
今夜は、渋谷Oグループ最大の箱、O-EASTで開かれたサルーキ=のワンマンライブ、題して「ROAD TO 武道館二回戦~1000人のステップ!~」に参戦したよ。
このライブは、かなり前から楽しみにしていたんだ。彼らの熱く真っ直ぐなハートと、「音楽を通して世の中にもっと愛を!」というテーマ、そしてボーカルCHIYOのカリスマ性と歌唱力、古典的ともいえる王道ロックンロール

接してみるとよく分かる。計算づくの扇動やアジテーションはしない。それなのに、その音楽で、そのボーカルで、そしてそのスピリッツで、心から観客を興奮させる天性の何かを持っている。今夜もその何かは間違いなく、しかも彼らの音楽活動の中でも最大級に爆発して、大観衆をぐいぐいと引き込んだ。
一昨年11月、渋谷O-Westで「RoadTo武道館500人のステップ」で500人動員した実績はある。今回は1000人というさらに高い動員目標を自ら設定。昨年1月から始動し、チケット付きDVDなどを携えて北海道から九州まで全国ツアーを慣行、渋谷を始め各地で路上ライブを精力的にこなし、年末にかけては連日のライブで新たなファンを一人、また一人と獲得してきた。前売りだけで500枚以上を売り切ったという。
そして今夜、1300人のキャパを誇る渋谷O-Westでのワンマン当日を迎えた。少なくとも300人は入らないとあまりに寂しいこのライブハウスで、開演15分前にはすでに500人を超す客でかなりの混み具合。その後も続々と客が来場、開演直前に着いたお客さんは前方へ移動できなかったいう。ライブ後半には、手拍子するスペースも足りないほどぎゅうぎゅうの混みあい。最終的には1000人にかなり近づいたのでは?集客面では成功だろう。
何より圧巻だったのはそのパフォーマンス。終わった時にどれだけお客さんが満足しているかだが、みんな最後には心から開放され、陶酔していたようにみえた。皆が楽しんだことは間違いない。
18:30 サブステージの幕が開き、オープニングアクトの神山みさが、ギター弾き語りでまず歌ったのが人生賛歌「レース」だ。自分の生きる道は自分だけのもの、その人生レースを自分の歩幅で全力で駆け抜けよう!と歌い上げたその歌詞は、まさに一段一段より高いハードルを掲げて進んできたサルーキ=のためのよう。そして、サルーキ=と同様に武道館ライブという目標を掲げる神山みさが自身を鼓舞する一曲でもある。
サルーキ=と神山みさは、たびたびツアーに同行し、共に苦労し、悲喜を分かってきた同志。自らのライブでも、この日のライブの宣伝告知し、ワンマンのもろもろの準備にも関わっていただけに、リハーサルを終えた時点でもう感極まり涙したという。「レース」を歌いながらもかなりこみ上げていたようで、珍しく涙をみせながら、ギターを奏でるピックにも力のこもったステージだった。
続いて死ぬ間際に決して後悔せぬよう、一日を一生と思って全力で生きようと、白血病に倒れた知人を想い作った「一日一生」。最後に彼女自身の一生を通じたテーマであり、彼女の分身ともいえる代表曲「カタチのないもの」を高らかに熱唱。すでにこの時点でかなり感動してしまった。
そしていよいよサルーキ=の登場。CHIYOが、ロッカーしか着ないだろう体にぴったりフィットしたキラキラのつなぎ衣装(笑)で、やや高い地声で、ビートにのって切々と訴えるように歌っていく。広いステージの端から端まで、大きく動き回り、お客さんに歌いかけ、全体を盛り上げていくエンターテイニングなパフォーマンス。チャーミングで爆発的な力を持つボーカルで、まるでストーンズのよう。
