実在するものであれ、想像したものであれ、イメージしたものをただただ忠実に再現する志向を「イメージ忠実主義」とするならば、それとは別のせまり方がまた一方であると思います。
例えば紙を例にして考えてみましょう。折ったり、カットしたりという多様な加工動作の中から、どんな形がそこから工夫できるか、可能な限り試してみるという方法からまず入ります。そして、その紙の特性を充分活かすことのできる表現方法を選び取って行くわけですが、その間、大切なことは、素材と対話し、素材に委ねるという姿勢です。
言い換えると、最初から無理にでも形に収めようとしないで、その素材の声を聞きながら適切な方法を選び取って行くのです。
このように、素材とそれにともなう技術(加工法)があって、そこから何か新鮮なアイディアを導き出すことに重きを置く志向を、仮に「素材中心主義」と呼ぶことにしましょう。
つまり、先にイメージありきではなくて、手で考えながら素材の声を聞き、そこから何が可能となるかを探って行くのです。
したがって、この考え方で行くと、最初からあまり具体的なイメージを強く持たず、持つとしても漠然としたイメージにとどめておいた方が良いということになります。仮に、最初にイメージしたものと素材を通して実現したものとの間に、ギャップがあったとしても、決して悪いことではないと言えます。むしろ、そのギャップにこそ、新しい発見や独創的なアイディアが生まれる余地があるのではないでしょうか?