幕末の蘭学者としても知られる三河国田原藩の家老・渡辺崋山は、人と交渉する際に心掛けるべき教訓として「八勿の訓」を掲げた。
“感情に流され、平常心を失ってはならない”
“表情は冷静に、心は温かく”、、、など
全8条のうち、最後に彼が綴った一文は、、、
“基本が確立していれば、あとは皆がそれに従う。その基本とは誠実である”というものだった。
「交渉術」を説く本が多い。また、“日本人は交渉下手”とか“国際社会で発言力を高めよ”等の意見も耳にするが、要はテクニックではないということかもしれない。
カンボジアや旧ユーゴで紛争調停を指揮した明石康・元国連事務次長は、こう語る。
「調停者は雄弁である必要はない」「滔々と捲し立てるよりも、まずはグッド・リスナーであるべきだ」(『「独裁者」との交渉術』集英社新書)。
しかも、これは調停のプロたちに共通の意見だという。
よい聞き手であれ!――これも「誠実」と一脈通じる話であろう。
目標に真剣であれば、人は誠実にならざるを得ない。
「相手がだれであれ、誠実を貫き通していくことだ。最後は『誠実』が勝利する」
“誠実こそ最大の武器”と、今日も頑張っていきたい。