International news of last week(先週の国際ニュース1月8日号)

 

↓メルマガ「国際ニュース・カウントダウン 2024年1月1-7日 by INCD-club」

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ガザの戦争3カ月経過、レバノンも空爆 ☆

・イスラエル・ガザ戦争は7日で勃発から3カ月を経過した。

・イスラエルはガザ攻撃を継続。住宅の7割が破損し、住民の8割超が退避を強いられた。

・ガザの死者は2.2万人を超え、深刻な人道危機が続く。

・イスラエルはハマス解体、人質奪回まで攻撃を続けると強調。数カ月続く可能性がある。

・同国は2日、レバノン・ベイルート南部でハマス幹部らをドローンによる空爆で暗殺した。

・レバノンのイスラム組織ヒズボラはイスラエルにミサイル攻撃。イスラエルは6日空爆で反撃。

・イエメンのフーシ派は紅海などで船舶への攻撃を繰り返している。

・ガザの戦争は着地点が見えないまま長期化。周辺に飛び火する懸念がある。

・イスラエルは軍の再編を推進。ガザから一部を撤退させ、北部などを強化する。

◆バングラ総選挙、与党が圧勝へ(7日)☆

・議会選(一院制、定数350、小選挙区基本)が実施された。

・主要野党のBNPはボイコットし、与党アワミ連盟の圧勝が確実。ハシナ首相が続投する。

・同国は1971年の独立-2000年代までアワミ連盟とBNPが交代で政権を担ってきた。

・2009年以降はハシナ首相が約15年間政権を握る。

・この間バングラは高成長を実現。1人当GDPは2000ドルとインド並みになった。

・一方、ハシナ政権が強権色を強めているとの批判も根強い。

・バングラは人口1.7億人の人口大国。

・グローナルサウスの存在感が高まる中で、同国情勢は世界的にも注目される。

◆ロシアとウクライナが捕虜交換(3日)

・ロシアとウクライナは大規模な捕虜交換を実施した。双方が230-248人を引き渡した。

・捕虜交換は2023年8月以来5か月ぶりで、戦争開始以来最大。UAEが仲介した。

・戦争は膠着化。現在は両国の政治動向や、米欧のウクライナ支援が注目される。

・ロシアは3月に大統領選を控え、プーチン政権は体制引締めを狙う。

・ウクライナでは政治構図の変化も指摘され、停戦を求める声も一部で上がっている。

◆イランでテロ、ISが犯行声明(3日)

・イラン南東部のケルマンで爆発が起き、約100人が死亡した。

・同地では、米国が2020年に殺害した革命防衛隊司令官の追悼行事が行われていた。

・過激派組織イスラム国(IS)が犯行声明を出した。

・イランはガザ紛争に関連しハマスやレバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派を支援する。

・一方国内では、ISなど敵対勢力を抱える。

台湾総統選、中国が圧力か

・台湾の総統選挙を控え、中国の介入や圧力と見られる動きが相次ぐ。

・総統選は与党民進党の頼清徳氏ら有力3氏の争い。

・中国は最大野党国民党の侯友宜氏の当選を望んでいるとされる。

・中国の気球が1日以降何度か台湾上空を飛行。民進党候補威嚇の狙いとみられる。

・偽の世論調査情報やスキャンダル情報も流れた。中国の関与が疑われるものがある。

・総統選の行方は、中台関係や東アジアの情勢にも影響する。

 

◎寸評:of the Week

 

【2024年開始】 

2024年が始まった。ウクライナとガザの戦争は、今年も世界を揺るがし続ける。米国やロシアの大統領選など重要な選挙も予定されている。世界はどんな課題を抱え、どう動くのか(→国際ニュースを切る)。

【能登半島の地震】 

日本の能登半島で新年早々地震が発生。7日までに100人を超える死者が出た。多数の家屋が倒壊して人々が犠牲になり、輪島市では大規模な火災が発生した。各地で道路が寸断され、集落が孤立。物資の供給が止まった。被災者は避難所などで不便な生活を余儀なくされている。

