フランス人の占星術師、ラテン語名モリナス(1585ー1656)の書いたものの中からの紹介です。ジャン・バプテスト・モラン(モリナス)は、リリーと同じような年代に、フランスで活躍した占星術師です。


Astrologia Gallica Book 21 より

ネイタルの判断では、初期に行うべき判断が幾つか存在し、それを終えると本格的なチャートの判断に向かうわけです。時には、ストレートにクライアントの問題提起に答えるべく、チャートの判断に至ることもあります。ここでは、初期に行うべき判断を終えたとして、述べていきたく思います。もし、ここからのことでチャートの判断を読み間違えるとしたら、初期に行うべき判断を怠った可能性があります。

Astrologia Gallica Book 21の第一部は、飛ばします。

第一部の概略ですが、宇宙の影響がどうやって我々に届くのかの、遅々延々とした議論が中心になっています。惑星の影響には、普遍的なものと特殊なものがあって、普遍的なものでは個々の人についての判断はできない、と当たり前の結論に至ります。しかし、面白いです。(いわゆる太陽星座占いを思い浮かべてみると、12の個性しか存在しなくなります)。が、「判断を中心に学びたい人」にとって、あまり意味がないのかもしれません。

Astrologia Gallica Book 21の第二部第二章にいきなり飛んでいきます。

この章は、ハウスの中にある一個の惑星をどう捉えるかが、描かれています。

1つだけ惑星が置かれているハウスが、きっとあります。そんなときに、その惑星をどう捉えるのでしょう。
「ホロスコープの、あるハウスに、1つだけ惑星がある」。ハイ。
まったく、どんなチャートでもそういうハウスはあるものですが。置かれている惑星の働きや作用は、そのハウスに関係する人生のアクシデンタル※1な出来事に及びます。ときにはそのハウスを支配したり、アスペクトを他の惑星に送ったりもしながら、そのハウスのルーラーよりも、そのハウスに関わる大きな影響を及ぼすことになります。

概略そんなところなのですが、観察すべきことが、最低でも④つあるというのです。

例えば、そこが2ハウスだとします。木星が入っていたとすると、その木星が2ハウスについての事がらを雄弁に述べていて、2ハウスのル―ラーよりも能弁なんだよと言っています。2ハウスが、蠍のサインであろうと、射手のサインであろうと、とにかく、木星がそこにあるわけだから、木星の状態から、2ハウスの事がらが判断できるのだと。

 


じゃあ、その時の蠍のサインのルーラー、火星をどう関わせるのが正解なの、という疑問は、ずっと後の方の判断になります。

とにかく、そこに置かれていることが重要なのですから、
   ①木星そのものの性質はどうなの? ディグニティーはあるの? ないの? 
   ②その状態は良いの悪いの? 
   ③ハウス位置以外で、考慮できることはないの? 
   ④「類似性を関わらせて、注意して観察すべき」などになります。

①木星が蠍のサインに入っていても、19度から24度までに置かれていないと、エッセンシャル・ディグニティー※2は受け取れません。

②状態? 他の惑星たちから、どのようにレシーブされたり、レシーブをしていたり、アスペクトしたりするのかを観察して、状態を把握します。これが厄介。アンティッションなども観察しなくてはいけません。アングルにある惑星とアスペクトしていると、とても有利になります。2ハウスですから、ときに10ハウスに入っている惑星とトラインを形成するかもしれません。4ハウスにある惑星ともセキスタイル・アスペクトを形成しているかもしれません。蠍のサインのルーラーである火星とアスペクトしていると、とても有利になります。火星がマレフィックであっても、元々蠍のサインは火星のサインですから、アスペクトしていれば火星は木星に危害を加えられなくなります。それがホスト(ここでは火星)の役割だからです。

③ハウス位置以外の考慮は? コンバストとか、アンダー・ザ・レイとか、ノードとの関係をいいます。時には、P.o.Fが木星の傍らにあったり、P.o.Fのディスポジターが木星であるかもしれません。あるいは、P.o.Fとなったディスポジターの惑星が、2ハウスに入っている木星とアスペクトしていたり、アンティッションになっているかもしれません。

④「類似性」に注意、なのですが、木星は元々財産の星、金銭の星なので、2ハウスととても「類似性」を持っているわけです。このことから、不利になることはあまりありません。

このような観察をしながら、そのチャートの2ハウスに入っている木星一個を考察して判断を進めるわけです。

2ハウスに入っている惑星としては、土星が最も違和感を感じさせる、あまり「類似性」を持たない惑星となります。でも、中には、土星が2ハウスに入っていても、リセプション等で、良い状態を示す場合もあり得ることになります。

太陽や火星も、かなり「類似性」を欠きますが、それでも②の状態次第ということになります。

金星はどうなのか。金星は太陽との関係が深く考察される惑星なので、アンダー・ザ・レイにあり、ネイタルのチャートで、一週間以内に太陽のアンダー・ザ・レイに入っていくなどだと、悪い状態となります。「類似性」はもともとありません。金星はどちらかというと、財産を使う惑星で、水星は財産を稼ぐ惑星です。でも、これらの言われ方はとても「普遍的」な事がらなので、やはり入っている惑星個々の判断が必要になります。

逆に、金星がネイタルのチャートで、一週間以内に、アンダー・ザ・レイから出ていくといった状態であれば、とても良い状態として考慮されます。

さて、2ハウスに入っている木星に戻ります。

少なくとも、先に掲げた①~④までの観察をしないと、木星への評価は不完全で不正確なものになりかねません。難しいのは④の類似性の事柄です。日本ではあまり紹介されてこなかった概念というか、考え方です。

 

※1 アクシデンタルな〇〇というのは、状況や状態を言い表していて、時と場合によって異なる、というものです。惑星の影響が、普遍的なものと、特定のものがあるとすれば、特定の状況や状態が、アクシデンタルなものといえます。

 

※2 エッセンシャル・ディグニティーの表(エジプシャン・タームのものです)