プロバスケ選手を育成するシステムと、そのシステムの中でも育てられない部分 | フープドリームズ【子どもの心技体を育てる地域コミュニティを民の力で運営しています】

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理念
1.未来を築く子どもたちの心技体の成長をサポートする
2.家族や地域社会の和を大切にし、永く楽しめる地域コミュニティを育成する

こんにちは。
フードリのたかじさんこと、高比良です。


6月29日~7月3日の間、
エルトラック主催のスペインツアーに参加してきました。


スペインのサラゴサという町で行われた、
男女のU-17世界選手権を観戦することが目的でした。


その中から、今日は
スペインバスケプロリーグチームの
育成統括のルイスさんとの会談のレポートをお送りします。


試合は午後からということで、初日の午前中に、スペインのリーガACB(プロバスケリーグ)のチームカイサラゴサの育成のトップの方と会談をさせていただきました。



写真真ん中上の大きい方が、CAIサラゴサの育成担当責任者、ルイス・アルバレホさんです。


1時間半ぐらいの時間、
カイサラゴサの育成の哲学やシステムなどを
聞いてきました。


カイサラゴサでは、13歳から18歳までの選手を
プロ選手にするために育成しています。
選手が60人、コーチが15人います。


そのお話の中から、
いくつかピックアップしてお伝えしたいと思います。


○13-15歳
この3年間は練習の
90パーセントが個人スキルと身体作りです。


90パーセントが、です。


一回の練習時間は3時間で、時間の振り分けは、

個人スキル練習が1.5h
身体作りが1.5h


という感じです。


身体作りの内容に関しては、

・体幹
・コーディネーション
・アジリティ
・同側・逆側運動
(正しい名前がわかりかねますが)

と話していました。


その年代でしか獲得できない動きを獲得させる
ことに拘っている、というお話でした。


○多くて3対3まで
(何歳までの練習がそうだったか、正確ではないですが、)
15歳ぐらいまでの間は練習で5対5になることはない。
多くて3対3までの練習。
1-0,1-1,2-1,2-2,3-2,3-3
と練習していく、というお話でした。


じゃあ大会などの試合の時はどうするかということなのですが、
オールアウト(1センターの事もあるが)でさせる、ということです。


○15歳以下はスクリーン禁止
そのままの意味です。
スクリーンを使わないで抜けるようになることに
まずは拘って育成しているのだと思います。


○ポジションについて
13,14歳はポジションを固定しない、
全ポジション全員が練習する

15,16歳はインサイド、アウトサイドに分ける
(但し、中間に位置する選手は両方させる)

17歳以降で1~5番ポジションのスペシャリティを教える


○哲学
勝つことよりも、個の才能を育てることを優先する。
これは以前我々がセレッソ大阪の育成のトップの方とお話し
した時も同じことを仰っていました。
セレッソ宮本氏と北口コーチ
その時のブログはコチラ


具体的な例としては、、、

ちょっと極端ですが、
・例えばチームに5人ガードがいても良い。
・試合では必ず全選手10分以上は出場させる。(各年代12人)
・相手のテクニカルファールでフリースローがあって、外したら、
次に同じシチュエーションが来たら、その外した選手を指名して打たせる。
・試合中に取るタイムアウトは試合を好転させるためでなく、
自チームの選手のプレイを好転させる為に取る。
つまり、練習してきた内容のプレイをしていない時に
タイムアウトを取って修正し、選手を向上させるためだけに使う、
というようなことでした。

(セレッソの方も、こんな話をされていました。
「例えチームのスーパーエースでも
全国大会の決勝戦前日に約束違反をしたら
その試合には絶対に出さない。
その時にしか教えられないことがある」
とお話になっていたことを思い出しました)


○コーチの割り振り
例えば13歳のコーチは14歳のアシスタントコーチをしている。
2学年またがってコーチングすることで、
選手たちの年代が上がるときの
コーチのつながりをよくしているそうです。
(3学年だったかもしれません、
つまり、コーチが年代をまたがってみているという意味です)


○週に10時間以上練習することが大事
もちろん、プロを目指すチームの練習だからですが。


以上が私がピックアップした内容です。


もちろんトッププロを育成させるための仕組み、
システムなので我々の立場で(皆さんの立場で)
全部取り入れることは不可能だと思います。


しかし、これが一つの理想形であることを頭に置いて
普段の練習に取り組むかどうかで、
我々も役立てることが出来ると思います。




【こぼれ話】
そのほかで面白かったのは、
こぼれ話的に出てきたお話でした。


参加者の質問で
「選手たちの心の教育はどうしているの?」
ということを聞いたのです。


その答えが面白かったです。


「正直そこに時間やお金を費やせていないんだ。
週に4回練習、3時間、やっているんだけど、
本当はそのうち一回を選手たちじゃなくて、
保護者達を呼んで教育したいぐらいなんだ。

保護者の哲学が選手に与える影響っていうのは
それぐらい大きい。
例えば、選手が『今日は10分しか試合に出られなかった』
と家で愚痴った時に保護者が正しいリアクションを
してくれることが、選手の成長にとってとても大事
なんだけど、
それをわかっていないと、大変だね」


60人のティーンエイジャーを抱える育成のトップも
そうおっしゃいました。


「保護者がちゃんと教育していないと、
例えプロになったとしても、お金のことで問題が起こる」



とも話していました。





他のこぼれ話がもう一つ、


プロを目指す選手たちがキャリアを諦める
最も多い年齢が18歳
だそうです。


将来のことを考えて大学に進む道を
親と一緒に決めてしまうそうです。


育成の人も選手がプロになれなかった時
のことも気にしていて、親との3者懇談で
プロの道も、一般の道も残せるように話すそうです。


例えば、、
4年ではなく、8年で大学に通いながら、
プロも目指し続けられるような選択肢

を用意もするのですが、なかなか難しいようです。


なんでそれぐらいのことが出来ないの???
と思いますよね。
中学・高校では勉強と両立させながらやってきたはずなのにね。


なんとその一番大きな理由は、
遊びやお酒や車など、その年齢特有のことに時間を割いてしまい、
バスケと勉学だけに集中できなくなってしまうから

なんだそうです。



(年齢による肉体面の成長の関係で)
18歳のときにまだ芽が出ていなくも、
そこから4年間ハードトレすればプロになれる!

という選手が沢山いるのですが、
上記のような理由でフェイドアウトしてしまうのが
本当にもったいない、と残念そうに話していました。


どこの世界の何のスポーツの世界でも
あるある、な話なんでしょうね。


プロになるのはほんの一握り、
プロになったとしてもそれだけで食べられる人は
そのうちのほんの一握りです。


スポーツがうまくなるだけじゃなく、
一人の人間として大切な事を身に付けることも大切ですね。



トッププロを育てるためのシステムと、
そのシステムでは育てきれない人間力とその重要性。


色々な気づきをさせてくださった、会談でした。





↓の写真はオマケです(笑)