一通り鑑定を終えたところで、

依頼主が、「いいことないかな~」とつぶやいた。


正直、あまりいい気はしない。

ま、占い師を名乗る以上は、何かいいことをおこさないとなのだが、

そういう他力本願に限って、「いいこと」に鈍かったりする。


たとえば、健康な体は、病気をしてみてありがたみがわかるものだが

健康な時は、幸せなこととなかなか気が付きにくい。

金がないとかいいながら、

占い師に相談できるぐらいの稼ぎがあることも、

とてもいいことだ。

明日食べるものに困っている人は、

占い師を必要とはしていても、雇う余裕はないからだ。



そもそも、今回の依頼も

気になる人ができたが・・・というものだった。

ま、この常連、毎度、毎度、違う「気になる人」ができては、

俺が、聞くと、「その人はもういいの」と早々に話を切り上げ

今の、片思いに舞い上がっているものだ。


「あのさ。気になる人ができて、恋がはじまりそうなのは

いいことだと、俺は思うけど、そうじゃないの?」


と聞くと、

話がもとに戻ってしまった。


Fecebookで登録しようとしたときに、

気になる人のアドレスに、同じ苗字の若い女性がいたらしい。


彼女は、

「それが奥さんだったら、わたし、また遊ばれているんじゃないか?って

腹が立って仕方ないんです」という。


俺が、

「母親かもしれないし、妹さんかもしれないじゃん。

確認した?」

と聞くと、


怖くて聞けないという。。。。


俺としても言いたくはなかったが

「ははは。アホか!こういうのは、付き合い始めに、

とっとと聞いてしまうのが、一番いいに決まっている。

付き合って結婚したいなら、なおさら、簡単にできることじゃないと

この先、やっていけねえべさ。家族になる人かもしれないんだし」


と言うと

「そうなんですけど・・・」とうつむく。

「いやだねぇ~。確認もせずに、勝手に想像して腹を立てて

男を疑って、自分勝手に落ち込むなんてさ。めんどくさい」

と笑い飛ばす。

「そうですよね。わたし、めんどくさいかも」

「じゃ、今から、彼に、そのこと書こう。

『わたしは、結婚したいので、いづれは結婚できる方とお付き合いしたいです。

いづれ、家族に紹介してくれますか?』


「え!そんなことできません」

「結婚したいんだろ?」

「でも、付き合い始めで、彼のこともよく知らないし」

「だったら、彼の家族にきけばいい。

彼が、もし、結婚していたら、教えてくれるだろうしさ。

それに、家族に紹介できないカノジョってのは、

遊び道具にされるとみていいからね。

こっちにやましいことがなければ、堂々と会えるはず。

遊ばれるとわかったら、いまなら、別れるのも簡単だろ?」


それで、鑑定を終えて

「いいことないかなあ~」に話は戻るのだが、

彼女が、行動したかどうかはわからない。

ま、俺のところに何も言ってこないところを見ると

まだ、何もしないで、

「いいことないかな~」と思っていることだと思う。