10/5/8 あべさとえ 大黒美和子 @江古田マーキー | 音楽偏遊

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最近見たライブや気になるアーティスト、気に入った店や場所など偏った嗜好で紹介してまいります。アーティストさんへの言及などは、あくまで私個人の見解であり、特に中傷や攻撃を意図したものではないこと、ご了解下さい。

ヨッシーとなみちゃんに会いに江古田マーキーへ。実はあべさとえさんと大黒美和子さんのライブですが、出演時間が一番長かったが、キーボードのヨッシー。2人の演奏掛け持ちだから(笑)。美和子ちゃんのダブルキーボードという構成の一角を担い、さとえちゃんでは、バックを任されたスイプラの一員。ご苦労様でした。

ヨッシーのキーボードは、繊細さと力強さの両方で高水準で、聞いていて安心。しかも性格も優しい。他に渋谷めぐみや潮崎ひろの、ASAMIなどなど彼にサポートを頼む女性アーティストが多いのも納得です。

さて今宵のツーマン、先攻はあべさとえちゃん。前から彼女を形容する良い言葉ないかなあ、と考えていたのですが、今日発見しました。そう、あべさとえってオカリナのようなアーティストなのです。

1)この町のどこかで(詩の朗読) pf野上
2)ひまわり (+pf野上)
3)幸せになれ (ピアノ弾き語り)
4)ホタル (+オカリナなみ)
5)手のひらの空 (+フルートなみ)
6)ひよこのうた(+fl,pfヨッシー+ジャンベセクシィ+baきど)
7)ラブオールビーンズ(同)
8)旅立ちのプラットホーム

4)でフルーティストのなみちゃんが、演奏したオカリナが素晴らしく心に響く。派手ではないが、優しく温かく懐かしい音色。あぁ、これってさとえちゃんだなあと。どこか無邪気で子どものような感じも合っているかな。

でも、それだけでない意外性が、彼女の魅力。定番の7)では、お客さんを歌に参加させて盛り上げる。二足のサンダルでは、温泉などの意表を突いた2人の掛け合いや、曲に様々な色を付けていく小技の数々。実は彼女は音楽に関しては攻めていると思う。そこが面白さにもつながっている。

今夜の演奏も、朗読に始まりサポートの構成を様々に変え、お客さんに楽しんでもらおうという気持ちが伝わる内容。はい、楽しめました。


後攻で登場した大黒美和子。小さいけど、長い黒髪に大きな瞳で雰囲気のある歌手です。

僕が彼女を初めて見たのは1年以上前だろうか。デビュー10年目にして、インディーズのPOPシンガーとして再スタートをきったばかりの頃かな。その時のライブでは「月の暈」というシングルしかなかったが、今回はようやく彼女が昨年11月に発売したミニアルバム「月と猫と私」をゲット。調べてみたら、彼女のライブを聞いたのは今回が4回目。これまでの3回はミニアルバム発売前だったので、およそ半年ぶりです。

1)悲しい星のうた
2)To Live Without you
3)僕には…
4)infection(鬼束ちひろカバー)
5)君に歌う
6)透明な私
en. ハナミズキ w/あべさとえ

「明るく盛り上ったあべさとえちゃんの後に、私は暗いですが」と始めたステージだが、そんなに暗さは無い。前に比べて、悲壮感のようなものが無くなったように思う。ツインキーボードで、音色も華やかだったし。相変わらずドラマチックに曲を盛り上げる歌唱力はさすがで、悲壮な暗さではなく、奥深い月夜の世界がひしひしと伝わってくる。

鬼束ちひろのカバーを歌ったが、この曲はまさに彼女にぴったり。特に「爆破して砕け散った心の破片がキラキラ」という歌詞がなんとなく彼女のいう「暗さ」と彼女のもつ「強さ」を見事に表現しているようで、今日いちばん感動した。彼女も相当歌世界に入っていた。思いっきり歌いたかったが、自分の持ち歌にこういうのが無かったのでカバーしたと説明。是非、こういう全身を投げ出して歌い込めるようなオリジナル曲をもっと作って歌って欲しいね。そういう意味では、3)もかなりドラマチックでいい歌です。

順番が逆になりますが、2)の歌詞は、泣いてばかりいないで強く生きていく女の子の心を表現していた。MCでも多くの人にいい言葉をかけてもらって、ずいぶん前向きになってきました、と話していた。

そろりそろりとここまで来た大黒美和子も、そろそろ夢や太陽に向かって、希望を持って、ダンスするような曲が作れるのではないだろうか。内省的から外交的へ。そんな曲を、見事な歌唱力で彼女が歌い出したら、ぐいぐいと来そうな感じがするよ。ガンバレ音譜