ざばーん!ざばーふ!

大根『あー今日もいい湯だわ。極楽極楽。』
玉子『あら?となり開いてるかしら?ウフ』

チャポン…

大根『あ、どうぞどうぞ。玉子の姐さん。今日も一段と肌ツヤがよろしくて。』
玉子『あらぁ?分かる?流石大根の旦那ね。最近パック変えたのよ。』

ツタタタタ…

大根『うん!?』
ゴボウ巻き『こんちゃーす!!あれ?大根の旦那ぁ!玉子の姐さんまで!二人揃って何コソコソやってんすかぁ!とうっ!』

ざっぱーんっ!

ゴボウ巻き『うっひょーきんもちィィ!!昆布とカツオの合わせダシ最高ゥ!!!』
大根『お、おい!ダシが飛ぶじゃねえか!』
玉子『アラアラ、若い子は元気ねぇ』
ゴボウ『ところでお二方、チクワの奴どこ行ったか知りやせん?あいつ俺のゴボウ借りたまんま帰ってこないんすよ。』
大根『チクワ?知らねぇな。』
玉子『アタシも』
ゴボウ『そうすっか…どこ行ったんすかねぇ…はっ!?もしや…』
大根『おいおい、どうしたってんだよ。』
ゴボウ『いやぁ、最近空から2本の巨大な棒がおりて来て、そいつに挟まれてさらわれたって話をアチコチで聞くんですよ。もしかしたらチクワがいなくなったのも何か関係あるかも…』
大根『そんな物騒なことが起きてるのか?こっちもうかうかダシに浸かってられないなぁ』
玉子『アラ?大根の旦那知らないの?最近ここいらでは有名な話よ』
大根『へぇ…そうなのかい』

その時である。正に今話題となっていた巨大な2本の棒がぬんと天空に現れた次の瞬間、ゴボウ巻きの胸と胴にその棒は無残にも突き刺さった。

ゴボウ『っぎゃー!!苦しィィ…』

大根『!?ゴボウ!!大丈夫か?しっかりしろ今なんとかしてやる!くそ…貫通してやがる…玉子の姐さん、早く!!救急車だ!救急車を呼んで来てくれ!』
玉子『わ、分かったわ。』
慌ててダシを飛び出す玉子。

ゴボウ『旦那ア…俺もう無理かもしれません…体が冷たくなってきやした…』
大根『おいっ!!ゴボウしっかりしろ。それ以上喋るな!!』
ゴボウ『こ、これ…ツミレさんに渡して下さい…あと、ずっと昔から好きでしたっ…て…伝ぇ…』
ゴボウ巻きは干しエビのリングを大根に託し息を引き取った。

大根『ゴボウ?おい嘘だろ?ゴボォオォオ!』

その時、2本の棒がむんずとゴボウ巻きを持ち上げ天空へとさらって行った。

大根『…』

大根はその光景をただ見ていることしか出来なかった。
しばらく洗っていると、ようやく手も綺麗になった。のび太は普段この石鹸を使う時は、ワンプッシュしか押さないので今日だけで1ヶ月分は使ったような気分になった。さっきまで、漂っていた鼻につくオイルの匂いも今やすっかりシャボンの香りになっていた。次に、お湯の蛇口から水の蛇口に切り替え、ザバザバと顔を洗った。お湯で手を洗った後のせいか水は余計に冷たく感じ、その冷たさはのび太の目をしっかりと開かせ、やや興奮して熱を帯びた頭を冷やしてくれた。タオルかけのタオルを手にとり顔を拭いた…

『仕方ない…埋めるか…』

なぜか分からないがボツリと呟いていた。顔を洗いだいぶ冷静に物事を考えることの出来る自分がそこにいた。
そうと決まれば話は早い。洗面所を後にし、慌ただしく階段をかけ上がり2階に上がった。
襖を開ける時、ひょっとしたら…なんて気もしたがガラリと開けると、やはり青いスクラップが横たわっていた。

