表参道FAB「Flower Voice」ホストの初代、2代に続き、いよいよ6代目・清家千晶 の出番に。
メイコさん、ミヤコさんのそれぞれのステージ後に玉城さんが登場し、それぞれとトークの時間があったのだが、
いじられまくったのが千晶さん。
「ひどいんですよ。トークはお任せねって」(玉城)、「彼女はSだね」(メイコ)、「マイペース人間だから」(ミヤコ)
みたいな突っ込みで場を盛り上げる。いったい、どんなんだろうと、生清家を見たことがなかった自分はちょっと興味深く彼女の出番を待った。
そして3番手に清家千晶が登場。
サポートは大型ウッドベースと、ドラム、ギターの男3人。
フラボということもあって、キュートでポップな衣装。髪もウイッグだと思うけど金髪のマッシュルーム。
ここまでのイメージは、よくいるかわいい声のアイドル風。
前から彼女の名前は知っていて、写真も見たことがあり、多分そうなんだろうと勝手に憶測していた通り。
で、彼女の第一声。 ………おおっ、全然違う 感動だー
決然としていて、哀愁を感じさせる通る力強いハスキーな声。体の芯が揺すぶられる。リズムに合わせて絶妙にビブラートしたり、音階を変えたりするボーカルの素晴らしさに心を奪われる。都会の喧騒の中の孤独感のようなものが心に去来し、彼女の声と詩が作り出す情景が心地よい。基本的に自分は孤独が好きな人間(宴会も大好きだが)だからなのだろうか、琴線に触れる。
ここにも、素晴らしい才能がいた。
最初の曲も良かったが、真ん中辺りで歌った「この体。」(Deep in Soulと、リフレインで歌っていたように聞こえた)と、最後に歌った「スミレ」の迫力に完全にやられた。
聞くものを強く緊張させる切迫感。
「もっと、もっと、もっと、もっと」と自らを果てしない高みへ追い込むような切実感。
内側から外へと噴出するマグマのような力強さ。
そこには、高い城壁をめぐらした清家千晶ワールドの存在を感じる。下手に城郭に触れてはいけない。
触れたら、殴られるか、機嫌を損ねられてしまいそうな。メイコさんの言った「Sだから」ってのもその辺りから来ているのか。
いわゆる芸術家肌なのだろう。クラシックやジャズの世界の音楽家や、アートの世界によくいる。
ピカソのキュービズムの絵は一般人には描けないが、それはそもそもモノや人物が、一般人にはそういう風に見ることができないからだ。だが芸術家本人にはそう見えているそうだ。そして、頭のなかにはすでに完成品ができあがっており、後はそれを上手く取り出すだけだという。ただ、それを取り出すには他人と共同作業しなければならないとすると、大変な困難がつきまとう。他の人と共有できないからだ。0か100のどちらかでないと嫌、となるわけだ。
仮に他の人が違う次元でとらえて、清家千晶の作品を世に送り出そうしたとする。その時、良かれと思って表現などを少し変えられてしまうこともあるだろう。すると、彼女は葛藤しなければならない。それは、つらい。逆に彼女の求めているものを理解して表現できるプレーヤーが周りにいれば、きっと彼女はこの上なく幸せになるだろう。
それでも彼女が彼女らしくあるためには、マイペースでなければいけない。こだわりを強く持ち、対決しなけらばならない。自分自身に正直に、真摯に表現して欲しい。それで良い。
人によっては、自身の表現の実現も大切だが、人とのコミュニケーションや、ビジネス的成功により幸せを感じる人もいる。何に幸せを感じるかは、それぞれの価値観であり、それでよいと思う。十人十色が人間の形作る社会なのだから。それを「和をもって尊しとなす」と画一的にはめ込むのは、組織論的にはありだ。だから飛鳥時代の政権トップともいえる摂政・聖徳太子は十七条憲法の第一条でそう定めたのだろうし、現代においてサラリーマンがそれを求められるのもむべなるかなだ。だが、アーティストに当てはめてはいけない。閑話休題
彼女の評価は好き嫌いが分かれるだろう。どちらかというとダークで、とっつきづらいか。客席と一緒にノリノリという訳ではないから、そういうことを歌手に期待しているライブのファンからは「歌上手いけど、イマイチ」みたいな評価になりそうだ。
しかし、僕は断然好きになった。
第4回Virgin Tokyoのオーディションでグランプリに輝き(前回のグランプリは 鬼束ちひろ)、2001年5月に東芝EMIからデビューを果たし、精力的に活動をしていたらしい。昔から名前だけ知っていたような気がするのは、そのせいだろう。このころの東芝EMIは、そういう歌手が好きだったのかもしれない。
