今日でも、いまだに、西洋占星術を学んでいるにも関わらず、サインと星座(コンステレーション)が同じ位置にあると思い込んでいる人がいらっしゃいます。

おひつ座は、牡羊のサインと同等の位置にあると思い込んでいる大勢の方がいらっしゃいます。呼び方だけが違っていて、天秤のサインはてんびん座の所にあると(習ったわけではなく、それまでの勉強の結果として)考えてしまうのです。てんびん座は♏のサインの所にありますし、ふたご座は♋のサインの所にあります。

もちろん、占星術を知らない一般の人にとってなら、これは通常のことであり、おひつじ座の所に牡羊のサインがあると素直に考えられていても構いません。それで、生活に差し障りも、差し支えもありません。でも、占星術師にとっては一大事です。

ヒッパルコスが発見した歳差運動がどういうものか知らないまでも、占星術を学んでいる途上で、春分点上を星座が前へ前へと移動しているということを学ぶことがあるはずです。一般の西洋占星術スクールでは、天文学的なことはあまり教えたくない事柄になります。理解している先生の方が少ないからです。

事実、これまでにも先生レベルの人を何人か教えたことがありますが、その人たちの中にも、惑星の動きを知らなかったり[エフェメリスを参照したことがないとか]、星座(コンステレーション)とサインが同一だと思い込んでいた人たちがいらっしゃいました。

そういう現状を見てしまうと、日本の占星術はどうなっているんだと思わざるを得ません。心配なのです。アスペクトだけでは判断ができず、リセプションをアスペクトに使用する方法を学ばないと、チャートは判断ができません。精神的な事柄だけを判断するなら、自分の哲学を話せばいいので、何とかなりますが、具体的な事柄を具体的に判断するには、絶対にリセプションやディグニティーの知識が必要です。

そうは言っても、たった一枚のチャートで判断を下すホラリー占星術でさえも、間違えることがあります。ネイタルでは、勢い、複数のチャートを使います。二重円や三重円、トランシットやソーラーリターンなど、複数のチャートを合わせて判断する複雑なネイタル・チャートの判断では、間違いが増えること、間違いありません

占星術はよく言語に例えられます。その時、言葉の意味を的確に捉えながら一歩一歩学んでいかなくては、上の方へ行って足元からすくわれる可能性があります。例えば、ネイティブとネイティビティーの明確な違いや、支配するとは何が何を支配するのかなどです。

リセプションは確かにディスポジターを使いますが、ディスポジターのディスポジターまで使う例を見たことはありません。技術としては有り得ても、人間の頭では解けないくらい複雑になってしまうからでしょう。ひょっとしたら秘儀中の秘儀なのかもしれません。あるいは、ディスポジターのディスポジターの、更にディスポジターを探る技術が存在するのかもしれませんが、古典的な占星術のテクストには一切載せられていません。

ディスポジターは大事です。それにしても、サインのルーラーもディスポジターですし、イグザルテーションのルーラーも、イグザルテーションのディスポジターです。トリプリシティーも同じく、ディスポジターですし、タームやフェイスのルーラーも、ディスポジターです。レッサー・ディグニティーを2個そろえたディスポジターは有用です。更に、その奥を探るというのは、先にも話したように、人間の能力の限界を越えます。何故なら、ここに書いたように、ディスポジターだけでも、4~5個あるからです。また、ネガティブなディスポジターとなる、デトリメントやフォールなども加えると、その更にディスポジターを探る意味は無くなるのだと思います。さぐり過ぎることに意味はありません。したがって、ディスポジター・ツリーなどを思いついても、何の意味もありませんし、何の役にも立たないのです。サインのルーラーをディスポジターとして使えなかったら、イグザルテーションのディスポジターを使うなどして、もっとディスポジター・ツリーを深めたらよかったのです。