を可決した。

・TikTok利用者の情報が中国政府に流出したとの疑惑が過去に浮上。

・米中ハイテク摩擦が継続する中で、規制論がくすぶっていた。

・法案は敵対国(中ロ・イラン・北朝鮮)のアプリを禁止する内容で、TikTokを名指しした。

・親会社のバイトダンスが6カ月以内に米TikTok事業を売却しなければ、利用を禁止する。

・米国内のTikTok利用者は月間1億7000万人。若者中心に情報源とする人も多い。

・法案が上院を通過すれば、バイデン大統領は署名すると表明している。

ポルトガル選挙、極右が躍進(10日)☆

・総選挙(1院制・比例)が行われ極右政党が躍進。中道左・右派の2大政党は後退した。

・与党の中道左派社会党は230議席中117→77程度に減らし敗北。

・社会民主党中心の中道右派が76→79程度と最大。ただし過半数には届かなかった。

・極右のシェーガは18%を獲得し前回の12→48議席に増やした。

・2022年選挙で社会党が勝利したが、リチウム開発事業などでスキャンダルが発覚。

・コスタ首相が2023年11月に辞任を表明し、総選挙になった。

・シェーガは2019年創設の極右ポピュリズム政党。腐敗防止や移民規制などを主張する。

・中道右派は少数与党として組閣する意向を示すが、流動的だ。

・同国はこれまで極右の台頭が押さえられてきたが、ここにきて存在感を増している。

米民主幹部がイスラエル首相批判、総選挙要求、大統領も支持(14日)

・上院民主党トップがイスラエルのネタニヤフ首相を批判、総選挙を求めた。

・シューマー院内総務。議会演説で語った。

・ガザへの攻撃で、国際社会でのイスラエルへの支持が大幅に低下していると指摘。

・ネタニヤフ首相はイスラエルの利益より自身の利益を優先したと断じた。

・米与党の指導者が同盟国に対し、内政干渉と受け止められる発言をするのは異例。

・バイデン大統領は演説を支持。ネタニヤフ批判は米国としての意思表示の色彩を帯びる。

・ガザではすでに3万人以上の市民らが死亡。イスラエルは攻撃の手を緩めない。

・米国は民間人への配慮や休戦を求めるが、展望は見えない。

インドが市民権改正法を施行へ、選挙にらみ、ヒンズー教優先鮮明に(11日)

・モディ政権は市民権改正法の施行を発表した。

・同法は隣国から迫害を逃れてきた人に市民権を与える。

・イスラム教徒は対象外で、実質的にヒンズー教徒を優遇する内容だ。

・2019年に国会で法案を成立させたが、イスラム教徒の抵抗で施行を見合わせていた。

・施行発表は、4-5月投票の総選挙をにらみヒンズー教徒の支持を固める狙い。

・総選挙ではモディ政権与党の有利が予測されている。

・同政権はヒンズー教至上主義の傾向が強まっている。

 

◎寸評:of the Week

 

【ロシア大統領選】 

ロシア大統領選が15-17日に実施され、プーチン大統領が約9割の票を得て当選した。ウクライナ戦争下での選挙。”圧勝”を背景に大統領は戦時体制を強化すると見られる。(→国際ニュースを切る)

 

国際ニュースを切る

 

★ロシア大統領選の意味と世界の課題

ロシア大統領選が15-17日に実施され、プーチン大統領が約9割の票を得て当選した。ウクライナ戦争下での選挙。”圧勝”を背景に大統領は戦時体制を強化すると見られる。2000年から続くプーチン体制は強権色を一層強め2030年まで続く。

選挙はロシアや世界の現状をどう映し、選挙を受けてプーチン体制はどう推移していくのか。ウクライナ戦争はどのなるのか。論点を整理する。

▼官製選挙で圧勝

選管によれば、98%開票の時点でプーチン氏の投票率は87%で、2位以下の候補を引き離した。投票率は74.22%だった。

選挙は当局の強い規制の下で行われた。立候補者は事前に制限され、プーチン氏以外の有力候補はいなかった。秘密投票というには程遠く、記名が周辺から覗かれたり、兵士が投票箱を持って票の回収に回る光景も映像で流れた。

投票日は前回までの1日→3日に延長された。2022年にロシアが併合を宣言したウクライナの南東部4州住民にも選挙権が与えられ、各州でプーチン氏が9割前後を得票した。

▼勝利宣言で団結と戦争遂行を強調

プーチン氏は17日深夜に勝利宣言を行った。この中でロシアは「1つのチーム」と団結を強調した。同時にウクライナ戦争ではロシアが有利に進んでいると力説。戦争の遂行を改めて強調した。

一方ウクライナのゼレンスキー大統領や欧米各国は、選挙が不正なものであるとし、その正当性を否定した。

▼長期政権

プーチン氏が最初に大統領に就任したのは2000年。その後首相だった時期を経て、これまで4期にわたり大統領を務めてきた。権力の座に座ってから、途中の首相時代も含め25年になる。