日本での大規模地震災害は、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震に次ぐ。

世界各地で毎年大規模な地震被害が何件も起きているが、先進国の地震は多くない。

社会のあり方、インフラ、経済の持続性など、多くの問いを投げかける。

 

◎国際ニュースを切る

 

◆2024年の展望ーー戦争と選挙に注目

2024年が始まった。ウクライナとガザの戦争が続き、世界を揺るがしている。米大統領選が11月に行われ、トランプ氏勝利なら世界に衝撃が走るのは必至だ。ロシアやインドなどでも重要な選挙が予定される。2024年の展望を占う。

▼2つの戦争に揺れる世界

世界は2つの重大な戦争を抱えて新年を迎えた。ウクライナでの戦争は勃発から2月で2年を経過する。ロシアがウクライナ東・南部を占領した状態で戦線は膠着化。停戦の動きも今のところなく、先行きは見えない。

戦争は米欧とロシアの経済を分断し、エネルギー価格の高騰など世界経済に多大な影響を及ぼした。フィンランドのNATO加盟など安保の仕組みも変わった。戦争は、世界の構造を大きく変えている。

ガザでの戦争は1月7日に勃発から3カ月を経過した。ハマスによる奇襲を受け、イスラエルはガザへの攻撃を拡大。ガザの7割の家屋が破壊され、200万人超の住民のうち9割が避難を余儀なくされた。現地では食料や医療品が不足し深刻な人道問題が生じている。

戦争は、パレスチナ問題の根の深さを改めて世界に見せつけた。奇襲とガザへの過酷な攻撃は人権や人道、国際法の定める正義などへの問いを突き付けた。国連安保理は機能せず、むしろ世界の分断をウクライナ戦争とは異なる形で、改めてで見せつけた。ガザでの戦争が、周辺の中東各地に飛び火する懸念も消えない。

世界は2024年も、ウクライナとガザでの2つの戦争に揺れ動くだろう。

米大統領選−第2のトランプ・ショックが来るか

米国では4年に1度の大統領選が行われる。11月の本選は現職のバイデン大統領(民主党)とトランプ前大統領(共和党)の対決になるとみられる。バイデン氏が81歳、トランプ氏が79歳と高齢の候補者の争い。世論調査によれば、接戦になりそうだ。

仮にトランプ氏当選となれば、2016年の当選時に続く第2のトランプ・ショックが起きるのは必至だ。同氏は「米国第1」を強調し、ウクライナ支援も現政権に比べて消極的な発言を繰り返す。ウクライナ戦争の行方を左右しかねない。

トランプ氏は国際協調より自国利益優先を鮮明にする。地球温暖化のパリ協定に再び背を向ける可能性も大きい。移民規制の強化も主張している。超大国米国の動向が予測しにくくなれば、世界の不確実性もさらに高まる。

▼選挙の年ーロシア、インドなどで重要選挙

米大統領選以外にも、今年は重要な選挙が相次ぐ。ロシアでは3月に大統領選が実施される。プーチン大統領の再選が確実な情勢。ウクライナ戦争を続ける下で、同氏は圧勝により政権基盤の強化を目論む。

インドでは5月までに総選挙があり、モディ首相の与党が選挙戦を有利に進めている。同氏は2014年から10年間首相を務めるが、続投ならさらに5年間同国を率いる。台湾では1月に総統選があり、その結果は中台関係にも影響する。

このほか、インドネシア大統領選(2月)、メキシコ大統領選(6月)、南ア選挙(4-5月)、韓国選挙(4月)などが予定される。EUでは欧州議会選(6月)があり、州政治の流れを映す。

IT革命、環境、米中対立

IT革命の進展や、地球温暖化を中心とした環境問題、米中対立は、最近の重要なトレンド。今年も要注目だ。

ITは昨年、生成AIのブームに沸いた。今年もAIなどの技術革新が進み、様々な新しいサービスが登場するだろう。同時にフェイクニュースなど弊害も拡大するだろう。ITの規制を巡る動きも、引き続き重要なテーマだ。

