「わたしって軽い女に思われたんですかね?」と

さみしそうに言われた。

依頼人は26歳にしては、ちょっと落ち着きすぎだ感はあるが、

服装も、話し方も、不器用そうなところは見え隠れするが

けして、軽い女という感じではない。


「なにがあったん?」と聞いてみた。


友達の紹介で、2つ年下の男の子を紹介された。

二回目のデートで、おいしいところがあるから食事に行こうと誘われたら

そこが、会社帰りのリーマンばっかりが集まる、居酒屋さんだったそうな。

カップルは、彼らだけ・・・


個人経営のお店で、たしかに料理はうまかったし、

お酒が好きな彼女は、彼とも話がはずんで、帰りが遅くなってしまった。


暗いから家まで送ってと頼んだら、喜んで彼はついてきた。

彼のほうから手をつなごうとしたり、肩を組もうとしたりしてきて、

彼女は、それを振り払うことでいっぱいいっぱい。

私はそんな女じゃないと、思っているが、そうと言えず、

「やめてよぉ~」と一生懸命言ったのだとか。


家について、「はい、さよなら」と別れるつもりだったが、

彼のほうが、「ごめん、腹が痛いからトイレを貸して」と

ひと問答したあとに、強引に上り込んでしまった。

トイレから出てきて、今度は居間でくつろごうとするので

さすがに、彼女も切れて、半分泣きながら、追い出したそうな。


「そんな軽い男にひっかかるのって、私って、男を見る目がないのでしょうか?」

俺が爆笑中に、彼女は、自分のこと反省しきりなのである。

「いやいや、男ならそれくらいでいいんじゃないかな?

でないと、お付き合いがはじまらないからね」

「でも、2度目のデートで、ひとんちに上り込むなんてありえない」

「ま、そうだね」

「私が、そんな軽い女に見えたのかしら・・・」


真剣なお付き合いの場合、男はまず、昼間のデートに誘いだす。

映画を見たり、同じ趣味を楽しんだりしたあと、軽くお茶をして帰るものなのだ。

夜あったり、酒の席に招くときは、居酒屋ではなく、レストランを選ぶし、

終電まで、つき合わせたりしない。

男のほうが誠意を示すのであれば、

疑われるような行動はとらない。


「なので、居酒屋デートを聞いても、ひょこひょこ行ってしまえば

まあ、軽い女だと思われても仕方ないよね。

男からすれば、夜の誘いにのったら、これは脈ありだと思うし、

ましてや、酒もすすんで、会話もはずんで、家まで送ってくれでは

誘われたも同然だぜ」

「そんな。暗くなって怖いから、送ってもらっただけなのに・・・」

「彼も、オオカミさんかもしれないって思わなかったの?

フツー、そういう関係はごめんだと思えば、ひとり暮らしの家を

そう簡単に教えないし、タクシーで帰りますってしちゃえばよかったんだし」

「お金、なかったんだもん」

「じゃあ、暗くなる前に帰らなくちゃ。(笑)」


はあ~とため息つく彼女に

まあ、今回はたまたま、お付き合するほどの男性ではなかったってだけさ。

彼のほうが、その後、押しかけてくることがないのであれば、

たまたま、変な目に遭っちゃったってだけだよ。

となぐさめた。


「今後、このようなことがないように気を付けます」と丁寧にお礼を言ってくれたが

「いやいや、ちょっと待て。!

それでは、いつまでたっても彼氏もできないで、結婚もできなくなってしまう。

それでいいの?」と突っ込んだ。

「それは嫌です。」

「だったら、昼間、男性を家に入れてもいいぐらいに、いつも掃除をしておこう。

でないと、いつまでも、男性を家に招けないとなれば、

家にひきこんでしまい、出会いがもっとなくなってしまう。

トイレも、どうぞと言える程度にはいつもきれいにしておけば、

それ見て、男は、「この人なら家庭をうまくやってくれるだろう」と判断して

結婚を真剣に考えてくれる。

君だって、草食女子なんだから、向こうからアプローチがないと

いつまでも進展しないだろう?」

「そうですね。やってみます」と納得したようである。


その後、居酒屋に誘ってくれた男に、お付き合いはちょっと・・・と言えずにいたらしいが、

その彼が彼女に、自分の友達を紹介してくれたそうだ。

友達の友達だけあって、気が合うらしく、

縁はどこに転がっているか?わからないものですね。とメールをくれた。