蚊の嗅覚による宿主探索の仕組みを解明
2022年5月17日


蚊の脳に関する新たな知見が得られたことで、マラリアや黄熱病など蚊が媒介する病気への対策に近づくことができるかもしれません。この研究により、蚊が匂いを頼りに宿主を探す仕組みが明らかになりました。

 

 

メスの蚊が匂いを使って犠牲者を選ぶ過程が、国際研究チームによって発見された。
 

蚊はどのようにして人間を刺そうと嗅ぎつけるのでしょうか?

プリンストン大学とスウェーデン農業科学大学(SLU)の研究者らは、蚊が人間の匂いを感知すると、脳の中の特定の部分が活性化する事を発見した。

 

  • SLUの研究者リカード・イグネルは国営放送SVTに「我々は蚊がどの様にして人間と他の動物からの匂いを区別するのかを発見した」と語っている。


蚊は人間と動物に対して明確な嗜好性を持っている様だが、何故どの様に区別しているのかは不明である。

 

この問題に対して、ヒトや多くの動物種の匂いのサンプルを使って回答することが考えられる様になった。

問題は、人間の臭いは何百種類もの化合物から構成されていること、そして哺乳類の臭いの多くは、微妙に量は違うが同じ分子を含んでいることであった。

 

更に、これらの化合物は蚊にとって特に魅力的なものではない為、蚊が人間のにおいを感知する為に利用する成分の組み合わせを正確に把握することが課題でした。

 

 

研究チームは、ヒトや動物(犬、ハムスター、ラット、羊、ウズラなど)から香りのサンプルを採取し、これらの「匂いプロファイル」がどの様に構成され、変化しているのかを調べました。

 

また、メスの蚊の触角にある全ての嗅覚受容体からの神経インパルスを処理する蚊の脳の部分の活動パターンを視覚化するツールも作成した。

化学生態学研究者のイグネルによれば、

 

「人間の匂いで刺激されたときに」

「活性化する脳の部分は」

「動物の匂いで刺激されたときに」

「反応する部分とは異なります」

 

とのことです。

蚊の種類によっては、血を与える相手を選ばず、殆ど全ての温血動物を餌にできるものもあるが、人間の血だけを餌にする為に、極めて精密な「ナビゲーション・システム」を進化させたものもある。

 

これらは、ジカ熱、デング熱、黄熱病などの感染症を広げる可能性があり、いずれも重篤で死に至る可能性があります。

研究チームは、蚊の脳内で人間の匂いと同じ活動パターンを引き起こす人工的な香りを作り出しました。

この研究成果は、蚊のモニタリングやコントロールのための新しい香りの調合に利用でき、毎年何百万人もの人々に影響を与えている蚊が媒介する病気との闘いに貢献することが期待されます。