
峰香代子は多分3~4年前に聞いたことがある。あるのだが、何かパッとしない印象だったと記憶してる。ところが今年になってから、ちらほら良い評判を聞くように。それも日を追うごとに増えてる。資本が動き出したってことだろう。彼女の場合はavexがつき、昨年メジャーデビューしたからね。
でもそんな事はどうでもよい。アーティストとして彼女が魅せてくれるか、歌で圧倒してくれるか、それが一番重要だ。で、僕の評価は…彼女はいい。いつの間にか化けていた。
勿論、バックがしっかりすると音の全てがレベルアップする。いい先生のボイトレ受けられるし、アレンジやサポートのミュージシャンもプロになり、ぐっと音の厚みがまし洗練される。ファッションや振り付け、ステージングなども格段良くなる。
それでも素材がイマイチだと金かけてもコケる。ガルネクみたいに。ビジュアルがずば抜けてるか、美人でなくても個性的ならテレビはOKかもしれない。ただ、やはり我々の心をぶち抜く楽曲がないと分厚い現象は作れない。
そうした観点で惜しいと思うのが谷村奈南。スタイルが良いからと、そこを切り口に売り出してしまったから、彼女がどんなにいい歌を歌えたとしても世間はバイアスがかかった目でしかみれない。そもそもダンサブルなナンバーばかりシングルにしているが、彼女が本当に魅力的なのはそういう路線ではないんじゃないか。実はしっかりした歌唱力と音感、そしてソウルを持っているのに。
峰香代子には、avexの先輩(?)たちのような失敗はして欲しくない。路線が違うから大丈夫だとは思うが。
ライブ聞いて、つくづく彼女の素晴らしさは、表現力にあると認識した。バースの一つ一つに、表情をつけている。曲を通じて感情の振幅を表わせる歌手は多いが、彼女は曲の中の単語やフレーズ単位で細かく感情の強弱をつけてる。自信たっぷりに言い切った愛の言葉を、次に少し自信なげに歌い、さらに弱気に歌うなど、曲中で繊細に心が揺れ動いている様が伝わってくる。聞いている僕らは、心を締め付けられる。
楽曲も、曲によって壮大な宇宙観を見せる「ガリレオの夢」や、明るく楽しげな「Mr.Smily」、緊張感漂う名曲「Child」、郷愁と純情を想起させる「ひまわり駅」など聞かせる。「ラブレター」も切なかった。才能あるね。
また、ちょっとした仕草(振付なのかもしれないが)がいい。玉城ちはるが大きな手話(と弾ける笑顔)で、遠くの人にまで感情を伝えようとするのに対し、峰香代は小さな動きでドキッとさせる。それぞれの個性だが、彼女の純情だが芯の強さを秘めている(だろう)キャラクターに合っている。
外見はグラビアやアイドル系ではない。だが、強い意思を感じさせる目力、演歌歌手を思わせる艶、情景を描く指先の動きなど魅力があふれる。誰でも純情だった昔、惹かれずにいられなかった、ちょっと大人な女の子を想起してしまうことだろう。(あ、いや、それは自分の事です。顔も似ていたもので)
ひいおばあちゃんが、『この子は根が真面目すぎるからちょっとだけ心配してるんです』と霊が見える美容師に語ったとか。東京郊外の住宅地で、立派な両親のもとでまっすぐに、大切に、箱入り娘で育てられたんだろうなあ。メジャーデビューしたけれど、俗世間の芥にまみれず、芸能界の魑魅魍魎に惑わされず、このまましなやかに大きくなって欲しいものだ。
それにしても楽曲の幅が広い。音楽的素養の深さを感じるのだが、どんなバックグランドがあるのか、いつか聞いてみたいものだ。
この夜のライブでは他にも、いろいろいいアーティストがいた。明日、そちらは書きたい。