10/3/6 加藤ミリヤ 清水翔太 @TGC | 音楽偏遊

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最近見たライブや気になるアーティスト、気に入った店や場所など偏った嗜好で紹介してまいります。アーティストさんへの言及などは、あくまで私個人の見解であり、特に中傷や攻撃を意図したものではないこと、ご了解下さい。

10回目の記念すべき東京ガールズコレクション(TGC)。約2万5000人のほとんどがおしゃれ好きなガールズという大観衆。その波及効果を含む影響力を考えると、日本のマーケティング史上でも、これほどの成功例は数少ないのではないか。

しかし、最初に「リアルクローズ」のファッションショーというアイデアを、ゼイヴェルを起業した大浜さんが東京のアパレルメーカーなどに持ち込んだ時、ほぼ全ての企業が断ったそうだ。それがわずか7、8年前のこと。出版媒体の違うcamcamやJJなどのモデルを一同に集める考えも、当時の出版社にすればNG。隔世の感ありだね。

結局、東京で相手にされず、まず神戸で第一歩を踏み出した黎明期。ファッション誌愛読者以外には無名だったエビちゃん、モエちゃん、優ちゃん達と共に神戸から東京へ舞台を移し、一歩ずつTGCの名前をブランド化した勃興期。

携帯で、その場でモデルの着ている服を買えるビックリマークなんて、当時のほとんど誰もが理解してなかった。携帯電話が21世紀の中心的なメディアになると、まだポケベル時代の名残がある頃から確信していた大浜さんの先見の明や素晴らしい。まずF1層の女の子を携帯に集め媒体価値を作り出すことが第一歩と、「占い館」などでキャッチーに味付けしたガールズウォーカーを立ち上げたロードマップ第一章も、後付けかもしれないが、最適解だったのではないか。

いまや、企業側が次々とTGCに、わが社も我が社も、と擦り寄ってくるから交通整理が大変な状態。駆け出しモデルたちもまた、TGCに出たくて自薦他薦で出版社が後押しして売り込んでいるとか。

数年前、社名をゼイヴェルからブランディングに変えた事にも、TGCというメディアを意図的に創出して、いまや大マーケティング集団となりつつある同社の深謀遠慮を感じざるをえない。既に大物となったアーティストたちに、「女の子の祭典、TGCに出させてもらえて最高!!」と言わせるまでになったイベントの認知度は、電通も歯噛みするすごさだ。

今回出演した加藤ミリヤや2度目?の出演となった倖田來未も、一様にそんなコメントを残している。それだけに彼女らのステージにも熱が入っていた。(やっと繋がった)。

といっても今回は倖田來未の前で退散せざるを得なかったので、本ブログの主旨であるライブ評は加藤ミリヤ&清水翔太についてだけ、軽く触れたい。

2人はソニーミュージックが中高生の頃に見出だして、手塩にかけて純粋培養してきたホープたちだ。加藤ミリヤが現役女子高生だった4、5年前から「ポスト浜崎あゆみ」としてメディアの注目を集めた裏には、SMEのavexへの対抗意識があったことだろう。

今回、倖田來未もTGCに出ているが、この辺のブランディングのバランス感覚はさすが。

さて、しかし横浜アリーナは巨大だ。多分ステージから一番遠い客席まで300m位あるのではないか?そんな舞台に、このブログで紹介してるインディーズたちが突然連れてこられたら、足がすくむことだろう。仮に奮い立ったとしても、あの巨大空間を自分色に染めるには相当知恵を絞る必要があるだろう。

そこはさすがメジャーなアーティストだ。加藤ミリヤもバックダンサー4人を従えて、マシンガン抱えてミリタリールックで登場。鳴り響くマシンガンの連射音で会場中の目をしっかり集め、アップテンポな曲で一気に会場のテンションを高めた。さらに、会場中央の巨大ランウェーを十分に活用して、軍隊の行進のように進み出て、ヒップホップ風のダンスでも若い女の子達を沸かせる。

その後も、曲ごとに少しずつ武装を解いて、その都度違うテーストの衣装に早変わり。そしてヒットメドレー。ミリヤ信奉者も生まれる若い女性のカリスマが、これだけのサービスしてくれれば、TGCの客層はそりゃあ大喜びです。

じゃあ、何を歌ったかって?はい、曲は何処かで聞いたことあるものばかりなのだけど、加藤ミリヤは全く対象外だったので曲名はさっぱり。女の子たちはイントロが流れる度にキャー、この曲好きーとか沸いていましたが。ただ全5曲?歌ったうち、最後は純白の上下に帽子姿で新シングル「ByeBye」を熱唱。なかなかいい曲でした。

ステージはそこで暗転。このまま休憩かと思われたその瞬間、告知にはなかったが(でも案の定という感じだったが)、ステージが一気にライトアップして清水翔太が登場。ちょっとしたサプライズに客席は興奮状態。うまい演出が憎いね。

ステージ後ろの巨大スクリーンに桜が映し出されて、舞い散る花びらの元で彼が「桜」をとうとうと歌い上げると客席から大拍手。ピンでも人気高いんだね。

しかし、当然それだけで終わる訳がない。この2人が順に出てきたということは…、とお客さんの期待を十分に膨らませたところで、「では大切なあの人をここに呼びたいと思います、加藤ミリヤビックリマーク」で会場は大興奮。その勢いで「Forever Love」へ。

2人が十字状のランウェーに進み出て、左右に張り出し少し高くなっているランウェーの小ステージ部分に分かれ、サビの一番盛り上がるところで歌の掛け合い。

ミリヤはガンガンいくぞーとばかりに、拳を突き上げその足元のアリーナの立ち見客もノリノリ。対面の清水翔太が時折、ミリヤの方を向きながら歌っていたけど、ミリヤは完全に客席側を向いてアジテーターに。

この瞬間が、この日一番彼女が彼女らしくイキイキとしていたように見えた。ダンサーと合わせて踊りながら歌うのは、彼女には窮屈なのでは。安室じゃないんだから。

見事なステージを見れて、この日のお客さんもラッキーと思ったことだろう。香里奈、山田優、長谷川潤、藤井リナ、佐々木希、マリエ、梨花、西山茉希、徳澤直子、渡辺知夏子を始めとする当世のトップモデル達を一同に見れただけでなく、司会のはんにゃもズクダンまで披露し、ベッキ―、溝端淳平、はるな愛、木下優樹菜、吉川ひなの、スザンヌ、益若つばさ、ほしのえり、安田美沙子、優木まおみ、井上真央、神戸蘭子らまで続々と登場。山のような試供品やお土産をもらって、このチケット代なら絶対安いビックリマークとの感想持ったことだろう。

主催者側は当然、数多くの協賛企業からの収入がある。企業も出展する価値が十分見込める。だから、トヨタやパナソニック、ユニクロ(今年はRight-on)、HISなどから京都市やポストイット(!)まで金を出して参加している。お客さんも含めた見事なWIN-WINビジネスといえよう。

勿論、大衆化したことで、元々のTGCのコアファンであったトレンドリーダーたちのイベント離れは必然だ。洋服の青山や(例えIMALUが登場しようとも)、京都市のきものに興味はない、となるだろう。でもそこはブランディング、しっかり考えて手を打っている。選ばれた者には、選ばれた場所を。益々、今後の展開が楽しみだ