『しかし…』

のび太は、このスクラップをどうやって運ぶか思案した。埋める場所は庭しかない。実際このドラえもんはかなり重たい。1人であの狭い階段をこいつを持って降り、庭まで運ぶのはかなりキツい。さて、どうするか…

『!?』

ふと、机の上にあったスモールライトに目がいった。「今日の俺冴えてる」のび太はニヤリと笑いスモールライトを手に取った。今のしたり顔はたぶん今までで一番気持ちの悪い顔だっただろう。

このスモールライトはストーリー中よく使われているものの細かい仕様はあまり知られていない。実は、持ち手にライトのON/OFFのスイッチと小さくする倍率を調整できるダイヤルがついているのである。

先日、使ったせいかスイッチのボタンに何か茶いモノがこびりついていた。そのこびりついたモノのせいでボタンがうまく押せない。のび太は人差し指の爪でガリガリとそれを剥がした…
臭い。
間違いない。これはう○こだ。実のところをいうと、先日スモールライトを借りた理由と言うのは、アナ○にスモールライトの柄を突っ込むためであった。そう何を隠そうのび太は生粋のア○リストである。そして、スモールライトのスイッチボタンの2つのボチボチっとした凹凸が前立腺を刺激するには持ってこいだったのであった。さて、そんなカミングアウトはさて置いて、のび太は運べれば別になんでもいいと思ったのでとりあえずダイヤルを33%に合わせた。
ザッザッザッザッ…
庭には、スクラップになったドラえもんを埋めるのび太の姿があった…

ドラえもんが動かなくなり、ジャイアンに復讐を誓ったあの時からのび太はすぐに行動を開始した。真っ先に思いついたのは、道具集めだった。しかし、ドラえもんが停止した後の四次元ポケットはただの白い布のポケットになっていた。こんなポケット、どこかに縫い付けたところで今時流行らない。のび太は、フと鼻で笑い、役に立たなくなった白い布袋を丸めゴミ箱の方に投げた。丸まったポケットはゴミ箱を数センチかすめ横に落ちた。その光景がのび太を余計にイライラさせた。四次元ポケットが使えない…
もしかして!?

一瞬のび太に嫌な予感が走った。スクラップになったドラえもんを足蹴にして急いで勉強机の引き出しを開けた。

『…そう来たか…』

やはりのび太の予感は正しかった。そこには、ただの勉強机の引き出しがあるだけだった。あの空間は今はもうない。そう、タイムマシンも消えていた。もはや、ドラえもんの道具は普段使っているタケコプターと先日こっそり借りたスモールライトだけだった。

『ち…この2つか…』

のび太は現状を確認した。そして、普段いかにドラえもんに頼っていたかを痛感した。ただし、一般的にはこの2つの道具でも十分な力になる。のび太はドラえもんに頼りすぎてたせいか贅沢にもなっていた。ただそれに気付く程の冷静さは今はなかった。

『さてと…』

相変わらず、青いスクラップはゴロンと畳の上に転がっている。まるで、切腹をした武士が介錯された後の姿の様で気味が悪い。窓から差し込む西日が部屋を赤く染め上げて、より気味の悪さを引き立てていた。本当にオイルの匂いが充満した部屋は臭い。

とりあえず、のび太はオイルまみれの両手を洗うために、1階へ降りた。階段を降りるとキッチンの方から声がした、

「のびちゃん!おやつがあるからドラちゃんと一緒に食べなさい。」

この母親、今がどういう状況が分かってないのかと、さらにのび太をイライラさせたが、何かを感ずかれても面倒なので

『は~い。もう少ししたら行くよ。』

とだけ答えて、洗面所に向かった。こういう時に限って優しくしてくるんだなとのび太はイヤになった。お湯の出る方の蛇口を捻り、数回、プッシュ式の石鹸を手に取った。ネバネバとしたオイルは洗っても洗っても死んだドラえもんの恨みがこみ上げてくるかのようにのび太の手にまとわりついた。