International news of last week(先週の国際ニュース2月12日号)

 

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ウクライナ大統領が軍総司令官解任(8日)

・ゼレンスキー大統領は軍トップのザルジニー総司令官を解任した。

・後任にはシルスキー陸軍司令官を充てた。

・ザルジニー氏は2002年2月のロシアによる侵攻以来、首都キーウ防衛など功績を残した。

・しかし昨年6月からの反攻作戦が失敗する中、大統領との確執も伝えられた。

・総司令官は国民の人気が高く、大統領が警戒を示したとの見方もある。

・戦争の最中の総司令官交代は異例。ロシアとの戦争に影響を及ぼす可能性もある。

・戦線は膠着が続く。欧米の対ウクライナ支援の行方も足元の焦点になっている。

◆ガザ戦争4カ月、休戦交渉は難航、イスラエルは南部ラファに攻撃(7日)☆

・ガザでの戦争は開始から4カ月を経過。イスラエルによるガザ攻撃が続く。

・ハマスは6日休戦・人質解放の提案を示した。カタールなどの和平案に回答する形。

・イスラエルのネタニヤフ首相は7日拒否。対ハマス軍事作戦の継続を表明した。

・イスラエルはガザ南部ラファへの攻撃を始めた。ガザの全主要都市が攻撃対象となった。

・ラファには100万人以上の市民が避難。攻撃による民間人の被害も拡大している。

・米国はラファでの被害回避に向け働きかけるが、見通しは付かない。

・ガザでは2万8000人以上の死者が出ている。

◆米大統領選、裁判・捜査が話題、バイデン氏の記憶力にも焦点

・米連邦最高裁は8日、大統領選の共和党予備選参加資格を巡る口頭弁論を開いた。

・コロラド州最高裁は昨年トランプ前大統領の参加を認めないと判断、同氏が上訴した。

・口頭弁論ではリベラル系を含む判事から参加を認める発言が相次いだ。

・一方ワシントンの連邦控訴裁は6日、前大統領の免責特権を認めない判断を下した。

・トランプ氏が大統領選結果を覆そうとした罪で起訴された件。裁判継続が可能になる。

・バイデン大統領の機密文書持出し問題を捜査した特別検察官は8日報告書を発表。

・刑事訴追しないと結論付けた。理由の1つとして同氏の記憶が乏しかったためと挙げた。

・バイデン氏は同日夜記者会見して反論。記憶は問題ないと強調した。

・裁判や捜査は大統領選を様々な形で左右する。その度合いが従来以上に強まる。

◆アゼルバイジャン大統領選、現職アリエフ氏圧勝で5選(7日)☆

・大統領選が行われ、現職のイルハム・アリエフ氏が9割超の得票で圧勝した。

・同国は昨年、ソ連末期から続くアルメニアとの領土紛争に勝利。国民の支持を得た。

・同国はカスピ海沿岸の産油国。チュルク系住民、イスラム教徒が多い。

・1980年代からナゴルノカラバフ問題でアルメニアと対立。2023年にナフゴルノを併合した。

・1991年の独立以来ヘイダル・カリモフ大統領が権力を掌握。

・2003年に息子のイルハム現大統領が就任。親子の権力継承になった。

・ソ連との関係を維持しつつトルコとの関係を強化。武器の購入なども拡大した。

◆パキスタン選挙、野党系が予想以上に健闘、政治混乱も(8日)☆

・下院選(定数336)は野党系無所属が予想以上に健闘。与野党が共に勝利宣言した。

・小選挙区266議席は最大野党PTI系の無所属が100議席を獲得した。

・与党のPML(N)は71議席にとどまった。与党連合のPPPが54議席。

・小選挙区以外は女性や非イスラム教徒の特別枠。最終結果は集計中だ。

・同国は軍が隠然たる力を持ち、政権の行方を左右する状態が続く。

・2018年選挙はPTIが勝利しカーン首相が就任した。しかしその後軍との関係が悪化。

・カーン氏は2022年に議会の不信任決議で解任され、PML(N)系の政権になった。

・PTIの候補者は立候補を禁止・制限され、野党系は多くが無所属出馬した。

・事前予測では与党の圧勝だったが野党が健闘。情勢が混乱する可能性がある。

 

◎寸評:of the Week

 

【ウクライナの総司令官解任】 

ウクライナのゼレンスキー大統領がザルジニー総司令官を解任した。戦時下の解任は異例。決定は何を意味し、どんなインパクトがあるのか。(→国際ニュースを切る)

