「あっ、じゃあ、辞表は受理したから。きみは今月までということで」と今の職場の上司に言われ、「そんな訳あるかー!」と怒った夢をみた。

 

と、いうことは、わたしは今の職場を気に入っているらしい。

 

「『あるはずのものがない』のと、『ないはずのものがある』のとどっちが怖い?」

ある日友人に訊いた。友人即答。

「そりゃ、『ないはずのものがある』方でしょうが!」

 

「いろいろ手を広げすぎ」と言われそうだが、実はわたし、「翻訳家になりたい人たちのコミュニティ」にも入っている。年会費約1万6千円。トライアルは1件1,500円。

 

何十年も会社で実務翻訳をやっていたくせに、なぜかビジネス文書の成績がめちゃ悪い。

逆に、文芸作品や映画字幕の成績はよい。

 

今月初めて、「映画の吹き替え」のお題が出た。「やってみようかな」

だって、お題が「レベッカ」だったのである。

 

標題はヒッチコックの作品だが、非常に奇妙なサスペンス映画である。

なぜというに、最初から最後までヒロインに名前がない。

 

「わたし」(映画の台本では「女」)は不遇な境遇にいたところ、玉の輿に乗ってさるイケメンの大富豪の後妻となる。

が、館は前妻命だった家政婦お局さまに仕切られており、何かにつけヒロインを「前の奥様は、」と比較して追い詰めていく。

 

前妻のレベッカはもう亡くなっている(ということになっている)のに、「そこらじゅうにいる」。

レベッカの無言の存在感が彼女を恐怖に陥れる。

 

で、ここで急展開。

「レベッカの死体」が海から発見されたのだ。

「ご主人、以前あなたは他の死体を見て『うちの妻です』と言いませんでした?」

窮地に立つ夫。

 

夫の告白を聞いて、妻は自分を取り戻す。「愛する夫を全力で支えなければ。」

しかし世間は「実は夫が殺したのだ」という方向へ傾いていく。

 

で、土壇場がすごいどんでん返し。

最後にレベッカを診察した医師が法廷に呼ばれ、

「レベッカが死んだと聞いて驚きましたか?」

「いや、全然」。

騒然となる傍聴席。

「自殺だと思いました?」

「思いましたよ。だって、」

 

「わたし」、夫、法廷中皆が「え、えーっ!!!」と叫ぶ真実が明らかにされる。

 

「そうだったのか・・・」。

レベッカ、一幕も出てきていないのだが、なにか、壮絶にかっこいい女である。

 

最後が圧巻で、レベッカの死の真相をどうしても受入れられない家政婦と一緒に館がレベッカの幻想もろとも焼け落ちていく。

 

「お話って結局、『ぴりりと締まるべきところが締まればいい』のだな。」

 

翻訳は、

「ああっ口が合っていない」「ああっこの訳が全部入りきらない」

悪戦苦闘の末に昨夜提出しました。