地球は昨年、観測史上最高の平均気温を記録した。今年も温暖化に起因する自然災害などが発生する可能性がある。自動車のEV化や再生可能エネへの転換は進むが、パリ協定で掲げた「地球の平均気温を産業革命前より1.5度上昇以内」という目標の達成は、一段と難しくなる見通しだ。

米中関係は2010年代後半の米トランプ政権時代から対立色を強め、バイデン政権に変わってもその傾向は変わらない。近年は米国が同盟国に働きかけて対中包囲網を敷く動きや、最先端半導体の禁輸などの展開も目立つ。軍事・安保面では、台湾や南シナ海情勢を巡り緊張が高まる。米中関係は、ウクライナでの戦争の行方や、米大統領選の結果にも影響される。

戦争下の2024年

世界経済はウクライナ戦争が始まった2022年以降、インフレや高金利、途上国の債務問題などがキーワードになった。

米国や欧州は2022年に10%前後のインフレを記録。その対応に利上げを繰り返した。2023年に入り米欧のインフレは落ち着き始め、金融政策は曲がり角を迎えている。2024年は利下げへの転換も予想され。

途上国の多くは高インフレに悩み、2022年にはスリランカのように財政破綻に追い込まれる国も出た。米国などの利上げは、対外債務の多い途上国経済の打撃になった。途上国の債務問題は、2024年も重要な問題としてのしかかる。

コロナやウクライナ戦争の時代にもITなど技術革新は進み、世界に新たなサービスを提供して人々の生活を便利にした。一方、世界には戦争や紛争が増え、内向き傾向が強まっているとも指摘される。

2024年の世界には明暗様々な動きが出てくるだろうが、基本的事実としてウクライナとガザの2つの戦争の下にある点は重要だ。

 

国際ニュースを切る

 

◆2024年の世界ーーFTの展望記事

2024年の世界について、世界のメディアも様々な展望をしている。英Financial Timesは2023年12月30日に恒例の展望記事を掲載した。ポイントを紹介する。

世界の動向・政治

米大統領選でトランプ前大統領は勝利するかーーしない。

米国とEUはウクライナへの資金援助を続けるかーー続ける。トランプ当選なら変更も。

イスラエル・ハマス戦争は中東全域の紛争に広がるかーー広がらない。

・EUのフォンデアライエン欧州委員長は再選されるかーーされる。

・英国のスターマー労働党首は首相になるかーーなる(選挙が2025年1月に延びなければ)。

台湾総統選をうけ、中国の攻撃はあるかーーない。

・南ア選挙でANCの得票率は50%を割り込むかーー割り込む。

経済

米経済は軟着陸に成功するかーーする。

・中国経済の成長は3%以下に落ち込むかーー落ち込まない。

・日本はゼロ金利解除をするかーーしない。

・アルゼンチンは経済のドル化を実施するかーーしない。

・投資家は投資先の債権へのシフトを進めるかーー進める。

・X(旧ツイッター)は(経営改善策として)破産を申請するかーーする。

・オープンAIのアルトマンCEOは再度座を追われるかーー追われない。

・資本市場でIPO(新規上場)が再び盛んになるかーーなる。

・ノバ・ノルディスクが欧州で時価総額最大の会社になるかーーなる。

社会・環境

2024年は2023年以上に気温の高い年になるかーーなる。

・世界全体で再生可能エネの発電が石炭火力発電を抜くかーー2024年は抜かない。

・コンサート市場で女性アーティストが男性より稼ぐようになるかーー完全にはならない。

記事からは、主な出来事の展望とともに、FTがメディアとして何に関心があるかも伝わって来る。米大統領選は、一応バイデン勝利と予想しているが、僅差で予測し難いと見ている。

 

今週の注目(2024年1月8-14日&当面の注目)

 

・バングラデシュの選挙が7日行われた。主要野党BNPのボイコットで与党アワミ連盟の勝利は確実。ハシナ首相が続投の見通しだ。BNPなどは選挙が不公正だったなどと訴える構えで、選挙後の動向も注目。

台湾総統選が13日に行われる。

・ウクライナ戦争とイスラエル・ガザ戦争の行方は、世界にとって最大の関心事。