村上春樹の『パン屋再襲撃』を読みました。
彼の作品としては2作目の読書記録になります。
これは前回読んだ作品と異なり、6つの作品から成る短編集です。
収められているのはいずれも寓話的で、やや突拍子もない設定や展開のものが多いですが、印象的な作品ばかりです。
最近になって村上春樹の作品を2作読みましたが、彼に対する私なりの評価は大きく2点あります。
一つは着想の独特さです。これは小説家にとって最も重要な才能で、天賦のものなのでしょう。
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』もそうでしたし、今回の短編集の作品群も凡人では得られない着想に基づいており、この点は小説家というより優れた芸術家として素直に評価すべきだと思います。
もう一つは小説家として必要な才能ですが、筆力、特に身の回りのありふれた自然風景や静物、周りの人物の描写が非常に巧みであるという点です。
感情を持たない道端の草花の僅かな動きも擬人化して表現することで、読者の頭にその情景を鮮やかに描き出させるというのは凄いことです。
昔の大小説家の作品にも同じようなことが言えますが、村上春樹の場合、何気ない生活の一場面を現代的な表現(例えば最近流行った音楽など)を使いながら描き出しているところに現代作家ならではの独自性が感じられます。
村上春樹といえば、毎年、ノーベル賞の時期に愛好家の皆さんが彼の受賞を期待して盛り上がりますが、数年前、ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したことがありました。その時、テレビが取材していた村上春樹ファンの一人が、ボブ・ディランが受賞するなら仕方ない、という発言をしていましたが、村上春樹の作品中にボブ・ディランの楽曲が登場し、かつ、重要な意味づけがされていることを知り、ようやく当時の村上春樹ファンの発言に納得することができました。