当初の期限は2024年までだったが、2020年の憲法改正でさらに2期12年の就任を可能にした。今回の選挙による任期は2030年まで。仮に次の選挙で再選されれば、2036年まで大統領の地位にとどまる。その場合、現在71歳のプーチン氏は83歳になる。

▼プーチン政権の経緯

プーチン政権は当初、法の支配など欧米流価値観の一部を取り入れ、西側との協力関係を維持してきた。しかし2000年代後半から次第に関係悪化した。背景にはロシアの強権化や、NATOの東方拡大の進展などが指摘される。

2014年にはウクライナ危機に際し、クリミア半島を併合。西側との関係は決定的に悪化した。この時に、G8から除名されている。

2022年2月にはウクライナに侵攻し世界を揺るがした。当初描いた短期戦での決着の目論見は外れ、戦争は長期化している。西側はウクライナを支援。欧米と中ロなどの対立は深まり、世界の分断が進んだ。そうした中での大統領選だった。

▼戦争体制強化か?

プーチン政権は今回の大統領選により、戦争に対する国民の支持を得たと位置づけるだろう。圧勝を背景に、戦時体制の強化を進めるとの見方が強い。

注目されるのが追加動員の可能性。プーチン政権はこれまでウクライナ戦争の兵力について、志願兵で十分に対応できていると説明し、一般市民からの動員には言及を避けてきた。2020年9月に予備役の部分動員を発動し、国民の反発を買ったことを意識したためとみられる。

しかし大統領選での圧勝を受けて、追加動員に踏み切るという観測もある。ウクライナの戦線は膠着しているが、兵器の量などではロシアが優位に立っている。ここに兵力増強が加われば新たな攻勢も可能になる。

▼ウクライナ戦争の行方

無論、ウクライナ戦争の行方はロシアの兵力増強だけで語れるものではない。欧米のウクライナへの支援、ドローンやサイバーなどの技術の変化、ウクライナ国内の政治情勢など様々な要因が左右する。さらに米大統領選でトランプ氏が当選すれば、議論の大前提を揺るがしかねない。

ただ、ロシアが大統領選を受けて戦時体制強化にうごくであろうことは軽視できない。プーチン大統領は欧米に対し対決姿勢をあらわにし、核使用の威嚇も繰り返す。西側は中長期的な課題として、ロシアの軍事的脅威に直面する。ロシア大統領選は、そんな現実を課題を改めて映した。

▼ロシア社会の動き

大統領選はロシア社会の断面をいくつか見せた。選挙は自由投票とは言えない形で行われ、プーチン政権の支配強化をうかがわせた。2月に死亡した反体制指導者ナワリヌイ氏の妻は17日正午に抗議の投票を呼びかけた。モスクワで投票所に火炎瓶を投げ込まれるなど抗議や妨害活動もあった。しかし各地で大きな混乱はなく投票が進んだ。

今回選挙には電子投票も採用された。投票率を高めるためか、電子投票をした人には高価な景品が当たるところもあった。これも選挙を巡るエピソードの1つだ。

ロシアでは報道規制が進んでいるため、大統領戦を巡る全体像は見えにくい。しかしいくつかの事例は、ロシア社会の一端を覗かせた。

▼プーチン政権の将来

世界のロシア・ウォッチャーらの間では、プーチン政権の行方への関心も高い。大統領選でプーチン氏への権力集中は一層進みそうだが、同時に高齢化のリスクも無視できなくなっている。ポスト・プーチンも睨みロシアが安定した政権や政治を維持できるかは、世界情勢にも関わる。

当面は、プーチン新政権の人事が注視される。ロシアでは大統領有事の際には、首相が大統領代行を務める(数か月以内に新たな大統領選)。首相の役割は重要だ。ミシュスチン元首相はテクノクラートで政治的野心のない人物とされる。首相はじめ主要閣僚の人事には様々な観測が流れている。

▼世界への影響

ロシアのウクライナ侵攻は、世界の枠組みを大きく揺さぶっている。西側はロシアの軍事的脅威に改めて向き合うことになり、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟など安全保障の枠組みは変わった。

欧米と中ロの対立・分断が深まり、世界は新冷戦を迎えたとの指摘もある。核兵器使用の脅威も高まった。

経済より安保を重視する傾向が強まり、各国は国防費を拡大している。世界の分断は自由貿易のメリットを縮小させている。経済的なマイナスの影響は大きい。

大統領選を機に、ロシアやウクライナ戦争の行方が、世界の未来を左右することを改めて想起した。大統領選から得るメッセージは重要だ。

 

今週の注目(3月18-24日&当面の注目)

 

・ロシア大統領選を受けてプーチン大統領がどんな動きを見せるか。ロシア社会でどんな動きがあるか。世界が注目する。

・ウクライナ戦争、ガザ戦争は引き続き世界の注目事項。

・日本の日銀が18-19日に政策決定会合を開催。ゼロ金利を解除し利上げに踏み切る可能性がある。米FRBは19-20日に公開市場委員会を開く。

・EU首脳会議が21-22日に行われる。