2013年7月に見たライブ | 音楽偏遊

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最近見たライブや気になるアーティスト、気に入った店や場所など偏った嗜好で紹介してまいります。アーティストさんへの言及などは、あくまで私個人の見解であり、特に中傷や攻撃を意図したものではないこと、ご了解下さい。

2013年7月、猛暑のきざし晴れ

参院選では、自民党が圧勝して衆参のねじれを解消。これで政策運営の停滞から脱却できるのかな。一方で「あまちゃん」の大進撃は続いてるねー。あんまり見てないけど(笑)

そんな2013年夏、あの二人がなんと47都道府県ツアーに飛び出した。年末までの半年弱で全県でライブするという。ツテを頼って、次々とブッキングを入れているが、どうしてもライブハウスなどでできない場合は路上ライブを慣行するという。そんな男でも大変そうなツアーを決断したのは、女性シンガーソングライターの斉藤麻里とやもとなおこだ。

そのライブを一度でも聞けばファンになってしまう、そんな魂のこもった歌を、ギター一本で存分に聞かせてくれる実力者たちだ。都内中心に時に月10本以上のライブをやり、迸るエネルギーとセンスを持ち、人生を音楽にかけている。100人超のワンマンライブを、自らの力だけで成功させてきた。さらに、誰とでも心を開いて打ち解けられる気持ちよい性格の持ち主たちだ。だがこの2人、これからもっと上のステージ=てっぺんを目指すには、更に高いハードルを自らに課す必要があると考えた。とどまる所を知らぬ向上心と決意、その意気は素晴らしい。ほんと、レスペクトする。

7月はその2人による47都道府県ツアー出発記念ライブから始まった。これまでの単発のツアーで知り合いになり、今回のツアーの先々でお世話になるミュージシャンたちを先に東京に呼んで、一緒に出発記念ライブをやろうというもの。個性的な面々が集まり、面白いライブになった。勿論、その中で一番盛り上がったのは、2人が共に歌った音譜テッペンまで~音譜という曲。彼女たちの旅立ちを祝いに集まった100人を超すファンたちの熱い、熱い声援で会場は最高潮に達した。

それでは7月の参戦歴をチェック!

   音譜    音譜   音譜

1日(月)『鉄ロックフェスティバル!!! vol.135』 ~やもまり47都道府県ツアー出発記念スペシャル~@渋谷gee-ge
斉藤麻里 / やもとなおこ / 魅多羅詩じゅん子(大阪) / とかげのわかば(兵庫) / 成瀬ブルックリン(佐賀) / sui(鹿児島)

3日(水)大黒美和子復活ライブ「ただいま」@六本木1633
大黒美和子、おがさわらあい、上野まな、小野亜里沙

5日(金)小林未郁ワンマン「紫陽花迷路」@吉祥寺Star Pine's Cafe

7日(日)チャラン・ポ・ランタン ワンマン『七夕ライヴ ~織姫 彦星 遠距離恋愛 もう限界 Vol.2~』@東京キネマ倶楽部
チャラン・ポ・ランタンと愉快なカンカンバルカン

12日(金)保刈あかねワンマン@武蔵小杉Light Globe

15日(月祝)“休日のソラと、君のウタ。~海の日編~”@赤坂 graffiti
斉藤麻里、坂本麗衣、はるのまい、東木瞳、さくらかおり

19日(金)「」@新横浜Bell's
LADY,THE BITCH、Sherry...、松千、ウラジミール・レイノフ

23日(火)「Blues Party -JUKE POINT-」@渋谷under bar
The Soul Klaxon / 人と人 / CHATTER BOX /
ダウン   ダウン
鉄ロックフェスティバル!!! vol.137@渋谷gee-ge
星羅 / Saku / Spice / healah / yasumidu / 永山夏希 /

24日(水)たをやめオルケスタ「緞帳プレリュード」リリース記念!慶賀の至り大祝賀会!!(USTREAM公開生放送)@浅草KURAWOOD

25日(木)「CATCH BALL vol.15 りゅうく生誕祭」@渋谷eggman
Avaivartika、Violent is Savanna、mimic.、ロメロ、ストロボサイダー、SONOKO

26日(金)“夏雲の律動'13”@赤坂graffiti
アルコリカ、郁彩、有坂ともよ、とっと

31日(水)「Special 3man Live!! Vol.10」@代官山 Nomad
小林未郁、葉山久瑠実、小松原沙織

   音譜    音譜   音譜 


こうして記録を振り返ると、この月は面白いワンマンが沢山あったな。小林未郁、チャラン・ポ・ランタン、保刈あかね、たをやめオルケスタ…。個性たっぷりの顔ぶれだ。


まず5日のい小林未郁「紫陽花迷路」。未郁さまの音楽を一言であらわせば「耽美」だろうか。単に美しいのではない。耽溺してしまうような麻薬性、いや毒を併せ持つ独自の世界観は、聞くものを絡めとる。彼女は美意識が高いから、自分の声や歌い方でどんな世界を現出させるか、すごく敏感に感じ取りながら歌っているのだと思う。

