★International news of last week(先週の国際ニュース2月19日号
↓メルマガ「国際ニュース・カウントダウン 2月12日-18日 by INCD-club」
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◆インドネシア大統領選、プラボウォ国防相が勝利宣言(14日)☆
・大統領選が実施され、プラボウォ国防相が勝利宣言した。
・主要民間調査機関によると同氏が6割弱を得票。決選投票に進むことなく当選する。
・同氏はスハルト元大統領の女婿。スハルト時代には人権弾圧も指摘ある。
・ジョコ現大統領の閣僚に就任。ジョコ路線の継承を訴える。
・副大統領にはジョコ氏長男のギブラン氏を据えた。
・インドネシアはジョコ政権の10年間で年5%程度の成長を実現。開発が進んだ。
・一方で強権化が進んだとの指摘もある。プラボウォ政権で傾向が続く可能性がある。
・議会選でプラボウォ氏のグリンドラ党は3位にとどまった。1、2位は現与党系。
◆ウクライナ軍が東部要衝から撤退(17日)☆
・ウクライナ軍は東部ドネツク州の要衝アブデーフカからの撤退を決定した。
・ロシア軍は2023年10月ごろから同地への攻勢を強めていた。
・前線の戦況が膠着する中で、久しぶりに支配地が変わる。
・欧米からの支援停滞で、ウクライナ軍は砲弾不足に直面する。
・ウクライナは昨年末から、当面防衛を強化しその後攻撃に転じる「積極防衛」に徹する。
・ウクライナ戦争は2月24日で開始2年を経過、3年目に入る。
◆ロシアの反体制派指導者、ナワリヌイ氏が死亡(16日)☆
・反体制派指導者のナワリヌイ氏が収監先の刑務所で死亡した。当局が発表した。
・同氏は2000年代から、ネットなどを使いプーチン政権への抗議活動を展開。
・2010年代には何度か全国的なデモを主導した。
・2020年8月にシベリアからモスクワに向かう機中で毒殺未遂に遭い、ドイツで治療。
・2021年にロシアに帰国後、逮捕・有罪となった。獄中からウクライナ侵攻を批判していた。
・反体制派や欧米各国は、死亡がプーチン政権の責任と批判する。
・ロシアでは、反体制派指導者らの暗殺な謎の死亡が相次ぐ。
・同国の闇がまた一つ浮かび上がった格好だ。
◆NATO防衛義務巡るトランプ氏発言が波紋、国防費2%は18カ国に ☆
・米国のトランプ前大統領のNATO防衛義務を巡る発言が波紋を広げている。
・防衛費がGDP比2%以下の加盟国に対し、防衛義務を果たさない可能性に言及。
・NATOの根幹である集団安全保障を骨抜きにしかねないと、批判が相次いだ。
・NATOのストルテンベルク事務総長は声明で「全加盟国の安保を損なう」と批判。
・その上で、2024年に加盟31カ国中18カ国がGDP比2%以上になるとの見通しを示した。
・トランプ氏は11月の大統領選で再選される可能性があり、発言は世界を揺るがす。
・英国際戦略研は13日2024年のミリタリーバランスを発表した。
・2023年の世界の軍事費は前年比9%増となり、最大を更新したという。
◆エヌビディアの時価総額がアルファベット越え、半導体新ビジネス(14日)☆
・米エヌビディアの時価総額がアルファベット(グーグル)、アマゾンを超えた。
・ハイテクではマイクロソフト、アマゾンに次いで3位。サウジのアラムコも含め世界4位だ。
・14日の時価総額は1.83兆ドル。
・同社は半導体と共に関連するソフトを提供。ハードとソフト一体のサポートで成長する。
・米ハイテク企業では、GAFAMと同社、テスラがビッグ7と呼ばれる。
◎寸評:of the Week
【インドネシア大統領選】
インドネシアの大統領選が行われ、プラボウォ国防相が勝利宣言した。ジョコ現大統領の10年間で、同国はどう変化したか。人口世界4位の地域大国の行方は。(→国際ニュースを切る)
