光ネットの普及が映像などの大容量データの個人への売買を後押ししたことで、コンテンツは今、巨大な産業に育ちつつある。映画やテレビ番組、ライブ映像などの二次、三次利用が活発になり、制作費を回収した上で、さらに利益を拡大する手段が多様化したためだ。
エンタメビジネス先進国の米国ではすでに4兆円規模(だったか?)の産業になっているが、日本はまだ数千億円規模。世界でクールジャパンと注目され、アニメや「かわいい」の外国人ファン層が広がっている割には、コンテンツ収益が伸びていない。
その大きな要因として、番組がコンテンツ輸出の少なさに焦点を当てたところが秀逸だった。
ハリウッドなどのビジネスは、随分昔から企画段階で世界でDVD販売や関連グッズ、ロゴやキャラクターなどのライセンス販売までをトータルして、どれだけの収益をあげられるか綿密な計画書提出が求められる。4兆円(?)の2割近くが輸出からの売り上げだ。
翻って我が日本のアニメや映画、テレビ番組などはその制作段階で海外を強く意識していない。精々が番組の販売くらいだ。だから邦画が海外の映画館に買ってもらえただけでニュースになる。実際、世界のコンテンツ展示会などに出展して商談している映画会社やテレビ局は少ない。日本のコンテンツ売り上げに占める海外販売額の比率は僅か数%だ。
そんな日本からアイドル創出というフォーマットを、秋元康が海外市場へ売り込みをかける模様をNHKが密着取材していた。
そう、「AKB48」モデルの売り込みだ。
常設ライブ小屋を設け、いつでも会えること、チーム制で予備軍もあり下剋上の一部始終を見せること、ファンには育成ゲーム的な一体感を多様な演出で体感させること…等々、AKB48と同様のアイドルユニットを産み出すあらゆるノウハウを文書化し、知的所有権や著作権を法的にガードし、売り込んでいく。
国際コンテンツ展示会では、プレゼンや商談だけでなく、秋元が私費で連れてきたAKB48の1チームがステージも披露。後日、いくつかの国のテレビやエンタメ企業から引き合いがあったという。
成否は、今後の展開を待つとしても、その意気込みや良しだ。リーマンショック以降の世界的不況の中で、今回は金融バブルもさほど無く、傷も浅いはずの日本の景気が一向にさえない最大の要因は、新産業創出という必然に尻込みしている企業や国の責任が大きい。
特にリストラや費用削減に明け暮れて、たくさんの犠牲のうえに「利益は出ている」と胸を張っている企業トップの姿がうら寂しい。
後ろ向きな施策も、成長戦略実現のためなら納得もいくが、縮小均衡しかないのでは日本の未来のために話にならない。こうした経営者らが「民主党がフラフラしてるからだ」と国の怠慢をあげつらうのは、自分達の無策から目を反らすためだ。本音で言ってるなら、他力本願の無能経営者と自ら公言しているようなものである。
国の体たらくは、それはそれで批判が必要だろう。しかし、民間は民間で成長事業育成というやるべき事に全知全能を傾けるべしだ。
麻生バカ殿のコンテンツ産業育成の掛け声だけは良かったと思う。ただ、アニメ好きをアピールすれば若者票が集まるだろうという薄っぺらな計算が見え見えで、国家をあげて取り組ませるという熱気も、国際展望も、具体的戦略も無さすぎた。
一方、中国や韓国、タイなどは国家戦略としてコンテンツ産業育成、すなわち輸出支援の制度化などをすでに実行している。あまりにも自民党議員や官僚の頭が固くて、日本はおおいに乗り遅れてしまった。
外務省が最近、制服ファッションやゴスロリの「神」らをCawaii!大使に任命し、海外でアピールの場を設けたりしてるが、物足りない。かつての通産省の「官僚たちの夏」のような産業を自分たちが育てるんだ、という熱さがない。ポーズの域を出ないんだよな、外務省は。
おおいに脱線して、このブログの趣旨を外れてしまったが、つまり言いたいのは一点。日本のコンテンツ産業従事者は世界へ大きな野望を持って、という事。日本には、売り込むに値するコンテンツが沢山あるのだから。
海外恐れるべからず。国など当てにせず、民の力で切り拓いて。国は前列がないからとか言って、足を引っ張ることは止めて。逆に応援すべしだ。JETROも海外のコンテンツ市場調査だけでなく、もっと国内の環境整備に口を出して、外に連れ出そう。
縦割りでなく、全員野球をしなければ、コンテンツ市場のワールドカップ勝ち上がれないよ
