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「鉄ロックフェスティバルvol.80」@渋谷gee-ge
出演:oaグミ →oa加藤はるか →関取花 →Rabuka →保刈あかね →ヒグチアイ
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7th floorから独立するように、gee-geが誕生して1年半。ブッキングの鉄平さんもgee-geに移り、この新しいライブハウスのスタートと同時に心機一転立ち上げたのが、女性インディーズミュージシャンを中心にしたブッキングイベント「鉄ロック」だった。
これまでも色々な節目で記念祭を仕掛けてきたが、今回も80回目ということで、選りすぐりの実力派アーティストを揃えてきた。個人的にも大好きなヒグチアイと保刈あかね、それに関取花と、いずれ劣らず素晴らしい声と迫力の持ち主たち。これは見ずにはいられません。
実はこの日、裏で見田村千晴や河合杏林、kayocoらが競演する下北沢Gardenや、いいくぼさおりや辻香織が出る晴れ豆など、見たいライブが各地であったが致し方ない。
2人目のオープニングアクト、仙台在住のギター弾き語り、加藤はるかの冒頭から聞く。
1)太陽
2)君を好きになって?
3)Stay With Me
4)Freedom
5)感情のゴミ箱
聞けなかったが、1人目のオープニングアクトのグミ=めかるが少ししか歌わなかったらしく、加藤はるかが2曲余計に歌えることに。計5曲、メインアクトと変わらない。ただ今夜のメインの4人とは、力量の差が歴然。oaで良かったと思う。逆にこれから目指すべきレベルを目の当たりにできて、彼女も学ぶことが多かっただろう。本人も「勉強になった」と話していた。
前に上京した際も、彼女がgee-geで歌っていたのを覚えてる。素直でまっすぐ。ややもすると平板になりがちだが、よく伸びる良い声を持っている。歌唱力やステージングなどこれからだと思うが、これから伸びてくるのではないかな。楽しみ。
さあ、ここからが本日の興奮のステージだった。
1番手は関取花。いやー、分かっちゃいるけど、いつもながら彼女が歌い出した瞬間にはゾクッとする。空気を切り裂くぴーんと張り詰めた素晴らしい声なのだ。
1)汽車のうた
2)寿限無
3)1216
4)石段のワルツ
5)めんどくさいのうた
最初と最後以外の3曲は初めて聞く曲。1216は亡くなった大切な人への想いを昔書いた曲という。一方、2)4)は新曲。特に寿限無は面白いねー。彼女の好きな「寿限無寿限無~」というあの落語を題材にした曲で、うまーくまとまっていて聞き入ってしまうのだが、歌詞に「やぶら小路の藪柑子」とか出てくるから笑ってしまう。いやー、上手いねえ。
「石段のワルツ」は彼女にしては珍しい短調で、しかもワルツ。本人も短調の曲が作れたことが嬉しいと感激していたが、決して暗いわけでなく、ジャンジャンジャンと刻むギターにのせて、迫力あるボーカルが聴き応えあった。
2番手はRabuka。今夜はボーカルゆめんちゃんと、グランドピアノにしゅうた君の二人編成。本当は3人編成のグループなんだけどね。
そのゆめんちゃんがまた、本当に楽しげに表情豊かに歌うのだ。そして彼らの音楽も、軽やかにリズミカルにふわふわと空を飛んでいるように心地よい。つられてこっちも楽しくなってくる。表情豊かなアーティストって、すごい好きなんだよなあ。
1)たびのとり
2)チャーミー
3)ひのせき?
4)アルト
5)その先に続く海
6)twice
特に気に入ったのがチャーミー。幻想的で、ノリノリで、二人が紡ぐその空気に包まれるだけで、なんかハッピーになる。大前提として、歌が上手いんだよね。上手くないと、聞いていて楽しくないから。また聞きたい、そう思うナイスグループです。
さあ、そして今夜、一番聞きたかった保刈あかねの登場だ。いや、ヒグチアイファンとしては無論、ヒグチを聞きにきてるのだけど、ホカリがまたいいんです!これが。
あえて座高の低い椅子に腰掛け、膝を立てるような姿勢で真っ正面を見つめる。そして、ぐっと息を吸い込み、ためて、そこから息とともに吐き出された声はなんて力強く、飲み込まれるような深さを持っていたことか。
gee-ge店内の空気が切り裂かれていく。一瞬で虜になってしまう。そして、切れ味の鋭いギターにのせて、世界をぐいぐい広げていく。歌詞に説得力があるのだ。
1)つないだ手の先に
2)いつでも君と
3)迷子の犬
4)嘘つきと言った相手は自分だった
5)朝焼けセンチメンタル
定番の「いつでも君と」や「朝焼けセンチメンタル」「迷子の犬」は、安心して引き込まれる。でも今夜、個人的にすごく気に入ったのは「嘘つきと~」。切なく、ブルージーに歌い上げる彼女の姿の格好いいことったら。その歌声は小さく、強く、優しく、強く、ドラマチックで息もつけない。素晴らしい!
さあ、そしてトリはヒグチアイ。今年のヒグチアイ聞き初めだ。
髪の毛がさらさら艶やかで、きれいに内巻き。なんか最近、ヒグチアイ、きれいじゃないかい?何かいいことあったかな。そんな邪推はどうでもいいのだが、昨秋ごろから彼女の恋愛の曲の説得力が増している気がする。表現力が増しているんだよなあ。
今夜もそんな恋歌で攻めてくるかと思いきや、攻撃的な選曲をもってきたね。古い曲も歌うと言っていたのは、どうやら「証」のことか。昨年末にもどこかで歌ってなかったかなあ。個人的には、もうちょっと古くて、最近歌っていない曲たちのどれかを聞きたかったのだが。「大人」とか。歌わないだろうな、あの曲は(笑)
ただ最初の「証」という力業の曲を、今夜はどこか軽やかに歌っていく。いや、十分に迫力あるのだが、関取花や保刈あかねというパワフルな歌い手の後だけに、軽やかに聞こえるから不思議。それでも、「黒い影」のど迫力とかは他の追随を許さない。彼女のピアノがまた圧倒的な力を持っていて、聞く者の思考力を奪い去り、黒い奔流に飲み込んでいく。
最後の「ココロジェリーフィッシュ」では、やはり軽やかなピアノの調べに連れられて、いつのまにか深く深く海のなかに沈潜してしまう。そして、息つく間もなく、大きな意志に同調してしまうのだ。すごい。
1)証
2)夏が来るちょっと前に
3)本物と正直
4)黒い影
5)ココロジェリーフィッシュ
ふと思った。これからヒグチアイはどこに向かっていくのだろう。まあ、たぶん、歌って踊れるピアノ弾き語りではないだろうけど(笑)
今夜は最後まで、本当に充実のライブだった。さすが鉄平さん!今年もすてきなブッキング、よろしくお願いします。