【ウクライナ戦争巡る動き】
ウクライナ戦争は2月24日で2年を経過し、3年目に入る。ウクライナを巡り様々な動きが重なった。
ウクライナ軍は東部ドネツク州の要衝アブデーフカからの撤退を決定した。戦線の膠着が続く中で、久しぶりの支配地の変更。欧米の支援の停滞による、ウクライナ軍の砲弾不足も一因になっている。
ミュンヘンでは16-18日に安保会議が開かれ、ゼレンスキー・ウクライナ大統領が演説。戦争はウクライナだけの問題ではなく、世界秩序に関わる問題であると強調し、欧米に支援継続を求めた。ドイツのショルツ首相らは欧州の結束を求めた。
米国のトランプ前大統領は、NATOの加盟国がGDP比2%の国防費支出を実現しない場合、防衛義務を果たさない可能性があると言及。これがNATO加盟国などの反発や懸念を生んだ。NATOのストルテンベルク事務総長は、2024年に加盟31カ国中18カ国が2%目標を超えると語った。
ウクライナ戦争の影響で、世界の軍事支出は拡大している。英国際戦略研究所(IISS)は2023年の世界の国防支出が前年比9%増になったと発表した。
ロシア国内では、反体制派指導者のナワリヌイ氏が、収監先の刑務所で死亡した。ロシア当局による殺害との情報も流れる。ロシアでは3月17日に大統領選が予定される。
【ラファ攻撃に世界の目】
イスラエルによるガザ地区南部のラファ攻撃が世界の耳目を集める。ラファには100万人以上の逃げ場のないパレスチナ人が避難している。ここにイスラエルは散発的に攻撃を実施。被害が広がっている。
12日には人質2人の救出作戦を実施。それに伴う攻撃で67人以上が死亡した。
イスラエルはラファへの本格的な地上侵攻を準備する。ネタニヤフ首相はラファ攻撃なしに対ハマスの戦争で勝利はないと言い切る。バイデン米大統領は民間人犠牲を伴う侵攻の自制を求めるが、歩み寄りは少ない模様だ(米国はイスラエルに砲弾などを輸出している点にも留意)。国際社会からは、ジェノサイドとの批判が出る。
エジプトはガザからの難民流入を懸念し、国境付近に壁に囲まれた地域を建設中という。ガザ戦争は既存の秩序を揺るがし、世界が育ててきた人道や人権の概念を大きく傷つけている。
◎国際ニュースを切る
◆インドネシア大統領選が映す現状と課題
インドネシアの大統領選が行われ、プラボウォ国防相が勝利宣言した。同国は人口世界4位の地域大国で、世界最大のイスラム教国でもある。約25年前に民主化、その後ほぼ順調に経済発展を遂げてきたが、先進国を目指すには課題も多い。選挙戦は同国の現状と課題をどう映したか。
▼決選投票なしで勝利
大統領選は2014年から2期務めたジョコ現大統領の後継を争って2月14日に行われた。プラボウォ氏とアニス前ジャカルタ特別州知事、ガンジャル前ジャワ州知事の有力3候補が立候補、民間調査機関の推計ではプラボウォ氏が6割弱を得て、決選投票なしでの勝利を決定づけた。プラボウォ氏は14日勝利宣言した。
民間機関の推計では、アニス氏の得票は24-25%、ガンジャル氏が15-17%だった。
▼ジョコ路線の継承
同氏はスハルト元大統領の女婿で、スハルト時代には人権弾圧に関わったとの指摘もある。元々ジョコ大統領のライバルで、2014年と2019年の大統領選ではジョコ氏(闘争民主党を支持母体)に対抗して立候補し、いずれも敗れた。
しかしジョコ再選後はジョコ氏支持に転じ、国防相になった。今回の選挙では副大統領にジョコ現大統領の長男のギブラン氏を選び、ジョコ氏の支持層を取り込んだ。
選挙戦ではジョコ路線継承を前面に出し、加工産業の育成などを主張。ジョコ氏が打ち出した首都移転(ジャカルタからカリマンタン島のヌサンタラ)も継続を約束した。
候補者のうちアニス氏は首都移転の見直しなどジョコ路線一部修正を主張。ガンジャル氏はジョコ路線継承の路線だった。
▼地域大国、多様性の国
