堀川ひとみと一ノ宮頼子と柊奈緒と。鍵盤弾き語りのゾロ目だ。
で、向かったのは池袋でなく、代々木でなく、高田馬場。なんとなく夜景を眺めながらピアノを聴きたかったからってだけの理由。五階にある天窓コンフォートからの馬場の夜景も乙なものだ。そんな夜もある。
いつもはビールかジントニックたが、葡萄酒に。ブーガルの今宵のタイトルが頭にあったからか。それとも疲れてるのかもしれない。
2番手 Cheri から3人聞いた。3人3様、見事に全然違う。この組み合わせで聞いてみたかったんだろうな、今宵の主宰殿は。それぞれを漢字2文字で表すなら、
Cheri 喜悲
モモ 楽闘
一ノ宮 哀闇
だろうか。どう?全然違う感じがわかるかな。
まずCheri。喜びや悲しみが曲中の場面場面で表情豊かに現れる。つられて微笑み、涙が出そうになる。
青田典子似(例えが悪いか?)の男前な美人。カントリーなブーツにインディアン柄(?)のワンピの重ね着が格好いい。何より声の強弱にメリハリがあり、サビでは声がとても伸びやかで楽しげ。ビアノの弾き語りで指使いも表情豊か。笑顔がチャーミング。なるほど。
しかし何より驚いたのはギターテク。4曲をピアノでやり、アコギに持ち替えて歌った夏の曲。ブルース?の出だしで凄い技巧。女性ソロで自分でこれだけ弾けるやついないぜ。やるな~
最後の曲は彼女をして「この曲ができたから今がある」と思い入れを語った「ルナ」。一転、素朴なフォーク。もっとこなれた曲を発売してきた彼女にとり、どんな意味があるのだろう。原点回帰?
続いてモモ登場。倉沢桃子とはまるで違う、ホンワカ明るく楽しげな動物たちの曲の数々。新アルバム「アニマリア」?からのナンバーだ。
動物が歌詞に出てくるからといって、子供向けではない。ゾウの目で、争いを止めない人間たちへ懺悔を促し、ウサギと亀のような競争社会を皮肉る。その歌詞は過激でなく糾弾するわけでなく、暖かい視線を感じる仕上げに。
どれも、みんなの歌で流れても良いレベル。そもそも発声からして合唱やっていたと思われる模範的な感じ。そのため声が柔らかい。
青森県三沢市出身。東北は学校合唱の水準が高いんだよな。みんな真面目に取り組むし。その流れと、米軍基地関係者が多く開放的な住環境が彼女の中で明るい方に結実したようだ。
東北人では珍しい明るさ。MCは大爆笑の連続。昔、馬場に住んでいて、栄通りのコンビニでアルバイトしてたが速効クビになった。テレフォンカードを聞き間違え、客に「エロ本カードありません」と大騒ぎしたから、などなど笑いのネタたっぷり。
しかし、最後の「狼のうた」では、敵にキバを剥け

「年齢順で一番若いから私がラスト。ちがうか」と最後に一ノ宮頼子さんがピアノの前に。雰囲気持っている。鈴木京香というか常盤貴子似の美人。
1曲目はナタリー・コールばりの暗いジャズ。バクダッドカフェのようだね。その後も暗めのカーペンターズ風な曲など英語で囁くように歌う。全てオリジナルなのだろうか。日本語の曲もそう聞こえない。
MCではこの夏、車で大型犬二匹?と1人で、行き先も決めずに日本一周の旅したと回想。夜は車で寝て、行き先は目をつぶり地図を適当に指差して決めるあてどなき彷徨。独り異国の夜に何を想ったのか。
あまり詳しくは語らなかったが医者から自宅で安静療養を申しつかった機会を捉えた旅立ちだったとのこと。
旅の最期に訪れたのが、17年ぶりの丹後の海沿いのお祖母ちゃんの家。かつてのように、機織りの音はもうその町では響いていなかった、と寂しそうに語る表情が印象的だった。
ラストまで闇の中をさ迷うような愁いに包まれたステージ。彼女の声を、言葉をもっと聞きたいと余韻を引いたままの終わりだった。親しければ、この後飲みに行きたいところだったな。