ヘルマン・ヘッセ『車輪の下』 | ホーストダンスのブログ

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連休中にヘルマン・ヘッセは『車輪の下』を読みました。他の長編小説を読んでいる途中だったのですが、それは主に職場の休み時間などに読んでいるので、特に予定のなかったこの連休、たまたま家にあったこの本を読んでみました。

かなり昔に一度読んだ記憶があるのですが、今回、改めて読んでみようと思いたったのは、先日、次男が来月から通うことになる中学の入学予定者向けの説明会でこの本が紹介されたからです。

田舎町に住んでいた才能豊かな少年が、親族や周囲の人々の大きな期待を背に、必死に受験勉強を重ね、エリート養成校である神学校に2位という好成績で合格します。その後も周囲の期待に応えるために勉学に励むものの、少年は次第に心身に変調を来すようになり、1年足らずで神学校を中退することになります。
故郷に戻り、しばらく休養を取った少年は、今度は親の勧めに従って機械工になるための修業生活に入ることを決意しますが、そのわずか数日後、かつての同級生であり機械工の先輩である友人の初月給祝いに参加して泥酔し、帰宅途中に川に落ちて溺死してしまいます。

以上が簡単なストーリーですが、次男の通うことになる中学校の先生がこの本を紹介した理由は、中学受験が終わった後、中学に入学するまでに何をすべきか、という質問に対する答がこの小説の中にあるからです。
説明会で、先生は入学予定者の小学生たちに、「今しかできないこと」、「今やるべきこと」をやりなさい、と説き、中学生になって学ぶことは入学後にしっかりやればよいと話していました。
具体的にやるべきこととしては、残された小学校生活をしっかり過ごすこと、小学校の友人と遊ぶこと、休日には運動をしたり、のんびり過ごしたりして英気を養うこと、そして中学生として「自ら学ぶ能力を養うこと(決して中学校の授業の先取り学習をするという意味ではない)」などを挙げておられました。

一方、この作品の主人公の少年ハンスは、神学校合格後、入学までの長い夏季休暇の間、最初こそ受験勉強中我慢してきた川での魚釣りや森の中の散策などを楽しんでリフレッシュしますが、周りの大人から神学校に入ってからの勉強の先取りを勧められたことをきっかけに、すぐに勉強ばかりの生活に逆戻りしてしまいます。
そのまま神学校へ入学し、しばらくの間は先取り学習の効果と、入学後の本人の努力もあって、それなりの成績を維持しますが、その後、徐々に心身が疲弊していき、先ほど触れたように、最後は神学校を退学することになります。
振り返ると、少年ハンスが疲弊していく原因は、神学校の生徒や先生との関係や自分に過分な期待を抱く父親の存在(ハンスには母親はいませんでした)など色々あるのですが、受験勉強が終わった後、休養を取って、少年らしさを取り戻す期間がなかったことも一因となっています。

受験勉強から解放され、中学校に入学するまでの期間はわずか2か月ほどですが、この短い、貴重な時間を、わざわざ中学の先取り学習などに使うのではなく、残り少なくなった小学校生活、特に受験勉強のために犠牲にしてきた部分を取り返すような生活のために使ってほしいという中学校の先生のメッセージが伝わってきます。

残念ながら、コロナウイルスの影響で、楽しいはずの小学校最後の時期に次男は学校に通えない生活が続いていますが、友達と遊びに行ったり、家ではテレビやゲームをしながら本も読んだりと、まったりとした生活を楽しんでいます。
4月からは新しい環境の中に入ることになり、電車通学になりますし、部活の練習が始まるようになれば、体力的にはかなりきつい日々が続くことになるでしょう。
せめて今の時期はゆっくり過ごして、十分に英気を養ってほしいと願っています。