広島県呉市に、従業員18名の衣料品メーカーH社がある。
もともとは、地元では知られた老舗のO呉服店であったが、現在の主製品は身障者・高齢者の衣料品だ。
事業転換のきっかけとなったのが、当時O店を経営していた現社長の両親が重い病気にかかり車椅子生活、寝たきり生活を余儀なくされたことにある。
仕事の合間を縫って病院に見舞いにいくと「下着をおろすのに手間取り、ベッドを汚してしまった」とか、「車椅子の生活では着る服がないから外に出たくない」などと言う光景をみた。。。
そんな両親のために、衣服をさがすが、当時は見当たらなかった。
やむ得ず、両親のためになればと、呉服店を縮小し、現在の身障者・高齢者用の衣服をつくり始めた。
そうこうするうち、今度は、自分自身が病気になり、人工肛門をつけた生活を強いられる身体になってしまった。
いままで、身障者・高齢者の方々のためになればと、頑張ってきたが、いざ自分自身が寝たきり状態になるや「自分はなんと不便な商品をつくっていたのか」と、ベッドの上で自問自答したという。
その後、退院し、「自分と同じ思いをしている人は全国にたくさんいる。こうした人々のお役に立たねば」と、呉服店を廃業。
身障者・高齢者用の衣類の製造に、本格的に事業を転換していく。
数年後、O社長が「腰が曲がった状態で硬くなってしまった人にとって、ポケットがここにあると便利なんです」と、足の膝の下、くるぶしあたりにポケットがつけられたズボンを説明してくださる姿がとても印象的だった。