70年代の英米ロッカーがよく着ていたような衣装で登場したCHIYOの相棒ギタリスト、森モーリー剛はマッシュルームカット。ビートルズか(笑)ドラムのすーもキラキラ衣装。キーボードに「にしだ”ミーコ”みさこ」、ベースに後述する市川氏を加えてスタート。最初から最後まで、スタンディングの客席は揺れ続け、手拍子や手を挙げて送る声援は途切れることなかった。
彼らの音楽は、まさにロックンロールの黄金期、70年代前後のテーストを正統に受け継いだようなビート&メロディアスなボーカルが特長。がつがつと魂から声を発していくようなCHIYOの姿は、ミック・ジャガーか忌野清志郎のようだ。決してコピーバンドのようなチープさはなく、ナチュラルにロックの巨匠らの姿を彷彿とさせる。膨大な数のライブやストリートをこなす中で磨きぬかれた本物の才能だと思う。
彼らのロックンロールへの高い評価は、この日のサルーキ=のサポートが物語っている。中盤には、元ZIGGYのギタリストであり、「Like a Rolling Stone」というソロアルバムまで出しているあの松尾宗仁が参戦。元The Street Slidersのベーシスト、市川ジェームス洋二は最初から最後までこの日のライブを支え続けた。CHIYOのファンキーで、扇情的で、セクシーなステージを、分厚く男前で骨太なリズムを刻み、盛り立てた。
わざわざ彼らが駆けつけ演奏するのは、サルーキ=を本物と認めている証左だ。パーカッションにSOONERSの鈴木ガジャG武、ドラムのセンチグラム「丹マサヒロ」、コーラスに綿引京子、サックスに武田和大などの大物も入れ替わり立ち代り参加。最大の盛り上がりをみせたエンディング前には、ホーンセクション3人やコーラス2人が加わり最大12人構成。分厚い音の波に体ごともっていかれ、お客さんはみな両手を挙げて、ステップを踏み、歌っていた。
この日のための仕掛けも盛り沢山。猿ダンサー3人や、ピエロ、金衣装の男、謎の仮面レスラー、タイガーマスクにお札の雨も登場、ダイブでCHIYOの体がO-EASTの中を右へ左へと運ばれ、1000人近い観客も熱狂状態。最後はゴスペルのように(それは多分に彼らの音楽の核でもあるのだが)、ロックンロールによる心の開放と天への祈り、そして愛に満ちた祝祭のような空間も生まれた。
大きなアンコールを受け、出演者全員で「ハレルヤ」。神山みさや猿ダンサー、途中で1曲演奏したサルーキーのオリジナルベーシストゆうちゃんに、先日の四谷天窓コンフォートの「カホンナイト」企画を大成功させたドラマーKAZも参加。ホーンセクションなども勢揃いの饗宴に客席のボルテージも最高潮。
最後にオリジナル演奏者の5人が残ったところで、CHIYOの妹や小豆島のファンらから花束贈呈も。そして、ラストソングは「楽園」。


今回の1000人の集客で凄いのは、彼らはまだ全国的に、そしてメディア的には無名に近いということ。それだけに、集めたお客さんの一人ひとりが、彼ら自身が路上やツアーで体験を共有し支援を得た存在なのだ。その積み重ねの上に今回の動員がある。
注目アーティストとして様々な媒体に紹介され、全国流通にのってレコード店や各地のラジオなどがハードプッシュし、商業主義に乗っかれば、あっという間に客は集まる。でも、名前と顔が一致しないお客さんが増えていくことになる。それはそれでOKだとは思うが、名前や顔を知っている人が1千人集まることは重い。その重みを背負って、彼らは次の日本のロックシーンを牽引できる存在になると思う。
ライブ前につぶやいたけど、毛皮のマリーズや神聖かまってちゃん、THE BAWDIES、鴉、小林太郎などにわかに注目を集めているバンドは多いけど、サルーキ=も彼らに負けていないのではないか。いや、ある意味で最も正統にロックンロールの魂を継承しているの彼らではないか。これからの彼らの活躍に大いに期待している。