2011/8/14 「異口同音」吉村かおり、ヒグチアイ@ノマド | 音楽偏遊

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ああ~、夏休み♪の最後の日。イタリアでオペラ三昧の日々を過ごしたのが、はるか昔のことのよう。今日のライブから、一気に日常復帰モードだ。

そんな節目(笑)にうってつけの一本があった。これだ。

「異口同音」@代官山ノマド
吉村かおり&ヒグチアイ ツーマン
シークレットO.A.有り

今夜は他でも沢山あったが、甲子園が熱い今日この頃、豪速球投手ヒグチアイと、変化球投手かおりぃの投げ合いは、きっと白熱すること間違いなし。これは楽しみ!

ライブ開始を知らせるサイレンこそなかったが、ステージは冒頭から盛り上りをみせた。というのも、始球式(オープニングアクトともいうw)に、いきなり斉藤麻里が登板。夕焼けセンチメンタル~ダイブまで4曲熱唱し、最後はイエーイエーとコール&レスポンス!一気にテンション上げたからね~♪

いつものお客さんも、みな誰がo.a.か知らなかった。「少なくともマリエちゃんはないと話してたよ」「事務所に木下直子いたけど、姿さらしてるからシークレットじゃないしなあ」と開演前はこの話題でもちきりだったとか(笑)斉藤麻里は想定できたけど、けっこうみな驚き大歓迎。大成功だったね。


さあ、そしてツーマン本番だ。

先攻は吉村かおり。相変わらず独特の不思議な世界観がいい。

クラゲやチョコレートや野ウサギが乱れ飛ぶ。何度、ライブを聴いても、その詩の展開がよく分からない曲が沢山(笑)こんな歌、彼女しか作れないよ。うーん、天才ビックリマーク少し近いものを持ってそうなのは井上侑かな~。

その世界観を、キャラと一致している声や歌い方で聞かせるから、気持ちが入り込める。一致しているってこと、結構重要だよね。その辺りは計算なのか、感覚なのか分からないけど、吉村かおり「さすが」と毎回思わされる。

ふと初めて彼女を見た代々木ブーガルのライブを思い出した。その日は5組ほど全く知らないアーティストばかり出演していたが、吉村かおりだけ3Dのようにステージから飛び出して見えた。彼女の描き出す世界が、立体的でカラフルで、ありありと浮かびあがるのだ。さすが「おもちゃ箱ポップス」の歌い手を自認するだけある。他の女性鍵盤弾き語りの恋愛ソングは、本のページのようにのっぺり書かれた文字にしか聞こえず、その違いは歴然。彼女の曲の中で一番才能を感じたのが「チョコレートが止まらない」だった点は、今思うと自分の耳をどうかと思うが(笑)

<セットリスト>
1)てっ辺
2)海月
3)チョコレートが止まらない
4)野うさぎ駆ける
5)においのかたち
6)あざやか世界
7)闇とユートピア
8)きみのあした

闇ユーときみのあしたも大好きだな。特にきみのあしたは元気出るよね。


さあ、そして後攻のヒグチアイの番だ。

「吉村さんの声がすてき」と彼女がMCしたら、バーカウンター内にいた吉村かおりから「そっちこそ」と応答が。こういうアットホームなところがノマドの魅力。そして、声については、吉村かおりと全く同感。ヒグチアイの声はずるい(笑)あの独特の野太い迫力ある声で歌われる楽曲は、おのずと迫り来る何かを伴い、聞く者を圧倒するのだ。特に新曲の「黒い影」とか、定番となった「ココロジェリーフィッシュ」のサビとか、相変わらずのパワー。がつーんと来る。

一方で最近の彼女が上手いのが、そのパワーをためるところ。孫悟空がかめはめ波を打つ前の「か~め~は~め~」とためる感じ(笑)最初からトップテンションだと、曲が一本調子になり聞く方も疲れてしまうが、この抑えたAメロの歌い方が上達して、曲中に大きなうねりを作る。1曲目の「青い春」など、意識的に丁寧にその強弱をつけ、思わず体もうねりに飲み込まれる。

