何組か出演するブッキングのライブでは、出演者全てを個人的に楽しめるかというと必ずしもそうはいかない。それでも1組だけでもOutstandingな演奏聞かせてくれれば、かなり幸せになれるものだ。それが今夜は3組もいたからだ。タイトルにあげたMami、鈴木ふき子、NOIRだ。特に、いや、「特に」はなく、皆がみな高い水準で酔わされたなあ。
面白かったのは、椅子に座っていた自分の腰の角度。Mamiではリラックスして背もたれに体重を預け大笑いし、鈴木ふき子では思わず居ずまいを正し背筋をピンと伸ばして聞き入り、NOIRでは赤ワイン

この3組で聞いたことがあったのはMamiだけ。後に続くお姉さん方と違う、ドジな末っ子キャラが愛らしい。いや、そういえば彼女の年齢知らないけど、鈴木ふき子(24)、NOIRの雪(26)とそう違わないと思う。なのだがキャラが見事に三女で、続く2人が次女と長女タイプ。そう思い至り、ほくそ笑んでいる自分が電車内にいる。他人から見たら気持ち悪いかもー

で、末っ子と書くとMamiの歌が明るく元気なだけに思われかねないが、そればかりではない(世の末っ子がうなずくのが見える、笑)実はかなりの実力派シンガーなのだ。
その歌唱力はgee-geやnomadに出ている女性アーティストたちと比べても、かなり上の方だと思う。さらにメジャーデビュークラスの例えば和紗、森恵、宝美ら(みな泣けるよ、オススメ

と、ボケたのも、彼女がまさにとぼけたタイプなのだ。ステージングなどトータルでは二文字の3人には敵わないかもしれないが、愛嬌は負けてない(笑)また、ドジはお母さん似?(笑)
歌った曲名がよく分からないが
1)歌日和(


2)青空音楽
3)月明かり(ほろ酔いの歌だね)
4)2度目の初恋
5)to U (ミスチルのカバー)
6)少しだけ
今夜はカバーが良かったなあ。前回聞いたミルキーウェイに比べ、感情の抑制ぶりが効果的。自分の歌にしていて、心に染みた。逆に最後の曲では、やや技巧を気にしすぎ感も。もっと思いをぶつけて欲しかった。難しいね。
さて、続いて登場した鈴木ふき子。すらっと背が高く、マイラバのAkko似の美形で長い髪がさらさら。ジーンズに白いシャツをざくっと着て、さらにヒールの高いサンダル。ビジュアルはケチ付ける余地なく格好良いのだが、それ以上に引き込まれる歌唱力とハスキーボイスに一瞬で虜になった。
セットリスト
1)静かな雨の降る頃
2)秘密
3)美しい人
4)いつか、きっと
5)そこから先は
考え抜かれ、徹底的に練習して磨き抜いたかのようなステージ。それぞれの曲の最初の一声の入り方から、全ての節回しの抑揚、裏声地声の使い分け、一つ一つの単語の発音や滑舌……どれも完成度を高めてきた。さらに、澱みないMCはまるでラジオのパーソナリティーのよう。
ステージ上ではとても存在感がある。歌い始めた途端に、お客さんがみなぐいっと引き込まれていくのが、端っこから見ていてよく分かった。
ピアノの伴奏にのせて丁寧に歌う一つ一つの楽曲の、歌詞が心に染み込み、とても説得力がある。歌詞も魅力的。歌の表現力が高いのだ。
これ程のアーティストとは知らなかった。鈴ん小屋のスケジュールで写真を何度か見たことがあったが、食わず嫌いしていた。いかんなあと反省。また、何度でも聞きたい。
敢えて言えば、スキがないのが弱点かな(笑)聞く側が入り込む余地がないというか、うまく言えないんだけど。この日は3人の対比もあり、生真面目な次女、そんな印象が強く残った。
さあそしてトリで登場したのがNOIR。
セットリスト
1)枯葉 (シャンソンの名曲だね)
2)きよしこの夜 (1カ月早いですが、鈴ん小屋は今夜もうクリスマスだぜバージョン)
3)ぜいたく
4)朝日屋 (正確なタイトル分かりませんが通じるよね。

5) (洋楽カバー)
6)新曲 (

書き始めて、ちゃんと曲名聞いてなかったと知る。でも特徴ある曲ばかりで、一度聞いたら忘れられないフレーズたち(曲名の後ご参照)。
いきなりフランス語でシャンソンの名曲(後半は英語)。これが無茶苦茶素晴らしい。柔らかくハスキーな声


たまらず、まだ1曲目の前半というのに赤ワイン

多分、その時、この会場にいたワイン好きなら、みながそう思ったのではないか。彼女の歌は、深くビロードのごとき緋色で、長い年月をかけて奥深い渋みと味わいを醸したボルドーレッドかのようなのだ。
シャンソンからブルース、ジャズまで、その歌心を、彼女と唯一の楽器、エレキギターを伴奏する男前の2人は知ってる。エレキといっても、音は最小限に抑えに抑え、コードをジャカジャカ弾くようなことは皆無。つま弾かれる珠玉の一音、一音が曲に与える彩りを熟知した演奏。同様にツボを押さえたボーカル。
そんな抑えた演奏、ドラムやベースなどのリズム隊不在のなかで、ギターがベースラインを強調してるわけでもないのに、曲によっては自然発生的に手拍子が広がる。雪さんの歌心、拍取りに聴き手の体がシンクロするのだ。
NOIRに、はまるかもしれない。そんな危険な予感さえしてくる。
鈴木ふき子にしろ、NOIRにしろ、いつもこんな演奏してる訳ではないだろう。この日の鈴ん小屋には、何かが降りてきていたのかもしれない。まさに一期一会。そこに居合わせられたこと、なんという幸せか。
来月に入れば、みなクリスマスソングを歌い始めるだろう。だが、今シーズン聞いた個人的なベストクリスマスソングは、後で振り返ると、早くもこの日、雪さんが歌った「きよしこの夜」になるのではないかとも思う。あの質感は、音楽偏遊で聞いているアーティスト達には出せない気がするのだ。
でもその中で、匹敵しうるクリスマスソングを聞ける可能性があるとすれば、12月にあるブルースアレーの玉城ちはるか、キャンドルライブ「ともしび」の蘭華、クリスマス礼拝の教会で歌う神山みさか。場も重要要素。
さあ、間もなく12月だ。一年の締め括り、楽しんでいきましょう。