街中の果物屋に飾られた、1個のりんご。
通る人々が、それを見てつぶやいていく。
“ビタミンがいっぱいありそう”“1個30円のりんごを3個買うと……”“店の入口をちょっと直せば、もっと客が来るのに”。
『1こでも100このりんご』(井上正治作・絵、岩崎書店)という絵本のストーリーだ。
りんごは、聞こえてきたつぶやきから、声の主がどんな人かと考えを巡らす。
お医者さん、算数の先生、腕のいい大工さん等々――。
物語を締めくくるりんごのつぶやきが、なんとも哲学的だ。
“見る人が100人いれば、私は100通りのりんごになるんだわ”
子どもに読み聞かせた後、こう伝えたいところである。
「りんごだけじゃないよね。『あのお友達はどんな人?』と聞いても、みんな答えは違うよね」「お友達のいいところを見つけてあげることが大事だよ」
優れた絵本は、簡潔で深い教訓に満ちている。
あらゆる世代の心に響く。
相手がどう見えるかではなく、どう見るか――人材育成のポイントでもあろう。
“私にはない素晴らしい力を持っているはず”。そう信じて関わることが、自他共の成長につながる。