その先、さらに好きなのが「合鍵」だ。パワーをためながら、全編を抑えてきれいに歌う。これが効果的なんだよなあ。今夜は歌わなかったけど。

<セットリスト>
1)青い春
2)Journey
3)夏が来る前に
4)黒い影
5)村田直樹と申します
6)ココロジェリーフィッシュ
7)しあわせのうた
8)巡る記憶

しかし、なんといっても今夜ぶっ飛んだのは新曲「村田直樹と申します」。だ、だれ、村田直樹?なんか可笑しくて、歌聞きながら吹き出しそうになるのを、ぐっとこらえる。

架空の人物だが、1番で幼少期を振り返り、2番では晩年期を思いつつ、ああ、自分は自分以外のナニモノでもない自分なのだと納得する主人公。その人物を暖かく見守るヒグチアイの視点と同調し、思わず村田直樹に共感してしまう。

この曲の面白いところは、聞く側が勝手に自分の知る誰かを当てはめて聞いてしまうところ。だから毎回ライブごとに歌詞を変えたり、青年期のメロを付け足したり、色々遊べる。今後のバリエーションに期待だな。

例えば♪僕はしがないバンド野郎、ライブハウスでバイト中、村田直樹と申します、熱い音楽届けたい、歌手のわがまま応相談、夜更かし録音つきあって、〆は明け方豚骨ラーメン♪とか(笑)歌えば、勝手に誰か想像していとおしくなるでしょうW

この日、もうひとつ嬉しかったのは「私にものれる曲あるんです」といって歌った「シアワセノウタ」。懐かしい!結構好きだったんだよね、この曲。ただ、いま聞くとちょっと物足りないところも。シンプル過ぎる。最近のヒグチアイが作る曲は、あの頃より複雑で計算されている。成長してるんだなあ。


巡る記憶の後、アンコールの手拍子に、予告通りヒグ吉(2人の今宵だけのユニット?)が登場して連弾だ、と思いきや……なんと、あの人が登場して皆を驚かした!そうエンディングアクト(e.a.)といえば、木下直子だ(爆)

前に小林未郁に半強制的に命令?されて、お客さんで来ていた木下直子が1曲最後に歌うというアクシデントがあり、爆笑したものだった。今回はそれを知る吉村かおりぃらが唐突に依頼。快く?最後に登場して「夢の島」を歌ったのでした。相変わらず力強く、そしてこのアップテンポな夏の曲を楽しげに歌い上げる。素晴らしいアーティストだよね。

先週土曜日、木下直子がゲストで呼ばれていたflowersというイベントに行けなかっただけに、このハプニングは大歓迎。e.a.という訳分からない出番を、今や彼女が確立しつつあるな。まあ共通のお客さんが沢山いることが分かっている今夜のブッキングならでは。o.a.の斉藤麻里もそうだが、登場することでお客さんが喜ぶのだから、誰も文句はない。顔ですね。誰か知らないアーティストにシークレットo.a.やハプニングe.a.は勤まりませんから。


本当の最後にヒグ吉が登場。いつものキーボードを2人で使って連弾だ。吉村かおりの「あなたの中で目が覚める」とヒグチアイの「小さな願い」を相互に弾き、お互いが作った相手の曲のAメロを歌い、2曲が入り乱れるという高等遊技。さすがの2人だ。

サビでは、それぞれが同時に自分の曲を歌い、さらにヒグチアイが音譜ルーララー音譜、吉村かおりが音譜らりらりらっぱ音譜とエンディングにかけて同時にジングル。これが、違和感ない。同じキーの曲で揃えた点だけでなく、2人のリズム感や相手の声に即応できる耳の良さと対応力の高さを示したのではないか。

2人が実は今回までそんなに打ち解けた関係でなかったというのも、ちょっと面白い。てっきり、とうの昔からずっと仲良くしているのかと思ってたから。まあ、2人とも人見知りなんだよな(笑)