リリーのネイタル占星術の解読方法は、気質の判断から始まります。それは古代の占星術のテクスト類に載せられていない方法です。が、リリーなりの創意と工夫によって成し遂げられたものだと考えられます。リリーはボナタスの影響をかなり受けています。だからといって、ボナタスのネイタルの判断方法に気質の判断方法から入るとはなっていません。

 

今日、蘇らせようと試みられているのは、ヘレニスティックな占星術によるものです。ここへ来て大きな影響を与えているのは、まさに「セクト」の概念です。それそのものは、あまり難しいことはありません。先のブログに書いたように、査定ではありませんが、チャートの解釈上、幾度となく尺度として取り上げられるものです。

 

ほぼ、ペルシャ時代の占星術からかき消され、アラビアではハルブやヘイズの概念に押されてしまい、ヨーロッパには伝えられていないかのように隠れてしまったものです。このことがハッキリしてくることによって、ヴェティウス・ヴァレンス(Vettius Valens 120-175頃)の『Anthology』や、レトリウス(6~7世紀)の書く『Compendium』の意義が浮かびあ上がってきたのです。

 

漫然と読んでいたのでは、それがネイタルの判断方法の指南書であることになかなか気づけません。私も、説明書の類であろうと読んでいました。また、判断方法が書かれていると分る部分はあまりにも難しく、一足飛びにそこへは行けないようになってもいます。暗号文を解釈するような感覚ですが、先人たちがそれを意図したわけではないでしょう。翻訳と転記が繰り返されるうちに、内容を受け取りにくくされてしまったのです。

 

そこに、再構築の意味があります。様々な文献をクロスリファレンスできるようにもなってきましたから、セクトの意味もハッキリし、その他の謎に包まれたベネフィックやマレフィックと単に呼んでいるものの中にも、極端なベネフィックやマレフィックがあることも分かってきました。昼と夜で、ベネフィックやマレフィックの働きが違うということが分かっただけでも、大変な進歩なのです。