インドネシアは東南アジアの大国だ。人口は2億8000万人近くで世界4位。GDPは1.3兆ドル(2023年)で、ASEAN10カ国の半分近くを占める。石炭など資源大国でもある。
赤道を挟み南北約2000キロ、東西5000キロ以上に1万6000の島が散在する世界最大の島嶼国。ここに約300の民族が暮らし、言語・方言は500以上存在する。
人口の9割近くがイスラム教徒で、世界最大のイスラム国家ともいえる(イスラム教徒の人口はインドが最大)。一方、キリスト教徒やヒンズー教徒、仏教徒などが共存する。民族や宗教など、多様性の国家だ。
▼民主化から約25年
第2次大戦後の独立後、非同盟主義をリードしたスカルノ体制を経て、60年代後半以降スハルトの独裁体制が続いた。1997年のアジア通貨危機を契機にスハルト体制は崩壊し、民主化が実現した。
その後ハビビ、ワヒド、メガワティ政権の下で不安定な政治状況が続いた後、2004年大統領選(初の直接投票)でユドヨノ氏が当選、2期10年務めた。2014年からはジョコ氏が2期10年大統領を務め、政治は比較的安定した。
▼経済成長と国際的な存在観の拡大
ユドヨノ、ジョコの20年間に経済も発展した。資源開発や農業に加え製造業の育成も徐々に進んだ。インフラの開発も加速し、ジャカルタの地下鉄(2019年)などが完成した。
インドネシアの1人当たりのGDPはアジア通貨危機前の1997年の1300ドルから1998年は570ドルに低下(ルピアが約75%切り下がった影響も出ている)。その後回復した。ジョコ大統領就任の2014年には約3500ドルだったが、2023年には5000ドルに増加した。
ジョコ政権は「下流化」という戦略で、天然資源をそのまま輸出するのではなく、加工をしたうえで輸出する政策を推進した。
政治の安定と経済成長により、国際的な存在感が増大した。2023年にはG20の議長国として世界に情報を発信。グローバルサウスの代表国の一つになっている。
▼見え隠れする課題
一方で課題も見え隠れする。スハルト政権崩壊から4半世紀を経て、インドネシアの民主化は定着した。大統領選は大きな問題なく実施され、権力の移譲がスムースに行われる。今年の選挙で不正や混乱が問題になったバングラデシュやパキスタンと対比すればその差は明白だ。
しかし、ジョコ政権2期目は主要政党がオール与党化し、政策決定が強権的な方法で決定される傾向も指摘された。今回の大統領選では、ジョコ氏長男の副大統領立候補資格を巡り、憲法裁判所が届け出直前に解釈の変更を行った。縁故主義や強権化の弊害を指摘する声は少なくない。
経済面で、ジョコ政権は2045年までにGDPで世界のトップ5を実現するとの目標を掲げた(2023年は16位)。また、2045年に先進国入りを目指すという。
ただ先進国になるには1人当たりのGDPを現在の裁定4-5倍に増やす必要がある。タイやマレーシアなどインドネシアに先駆けて経済発展を実現した国は中進国の罠に直面した。インドネシアの先進国入りの道筋が描かれているわけではない。
こうした課題は、10月に就任するプラボウォ新大統領にも引き継がれる。
▼世界的な視点から
インドネシアが抱える課題は多くの途上国に共通する。しかし同国の場合、世界が特に注目する理由がいくつもある。
東南アジアの地域大国であること。同国が多数の民族・宗教を抱える多民族国家であり、「多様性の中の統一」を目指していること。世界最大のイスラム国家として、経済成長や民主主義の発展を目指していることなどだ。
インドネシアの行方は、世界全体にも影響を及ぼす。注目を注ぐ必要が大きい理由はこんなところにある。
◎今週の注目(2月19-25日&当面の注目)
・ウクライナ戦争が24日でまる2年を経過し、3年目に入る。
・ガザ戦争は南部ラファへの攻撃を巡り、世界の関心が集まる。
・ロシアの大統領選が3月17日に行われる。