【注目ニュース】 

トップ5以外にも注目のニュースが多かった。エルサルバドルの大統領選(4日投票)は現職のブケレ氏が得票率86%で圧勝した。同氏は治安対策を強化。強引ともいえる手法で多数のギャングなどを拘束し、犯罪発生率を大幅に低下させた。これが国民の支持を得た。ただ、もともと元々憲法で禁じられていた再選を憲法解釈の改正で可能にするなど、独裁的な手法への警戒も強まる。

中国では春節の連休が10日始まり、延べ90億人の移動が予測される。2020-23年の春節連休はコロナの影響で移動が制限されたが、今年はコロナ後初の春節連休となる。

 

◎国際ニュースを切る

 

◆ウクライナ総司令官解任のインパクト

ウクライナのゼレンスキー大統領がザルジニー総司令官を解任した。戦時下の解任は異例。決定は何を意味し、どんなインパクトがあるのか。

▼戦時下の軍トップ交代

司令官交代は8日に発表された。後任の総司令官にはシルスキー陸軍司令官を当てた。

ザルジニー総司令官はロシアによる侵攻以来ウクライナ軍を指揮し、キーウ防衛などでも実績を残して来た。国民の人気は高く、軍内でも信頼性は高く、組織を把握しているとの見方が多かった。

戦時下に軍のトップの交代は、明らかな作戦の失敗があった場合などを除けば珍しい。

総司令官交代に際し、ゼレンスキー大統領はX(旧ツイッター)にザルジニー氏と握手する写真を掲載。円満人事であることを強調した。ただ、それを素直に受け止める見方は少ない。

大統領と総司令官の確執 

大統領と総司令官の確執は、昨年後半あたりから漏れ伝わってきた。ウクライナは昨年6月から占領された領土の奪回を目指す反転攻勢に出たが、ロシア軍の堅い守りで進まず、失敗に終わった。

ゼレンスキー大統領は反攻の成果を強調する発言を繰り返した。一方ザルジニー氏は欧米メディアへの寄稿や会見などで、戦線が膠着状態に陥っていると認めたうえで、兵力の増強などを求めた。軍の立場を明確に伝えようとしたようにも見える。

大統領がザルジニー氏の人気に対し、将来の政敵として警戒したという報道もある。

▼様々な影響

実際の両者の関係や、大統領が何を考えて解任したかは不明だ。世界のメディアも様々な角度から解任を報じるが、核心を突く報道は少ない。ただ、異例の総司令官はすでに様々な影響を与えている。

一つはウクライナの体制だ。ロシアとの戦争でウクライナはこれまで一致団結を示し、これが善戦の一因だった。この団結にひびが入ったとの印象も与える。ゼレンスキー大統領への求心力が弱まることがあれば、事態はウクライナにとって深刻だ。

西側のメディア報道はこれまで親ウクライナに傾斜し、ウクライナにとって都合の悪い情報は大きく扱われることが少なかった。総司令官解任という大本営発表を信用できない動きに直面し、報道の姿勢も変わる。

戦争の転換点

ウクライナ戦争の開始からほぼ2年。前線は膠着状態になり、ウクライナは欧米からの支援停滞という苦しい現実に直面する。

停戦に向けた動きは今のところ止まったままのようにも見える。秋の米大統領選でトランプ氏勝利となれば、戦争の構図そのものが変わりかねない。不確定要素は多い。

そうした中での今回の総司令官解任。英Economistは、解任によりウクライナ戦争が新たな段階に入ると位置付けている。そして、結果的に誤った判断になるリスクがあるとも分析している。報道の見出しは次の通りだ。

The dismissal of Valery Zaluzhny is a crucial new phase in the war

Unfortunately, President Zelensky risks getting it wrong

 

今週の注目(2月12-18日&当面の注目)

 

・ガザ戦争は4カ月を経過し、目下はイスラエルによるラファ攻撃の行方が焦点。周辺地域での軍事衝突なども引き続き要注意だ。

・ウクライナ戦争は24日でまる2年を経過。3年目に入る。現地での戦況に加え、欧米からの武器支援などに注目が集まる。

・インドネシアの大統領選が2月14日に行われる。ジョコ現大統領が実質的に支援するプラボウォ国防相が有利。選挙を経て、インドネシア社会のどんな面が見えてくるか。