今回のテーマは紫陽花あじさいあじさいステージ上のスクリーンには、一面うす紫の迷路のなかで、人に憧れを抱いた案山子がイバラに絡めとられ、血を垂れ流す絵本のような映像が映し出されていく。彼女が歌いだすと、息をつくことさえ許さぬ張り詰めた空気が辺りを支配する。そう、彼女は緊張感の魔女なのだ。楽曲と楽曲を途切れることなく連鎖させ、拍手する間さえ与えない。かわいらしい人形のような顔に、たをやかな微笑みを浮かべながら、引きずり込んだ幻想世界からお客さんを逃さぬ見張り続けている。会場の気がそれそうものなら、ひと際、声を張りつめ息を呑むような表現でたたみかける。怖ろしい魔性。確かな歌唱力と演奏力に、美しい声と存在感。彼女の世界観に埋没していく快感は、説明しがたいが極上の音楽体験だ。


今月見たワンマンのなかで、インパクト絶大だったのが七夕のチャラン・ポ・ランタンと愉快なカンカンバルカンだ。『七夕ライヴ ~織姫 彦星 遠距離恋愛 もう限界 Vol.2~』と銘打ち、ど派手に織姫姿でステージ上手の階段上から登場したvo.ももちゃんは、そのまま客席へ入り、肩車されて満員の客席の中を練り歩く。「お前たち、楽しんでいるかー」と煽り客席を沸かせ、ステージに戻ればブタちゃんブタのぬいぐるみを脇にはさんで(笑)美空ひばりのような歌唱力で度肝を抜く。驚くべきは、彼女がまだ若干ハタチ、20歳だということだ。

そしてその世界観、楽曲、アレンジ全てを取り仕切るのが姉の小春、ザ・アコーディオン弾きだ。アコーディオンと管楽器3本にドラムとベースが紡ぎ出す音楽は、ほかのどんなアーティストにも似ていない独創性で唯一無二の世界観を持つ。ラテンでもあり、昭和歌謡でもあり、ロシア民謡でもある。小春ちゃんの毒舌ぶりが生き生きとした歌詞になり、ももちゃんの熱唱でがんがん、聞くものの心にぶつかってくる。決してハードロックではないのに、そのインパクトはそんじょそこらの甘ちゃんなガキバンドに比べ絶大だ。

たっぷり2時間ほどチャランポワールドで楽しませてくれた最後に、ももちゃんがステージ中央に歩み出て、ひとり話し始めた。「今までは小春に甘えていたけれど、私ももう成人。これからは自分が引っ張ります。応援よろしく」とスピーチ。感動に涙が出そうになった。彼女が16歳のときから見ているが、こんなにも大人になったのだなあと。小春も感動していた様子。会場のお客さんから暖かい大声援をもらって、ますますはっちゃけた姿は頼もしかった。ただ間違った方向にはっちゃけないといいんだけど(笑)彼女たちは間違いなく大物。今後、とてつもないビッグアーティストになると、僕は思っている。今後の活躍が楽しみだ。


24日のたをやめオルケスタ!は、新アルバムのレコ発企画。1st Full Album「緞帳プレリュード」発売だ!ラテン、ジャズ、カリプソ、ブルース、スカ、歌謡曲などなど多彩な要素を詰め込んだ1枚だ。この女子18人のビッグバンドが作り出す音楽は、明るく楽しくセクシーで爆発的だ!サックス5人、トロンボーン4人、トランペット4人のホーンセクションのド迫力サウンドに、パーカッション、ドラム、ベースらのリズムセクションが作り出すグルーヴ、さらにキーボードとボーカルが描くメロディーに、生ライブでは思わず踊りだしたくなる。女将お手製のカラフルで統一感ある楽しそうな衣装に身を包み、女18人が本当に楽しそうに音楽やってる。ザッツ エンターテイメントだ!!

しかもこの日は、単なるライブではなく、女子18人によるさまざまなイベントがあって楽しい、楽しい。さっこちゃん率いるアイドルユニット「チームサッコ」のステージあり、腕相撲大会あり、トークセッションでレコーディングの裏話大発表会あり、ひとり一人のMCタイムあり…。抱腹絶倒のこのライブ見るまで、18人のうち6、7人しか顔と名前が一致していなかったのが、この日全員を完全に把握できたのも、楽しいイベントのおかげ。全てはUst中継もしており、おおいに宣伝にもなったのだろうなあ。いやー、楽しかったよー。


最後にもうひとつ、3日のライブで大黒美和子ちゃんが産休からついに戻ってきた。またあの情念に満ち満ちた演歌のような歌を聴けると思うとうれしい限り。曲はポップスなんだけど、ま、もともとプロの演歌歌手を10年やっていただけに、気持ちをこめたときの歌いまわしは、そこらの女子シンガーソングライターとは別格の感動もの。これから歌いこなして、徐々に全盛期の歌唱を取り戻していくことだろう。ああ、また彼女の歌で涙を流したいものです。美和子ちゃん、復活おめでとう!