いやー、改めて驚いた。日本の弥生時代、2000年以上前に、彼らは現代の日本人よりはるかに立派な邸宅を持ち、別荘ライフを楽しんでるんだよなあ。別荘の談話室みたいなスペースが再現されて目玉展示になってるのだが、いま話題の3つ星フレンチの内装よりずっとデコラティブ

裏庭の庭園を臨むオープンテラス風のドーム状の間。ブドウ棚がひさしのように張りだし、壁面や天井は青、赤、緑の彩色に描かれた庭園、水辺に遊ぶ聖人たちや様々な紋様のフラスコ画に包まれる。
最奥の正面のドームスペースには細かく砕いたタイル絵が鮮やか。その真ん中に切り取られた人がギリギリ通れるかという長方形の空間には階段が暗闇の中へ続き、闇の中から階段をつたって水が室内に設けられた泉へ流れ落ちてくる仕組みだ。
この八畳ほどの間にソファを向かい合わせに置き、テーブルに料理や酒を盛り、日夜の酒宴や茶会を楽しんだという。何を語らっていたのだろう。「暇でしょうがないよ」とか書かれた手紙など見つかってるらしいよ。
これは火山灰や溶岩に覆われ一夜にして滅びたポンペイから発掘された実際あった別荘の姿だ。
紀元前一世記、最大時に欧州全土と中東から北アフリカに至る広大な汎地中海地域を支配したローマ帝国。最近の発掘遺跡などから当時の文明を生活に至るまで紹介しようというこの企画、規模は小さいがなかなか面白い。
特に今回、焦点を当てた2つのテーマの一つ、ポンペイの展示では、ローマ人が人生の生きる意味をオティウム(余暇)に求めていた事を強調していて、興味深い。
「仕事に楽しみを見出だせないなら、人生を楽しむことはできない」などとしたり顔で解くおじさんは現世にも多い。でも人生=仕事という捉え方、絶対ですかね?
まあ大ローマといえど滅びた訳で、ローマ人の生き方を見習うべきとか言うつもりない。ただ、あれだけの文明を二千年以上前に築いた彼らが余暇に人としての存在意義見出だしたというのが共感できるなあ。
学術的にどうこうは知らないので、偉そうなこと言えないが。ただ偉大な芸術もそういう悠久の時の流れを楽しむ心が確立してないと生まれないのかと思う。音楽にしろ絵画や彫刻にしろ。世知辛く日々忙しく生きてる人生から、世紀を超えて何百年、何千年と残る芸術を作り出せるだろうか。
勿論、行政や産業の仕組みなど仕事人間が築き上げ残るもの多いだろう。今回の展示のもう一つのテーマは、まさに巨大帝国を磐石にした皇帝アウグストゥスの業績に焦点を当て、それが現代に通じる治世や都市建設の礎になったこと取り上げてる。
どう生きるか。ローマから二千年たっても答えは簡単に出そうもないな(笑)