食用コオロギの粉末を学校給食に 全国初、先ず徳島で
2022年11月28日

コオロギ食材を使った給食のようす(28日、徳島県小松島市)


食用コオロギを養殖するグリラス(徳島県鳴門市)は学校給食事業に参入した。

 

 

徳島県立小松島西高校(小松島市)が28日、同社から仕入れた乾燥コオロギの粉末を校内調理し、給食として提供した。

 

 

同校は今夏にコオロギ食材の調理実習などを手がけており、生徒や教師らの間で昆虫食への理解が深まっていたコオロギの給食導入は全国で初めてという。

グリラスと小松島西高校は同日、報道陣に給食の調理や生徒の食事のようすなどを公開した。

 

 

調理師を目指す食物科の生徒が、校内の食堂で昼食づくりを担当。

 

グリラスが納入したコオロギ粉末を使い、給食メニューの第1弾となる「カボチャコロッケ」を用意した。ひき肉に代わるたんぱく源として、コオロギ粉末をカボチャに混ぜたのが特徴だ。

 

カボチャコロッケにコオロギ粉末を入れた


徳島県立小松島西高校では、食物科の生徒が自ら給食の献立を考え、調理している。

 

 

全体で500人余りいる生徒・教職員の内、170人程度が毎日給食を利用しているという。食物科長の多田加奈子教諭

 

「給食に」

「昆虫メニューを取り入れる事で」

SDGs(持続可能な開発目標)や」

「エシカル(倫理的)消費を」

「深く考えるきっかけになれば」

 

と、期待する。

 

 

実際にカボチャコロッケを食べた生徒からはコオロギと聞くと抵抗があるが」「粉末で中に入っている分には気にならない」「何となくエビに似た風味がして、おいしかった」などの声が聞かれた。

 

多田教諭は「メニューは未定だが、年明けにもコオロギ給食の第2弾を予定している」と言い、その後の定番化も検討する。

 

給食に用意したコオロギ粉末入りのカボチャコロッケ

 

徳島県立小松島西高校は6月、食用コオロギの粉末を使った調理実習と、昆虫食に関する全校生徒向けの特別授業を行った。

 

調理では皮の生地にコオロギ粉末を練り込んだ肉まんを試作。授業ではグリラスの広報担当が講師となり、人口増に伴う世界的な食糧不足の問題を指摘しつつ、コオロギに代表される「高たんぱくの昆虫食」の有用性を説いた。

「こうした下地が」

「今回の給食導入につながった」

「さらに採用校を増やしたい」

 

と、グリラスの西郷琢也氏は、話す。

 

 

コオロギなどの昆虫は、牛や豚などの家畜に比べて圧倒的に少ない飼料で短期間に育つ。

 

グリラスは通常は廃棄される小麦残さのフスマなどを餌に使い、環境にやさしい循環型食材としてコオロギの定着を目指している。

グリラスは、徳島大学のスタートアップで、同大助教の渡辺崇人社長が、2019年に設立した。

 

 

翌20年に「無印良品」を手がける良品計画がグリラスのコオロギ粉末を使ったせんべいを商品化して話題を呼んだ。

 

21年からは自社ブランドの「シートリア」で菓子やレトルトカレー、パンなどの販売を始めた。

現在は徳島県西部の美馬市にある廃校などを使って食用コオロギ養殖している。

 

手作業が中心のコオロギ養殖を自動化するための研究や、殻が透明で白い粉末が作れる品種の開発などにも取り組んでいる。

 

 

 

 

昆虫素材の学校給食!コオロギパウダーを使った「かぼちゃコロッケ」
2023年2月15日

コオロギを使ったメニュー


コオロギラーメンや昆虫を使ったコース料理を提供するレストランなど、年々広がりをみせる昆虫食。

 

無印良品でもコオロギせんべい」というスナックが人気商品の一つになっている。とはいえ、昆虫には少し抵抗があるという人も少なくはないだろう。

 

もっとも、初めて触れる外国人にとっては、ネバネバする納豆や黒いノリは自国文化にない奇妙な食品に映る。身近になると、意外と食べられるようになる食べ物も多いのかもしれない。

家ではかなりの偏食だが、学校ではきちんと給食を食べるという話をたまに聞く。

 

また学校給食は、家では普段食べない料理などを体験できる場にもなっている。徳島の県立小松島西高校で2022年11月、国内で初めて食用コオロギを使用した給食メニューの提供があった。

メニューを考案したのは徳島県立小松島西高校食物科の生徒たち。最初は、昆虫に少し抵抗があった生徒もいたが、今回使用した粉末の食用コオロギは食材として扱いやすく、多くの生徒が「おいしい」と感じたという。給食(希望制)で提供されたのは「グリラスかぼちゃコロッケ」。

 

コロッケに一般的に使われるひき肉の代わりに、環境負荷の低い粉末コオロギ(グリラスパウダー)が使用された。

 

飼育時のエサや使用する水の量が少なく、温室効果ガスの排出も少ない昆虫食だが、食材として利用するメリットもある。

 

今回のかぼちゃコロッケではコオロギを入れた方が(かぼちゃの)甘さが引き立つ」と食物科の生徒たちは話す。

 

実際、約170人の在校生のうち、コオロギコロッケを試食した生徒は約9割にも及ぶ。

 

同校では今月下旬に2回目の提供を実施後、給食でのコオロギの使用を継続するかどうかを検討する予定だ。
 

徳島県立小松島西高校で提供された昆虫食を使った学校給食。一番左が「グリラスかぼちゃコロッケ」

東京の都立葛飾ろう学校では今月、高等部専攻科食物系の調理実習で初めて昆虫食を扱った。

 

 

コオロギの原料を提供したのは、徳島大学発のベンチャー企業「グリラス」。

 

蛋白質危機等の食料問題に加えて、同社がコオロギのエサとして100%食品ロスを活用している点にも関心を持つ生徒が多かったという。

 

調理実習ではコオロギパウダー・コオロギエキス・乾燥コオロギの3種類のコオロギが使われ、小籠包・まぜそば・田作り・ふりかけ・ナッツのキャラメリゼの5メニューが作られた。

 

小籠包を作る東京都立葛飾ろう学校の生徒たち


食料問題や環境の観点から注目される昆虫食だが、今回の調理実習のテーマは“コオロギの味を生かす”。

 

初めて触れる食材を前に、生徒たちは何度も試作を重ねた。最初に作ったみそ汁やギョーザでは、エビなどの魚介系風味を持つコオロギの味を生かすことができなかった。

最終メニューとなった小籠包も、餡(あん)にコオロギを入れた状態では全体の味のバランスが悪かった。

 

最終的には、皮にもコオロギパウダーを加えてスパイス(ウーシャンフェン)を足すことで、本格的な中華の味にたどり着いた。

 

初めて扱う食材だったからこそ「おいしい、おいしくないだけではなく、どうしたらおいしくなるかを考える事ができた」と専攻科1年の権田陽向さんは語る。

 

コオロギメニューについて説明する生徒達

 

都立葛飾ろう学校高等部専攻科生産システム類型食物系の生徒達

 

キャラメリゼと田作りには乾燥コオロギがそのまま使われているので見た目で昆虫食だと分かるが、そのほかの料理は言われなければ昆虫食だとは気づかないだろう。

 

もっと身近な食材となれば、昆虫食のポテンシャルはさらに上がっていくだろう。