女子100メートルと200メートルの日本記録保持者・福島千里選手が滑るようにトラックを駆ける。
「あれでいいの?」
走りを見ていた小学生から声が上がった。
個性的な走りに驚いたのだ。
指導する中村宏之監督の方針は“型にはめない”。
人間はDNAも骨格も違う。
だから、走るフォームも違って当然。
選手に合ったものを引き出すのが指導者の力という。
練習内容もユニーク。
例えば、冬にも脚を速く動かす。
これは、速度を緩めて長い距離を走る、日本の冬季練習の常識を覆した。
今や寒さの厳しい北の大地からも、強い選手が育つ(『日本人が五輪100mの決勝に立つ日』日文新書)。
既成観念や常識の枠にとらわれない。
そこから、思ってもみない変化がもたらされることがある。
時代を動かす大きな流れも、時として柔軟な思考から生まれた発想がつくり出す。