11月15日 谷口深雪 柊奈緒 大黒美和子 @天窓comfort | 音楽偏遊

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最近見たライブや気になるアーティスト、気に入った店や場所など偏った嗜好で紹介してまいります。アーティストさんへの言及などは、あくまで私個人の見解であり、特に中傷や攻撃を意図したものではないこと、ご了解下さい。

ちょっと気になっていた女性アーティスト3人がスリーマンやるというので出掛けてきました四谷天窓コンフォート。

トップは大黒美和子。

この日は開演時から満席で立ち見も。大黒美和子の集客力はさすが。見守り続けてくれる古いファンだけでなく、ポップ歌手としての美和子ファンも増えてきた様子。良きかな。

「一人夜」「夜空」「悲しい星のうた」などの夜空シリーズでスタートし、最後は「あたしにも比較的明るい曲あるんです」という「初恋」。計7曲。

前よりさらに素な感じ。肩に力入れず、歌える幸せ噛みしめるように歌っていた。

素でやるのは良い面もあるが、少し物足りなさも。今は壊して再構築している段階なのかな。昔はプロ歌手として色々作り込んでいたと思う。過剰な程の客へのサービスやエンターテイナーとしての演出がかった仕草や表情。それはそれで演歌に不可欠な素晴らしいもの。プロは斯くあるべしだ。

ただ本人にフィットしなくなった時につらい。大黒美和子が素の自分を大事にした選択は理解できる。これからは新しいポップ歌手として、自分にあった装飾を身に付けていけばいいんじゃないか。まず素を取り戻して磨くことが大事だろう。旅や芸術鑑賞から飲み会や恋愛まで、感性を高くして良い曲を作って欲しい。歌い手としての能力はすでに高いのだから、優れた曲さえ持てれば…


2番手は柊奈緒。

今時ですが「気立てのいい娘」という表現がピッタリ。写真映り良くないよね。チラシなどの写真に彼女の良さが滲み出てない。控え目な優しい笑顔がとても魅力的なのに。

でもライブ活動している事だけからも分かるけど芯がある。しなやかに強いタイプかな。

1(忘れた。塔のお姫様の歌)
2氷点下の森
3ピエロ
4ゴースト
5雪に咲いた日
6闇呼ぶ魚
7ファンタジア
8アクアマリン

柊奈緒を例えるなら、若いブルゴーニュのワインか。まだ固く閉じていて、ブドウの甘みと酸味などのバランスがよくない。でもボジョレー・ヌーボーのように今を逃すと、劣化するような薄っぺらい葡萄酒ではない。うまく熟成すれば、素晴らしい酒に変わりそうなポテンシャルを感じる。

アクアマリンやファンタジアなどの曲は、CD化の時点ではまだ若い感じだったが、ライブではぐっと熟度が増して、心に迫ってきた。CDではゴーストやアンサーは良かったけど、全般に詩や曲想が一段と成熟したらさらに深みが増しそうだ。

ところで、この「うまく熟成させる」が難しい。アーティストの場合、商業主義にのせると早飲みされてしまう。乗らないと、食べていけず、生活に追われる。また東京の生活は落とし穴も多く、上京して消えていったアーティストも数知れずだ。

そう考えると、彼女が山形に移り住んだのは絶好のタイミングだったかもしれない。大自然も、厳しい冬や豪雪も、素朴な人情も、全てが音楽を奏でてる。無機的ではない。彼女のように心優しい音楽家を熟成させるには、適した環境ではないだろうか。天の配剤と考えれば、希望も膨らむ。

女性デュオ「てまり」も山形だし、地元では2組が一緒のステージに立つ機会も増えるだろうな。


さて、トリは谷口深雪。

最近ライブ多いよね。表現する事にとても意欲的になっているようだ。3月から毎月一曲の新曲を発表することを課しているとも。

毎月新曲は峰香代子や廻田彩夏、epocholなどがやっていた。インディーズにはいい習慣付けだと思う。曲を書き続けることで日々の生活が音楽につながる。ライブのレパートリーが増えるのは言うまでもない。

1メロディー
2Laugh it off
3?
4あなたの森
5ミラー
6はじまりの色
7彼方
8君が笑えば(アンコール)
今夜の個人的ベスト曲が、「はじまりの色」。この曲前のMCで自分がアーティスト活動始めた頃を紹介してくれた。

ちょうど8年前の11月、幼稚園の先生時代。今の自分に飽き足らず、やってきたピアノと歌で何かできるのではと心斎橋へ。結局びびって歌えなかったが、「アンタには無理だから帰っておいで」というオカンの言葉に発奮。初路上を路地横に隠れて敢行したこと。聴いてくれた人たちの声に押され、3、4カ月かけメインストリートにたどり着いた事…

それから8年。「続けたモノ勝ち」と言った彼女に本日のMC大賞贈ります(笑)

その気合いで今後も頑張って欲しい。ただ、あまり大阪のオバチャンにならないように(笑)