ということで、本日は荻窪メガバックスシアターで、ゆり亜ちゃん
らの「dear friend~引き継いだ文字を想いと共に~」のマチネ。
今回の観劇目的は前記事で書いたように、神山みさの音楽とゆり亜ちゃんなのだが、いやいやどうして、主演の一人、作家役の金本美智子さんの熱演が素晴しかった。もちろん、ゆり亜ちゃん演じるデフォルメされた担当編集者もおもしろかったけど。
もう終演したので、ネタばれOKかな。
舞台はある若者の家に、ある故人の三周忌のために20代後半の研修医とその奥さんの作家、その担当編集者らが集まるところから始まる。それぞれの関係性は、当初あえてぼかし、喜劇的なやり取りが繰り広げられる。それが、出前を頼んだピザ屋の配達人が現れたところから、急展開を始め、隠されていたそれぞれの関係や想い、そして主役が作家となった理由が露わになっていく。
ピザ屋の配達人が故人と瓜二つで、家主の若者がこの日のために常連客になり、医者と作家の夫婦を驚かそうとしたという設定。配達人も夫婦や編集担当と同じ82年生まれの同年齢で、この世代が学生から社会人へと歩みたどり着いた「今」を切り取る。数歳若い後輩で家主の若者が、この世代を距離を置いて評するのがミソ。20代も後半になり、社会人としてそれなりの大人として振舞いながら、予定調和の現実への反発や未達成感、不安などが混在する彼らが瑞々しい(と、その年齢を通り過ぎてかなりたつ自分は思う)。
ピザ屋が無愛想過ぎるとか、その彼を引き止めるために金を払うとか、絵本大賞(?)に内緒で応募したことを知った編集者が異常に怒るとか、ちょっと本や演出に違和感を感じる所も多かったが、そこは演劇。もう少し洗練されるとなお良いんだけど。
世界や生命は、めんめんと引き継がれ、続いていく。「なんとなく」作家になり、「なんとなく」定職につかずピザの配達をしている、強い志向性を持たなかった彼らの世代。それでも、「どうってことのなかった」故人の小さな言葉が、感受性豊かな彼らのなかで大切なものになり、彼女に作家の道を歩ませる。そんな自己肯定的な人生賛歌は、悪くない。
大切なのは「言葉」。それが神山みさの曲「カタチのないもの」と響きあう。みさっちの曲の味わい深さは、やはり「言葉」とその奥にある「祈り」にあるように思う。
そして今回のテーマ曲「あなたは生きて」。生きて何をするのか、自分の人生をしっかり歩もう。もう歩むことができない大切な人の分も…。舞台練習を見て、みさちゃんが何を感じ取り、曲を作ったか、わかる気がする。
で、なんと木曜夜のハッピーカフェの後にレコーディングし、金曜の夜公演までにCD化して発売したのだ。こうと見定めたらすごい駆動力。かなちゃんもご苦労様です。公演後には、舞台にも登場して歌ったそうだ。
お客さんも感じるものがあったのだろう、CDは全て売り切れに。
土曜マチネには一枚もなく、入手できなかった。残念。
(しかも土曜夜に間に合わせて増刷し、そのソワレでもライブしたとか。返すがえす聞けずに残念!)
まあいずれチャンスあるかな。ただ、今週はハッピーカフェないしなあ。(デシジョンでは、チリホットドッグ&ダンスナイトby Johnは開かれるだろうが)