文化放送サテライトプラス@浜松町のフリーライブへ、Rihwaを聞き行く。天気もよく、暑すぎず、屋外で聞くには心地よい。
今宵はRihwaと深津ジュリが交互に30分ステージを2回やるのだが、先攻したRihwaの1stだけ聞く。
1)あなたと2人
2)Tell Me What You Want
3)可愛いお願い
4)ミリオンズ
5)My Way
相変わらず満面の笑み。元気一杯でよく通るご機嫌な声。彼女が歌い始めると、明るい空気が瞬時に広がり初めてのお客さんも引き込まれる。楽曲は、彼女の性格と声にピッタリのアメリカンなポップロックで踊れるグルーヴと楽しさだ!
彼女の勢いは英語で歌ってる時にと特に目立つ。Tell Me What You Wantは、英語の歌詞ながら滑らかに、飛び跳ねるように、歌声が弾んでる。発音も感覚も、ネイティブのよう。背にした文化放送の壁が反響板になり、エッヂの利いた彼女のギター音が屋外ながらしっかり響く。
「可愛いお願い」ではアメリカンアイドルのように、奔放なガーリーポップでcute。続いてしっとりと、大切に丁寧に「ミリオンズ」。彼女が自分の宝ものと呼ぶ1曲だ。ただ、明るいうちはこの路上ライブには似合わないか。
それより、自分は自分の道をしっかり進んでるよ、ここからだよと、力一杯歌い上げるMy Wayが響く。♪とれないケチャップの染みがお気に入りなの♪という歌詞が僕のお気に入りなの(笑)
彼女の根っから明るく、元気なロックは、間違いなく暗い世相に求められてる希望の光。この時代だからこそ、活躍してほしい若手有望株だ。個人的には秋以降、対極的な見田村千晴とRihwaの二人がどれだけ世間にアピールしていくか、そこに注目している。実はこの後、はしごでその見田村千晴のライブを見にいくのだが、それは別稿で(笑)
ただ、一人気を吐くRihwaを見ていて、先日この同じ文化放送サテライトプラスで、Rihwaと同じように元気なロックをギター弾き語りで聞かせてくれた「荒牧リョウ」の事を思わずにはいられなかった。
荒牧リョウは、ギター弾き語り女性シンガーで、その演奏は抜きん出て熱いロックなのだ!一人でギターをかき鳴らし歌っているだけなのに、その分厚い音はフル装備のロックバンドに匹敵するパワー。その歌は長渕剛にだって負けない力強さに満ちている。
精力的にライブハウスで演奏するだけでなく、震災後は毎月のように支援物資や古着を大量に車に積み込んで一人で被災地を訪問。避難所を回り、物資を渡すとともに、自分の音楽で被災者らを励まし、勇気づけてきた。被災地では車に寝泊りする日々。その行動力、明るくからっとしたオープンな性格、何より楽曲から伝わるメッセージと情熱で、本当に輝いている存在なのだ。
彼女のライブを初めて見た瞬間、僕は出会ったことを確信した。彼女こそ、僕が求めていたアーティストだと。それは偶然なのだけど、必然にしか思えない出会いだった。それが5月23日の渋谷gee-geの「鉄ロック」。くしくも、対バンで彼女の前に演奏したのがRihwaだった。
荒牧リョウのライブはそれから3回見て、益々はまった。彼女を知ったのはほんの数ヶ月前なのに、もうずっとファンだったような気分になっていた。勿論、彼女の「鮭」時代は知らないし、「新巻稜」時代も知らない。荒牧リョウと名乗り始めた今年からしか彼女を知らない。だからこそ、これからもっともっと彼女の歌を聞きたい、そう気持ちが募っていた矢先のことだ。
8月15日、Twitterで被災地・石巻から東京に無事帰ってきた旨を呟いたのを最後に、彼女はぷっつりと消息をたった。正確には、世間への発信を止めた。
8月25日の代官山LOOP をはじめ、直近に決まっていたライブを全てキャンセル。数日のうちにTwitterとmixiのアカウントやブログのコメント欄も閉鎖、HPの更新も止まった。かなり慌しく、真意を一切語ることもなく、異様な存在の消し方だった。彼女からの発信が完全に無くなる中で、自分を含めファンの皆さんは心配を深めていった。色々な人がブログやツイッターで、懸念を書いていた。
そして9月4日、荒牧リョウ29歳の誕生日に、彼女が自身のブログ(アメブロ「鮭道」)を20日ぶりに更新。本人の言葉でつづられていたのは、「個人での活動を無期限で休止しようと決めました」という無情なお言葉。ああー、なんでー。これから、もっともっと、荒牧リョウのライブに通って、その音楽に浸りたいと思ってたところだったのに。
理由は多々あるとのこと。それはそうだろう。彼女はステージで、歌と一体だった。彼女の音楽は彼女そのもので、彼女の体の奥底からその音楽を奏でていた。4月26日に「Colorfull」というアルバムも発売したばかりで、その楽曲も全て彼女の血肉になっていた。そんな音楽と分かれる覚悟って、まさに身を切るような痛みを伴うはず。生半可な決断ではなかったろう。
あえて「理由は多々ある」というからには、単に重篤な病気や事故といった事態でなかったと推察できる。その点は、ひと安心。その上でのアーティスト自身の重い決断に、部外者があれこれ口を挟めるものではない。
それに荒牧リョウの音楽だけでなく、その人格にも惹かれたのだ。音楽を休止したからといって、彼女を嫌いにはならない。それどころか、人間荒牧リョウがこれからどんな生き様を見せてくれるのか、楽しみでしょうがない。あれほどの覚悟と行動力を持った女性が、最も大事にしてきた音楽を断念するからには、それを超える何かに人生をかけるということだろう。それは何なのか。彼女の軌跡を辿ると見えてくる気がしなくもない。
僕は今後も彼女のファンであり続ける。別に個人的に親しい関係とかではないし、彼女が決断に至った経緯も事情も知らない。でも、彼女はとにかく真っすぐ。応援したいと思える女性なのだ。
そんな彼女が、最後のライブを開く。9月25日@立川Heart Beatだ。勿論会いに行く。これがラストかも知れないのだから。
で、少しだけ期待している。「やっぱ、止めるの止めたー」とあっけらかんと言い放つのを。あるいは、「実は個人での活動を休止し、これからバンドで活動しまーす」とずっこけさせてくれるのを。もしかしたら「新しい名前で、メジャーデビューします」と驚かせてくれるのを。
もっと書きたいことあるんだけど、それは25日のライブ後にしたいと思う。蛇が出るか、それとも美しい涙か。楽しみにしたい。