まあ、線路の横で度々ガーッと電車が通るし、飲み屋街の真ん中で賑々しい。酔客がいきなりステージに寄り手を伸ばし握手求めてきたり(笑)ひーたんも「まるでETですね。わたしが宇宙人ですが」などと客のあしらいは慣れたもの。
のりの良いブルースの2人組(ギターとサックス)でパンチで見劣りしそうと危惧したが、彼女の歌に逆に足を止める客も多く道端ステージは結構な人だかりに。さすがだね。
定番曲の中に新曲を交える構成。
いつまでも緑の葉を枯らさない
といった歌詞の曲と、「ねぇ」という歌にかける気持ちを込めた新曲が特に良かった。新境地というか、現在の心境を表していて力が特に入るのかもしれない。彼女は、どんどん自分で新しい状況を作っていく。最近では自分の会社作って、自身の音楽活動のバックボーンを強化。メディアなどへの発信力を高めようとしている。2ndから間が空いていたアルバム制作も、いよいよ年明け1月13日に3rd「最初の人」を発売予定だ。
1stアルバムで「私の心嘘だらけ」と内向し、2ndで外の世界へと一歩踏み出す自分を歌い上げてきた。次は外に出てどうするのか、自伝的な楽曲を発表してきた彼女の次の段階に、ファンも注目していた。
答えがなかなか見つからず時間がかかった、と本人は言う。様々な蕩悔や鬱屈、挑戦をしてきてたどり着いた境地の一つの形が「ねぇ」という曲。だとすれば嬉しい。
歌詞聞いていると、音楽家としての悟りのようなものを感じる。「自分には音楽しかない、いや音楽がある」という前向きな純化した想いだ。
社会は雑音だらけで、人間なかなか一筋に生き難い。余計な荷を捨て、さらに捨てて、ピュアになりたい。それは、しがらみの中をスイスイ泳ぐより難しい。
個人レベルでも、雑念や欲望、悩み事などドッサリで「これで生きる」と断言できない。
それだけに音楽と歩むんだ、と歌う覚悟には、崇高な光の放射を見る思いだ。曲中の「ねぇ」が「レイ(光線)」と聞こえたところからの連想だけど。
もちろん、選んだ道が正しいとは限らない。それどころか、何処にも行き着かない怖れさえある。エマーソンの詩「Road Not Taken」を思い出す。それに無関係な人からは理解できないと見下されるかもしれない。幼い頃から抱いていたプライドや誇りもズタズタになる事態も容易に予想がつく。
それでも歌い続ける事こそ自分なのだ、といえるアーティストは応援したい。僕は。