ライブ終了後、「スミレ」の入ったCDありませんか、と物販コーナーで聞いたら「東芝の関係でないです」と言われ、???と思いつつ「Sensitive doll 」を購入。早速アイフォンに入れて、何度も聞いている。ばーっと彼女の描く情景が広がり、心を動かされる曲が多い。you tubeで聞いた「スミレ」もやはり、迫ってくるものがある。
どうしても欲しくなってアマゾンで1stAlbum「サイレンス」を探したところ、中古品しかない。すぐ購入した。届くのが待ち遠しい。でも、現役歌手のアルバムが廃盤って? なんとなく想像していたが、2nd以降はインディーズで発売されている。どうしてなんだろう。
彼女をもっと知りたくてググってみた。
触れてはいけない城壁に触れたくなる。Mかな?(笑)
(この先の引用は長いので、携帯の方は読まない方が良いですよ)
「1979年7月10日生まれ。愛媛県松山市出身 三姉妹の次女として育ち、3才からピアノを始め8歳で詩を書く。子供時代はクラシック(バッハ・シューベルト等)を愛聴し、中学生になってトランペットにも興味を持つ。 高校生になるとギターにも興味を持つのと同時に、自己表現に目覚め、自分の中にある悲しみや優しさを歌いたいと創作活動を開始。卒業後、本格的な音楽活動をするため上京する。デビューに先駆けて、「スミレ~word of air version~」が、東芝EMIより発売され大ヒットしたコンピレーションアルバム「the most relaxing feel 2」に抜擢され多くの反響を得る。そして、19歳の時に初めて書いた「スミレ」で2001年5月にVIRGIN TOKYOよりデビューを飾る。
独特の声や曲でデビューから秋まで多くのLIVE・イベント活動を経て、自分の「音楽」に対する気持ちを再確認する為にその後創作活動にはいる。それは彼女が自分自身のイメージを“音”に具現化するために必要な事でもあった。2002年9月に、1stミニアルバム「浮遊ブルー」を発表。このアルバムは彼女がずっと抱いてきた「自分の音楽とは?」と想い、走り続けてきた“意味”を結実・再確認するアルバムでもあった。同時に、より新しい彼女の音楽が芽生えるような「予感」も同時に感じさせるものとなった。そして、2003年6月。待望のニューシングル「空の鏡」を発表。この曲を聴いて、「スミレ」を、彼女の音楽に今まで触れていた人たちは驚くかもしれない。
しかし、『ここに在る「もの」』はまぎれもなく、“今の清家千晶“である。彼女が今まで見せていた「憂い」の表情とは別に「爽やか」な表情を見せてくれている事にきっと驚くだろう。彼女は常にそして今なお進化しているのだ、という予感を感じさせた。続く、8月20日には新星堂限定での先行シングルとなる「スミレ(deep color ver.)」をリリース、そして9月18日には待望の、この2年間の集大成ともいえる1stアルバム「サイレンス」をリリース。その中のアルバム収録曲「メランコリック」がTOSHIBA WEB STREET(WEBドラマ)の劇中挿入曲として決定するなど、精力的なライヴ活動とともに、大きな反響を得ている」
「触れれば切れる、といった鋭い感触の歌唱は、切迫感をもって聴き手に迫る。使い古された言い方ではあるが、オルタナ世代のシンガー・ソングライターというカテゴライズがシックリくるだろう。そんな清家千晶はストイックなロック・サウンドと抜群の相性をみせ、01年5月に発表されたデビュー・シングル「スミレ」では、赤裸々で無防備な姿をさらけだしている。以降、ナチュラルで普遍的な魅力をもったナンバーなども唄いこなし、その歌唱力の高さを実証。03年9月には満を持しての1stフル・アルバム『サイレンス』を発表している。」
「1979年生まれ、愛媛県松山市出身の女性シンガー。幼少期からピアノ/トランペット/ギター/パーカッションなどさまざまな楽器に触れて育つ。16歳のときに歌手を志し、18歳で上京。同時期より楽曲制作を始める。2001年にシングル「スミレ」でメジャーデビューを果たす。約4年間メジャーシーンで活動した後、2005年にインディーズレーベルから2ndアルバム『Tokyo escape music』」を発表。聴き手を幻想的な世界へと誘う独特の歌声、オルタナ感にあふれたサウンドメイキングが魅力だ。」
オルタナの意味がよくわからん。ウィキによると「型にはまらない」あるいは「既存のポップ・ミュージックの概念を打ち壊す」ということらしい。納得。
彼女の音楽活動には波があるようだ。そりゃあ、彼女のようなタイプにはコンスタントな活躍は難しいかもしれない。でも波があっても、歌い続けて欲しい。「スミレ」のようなとてつもない曲を、「進化」し続けて生み出して欲しい。そして僕はきっと、彼女の活動をこれからずっと気にし続けると思う。