読んだのは子どもの頃なので、「もう絶版になっているかも」と思って調べたら、ちゃんとまだ出ていた。

 

作家浅田次郎の奥さんが、敗戦後満州から子供3人を抱えて引き揚げてくるまでの実話である。

 

途中までは夫と一緒なのだが、夫は「仕事のために残る」と毅然に言い放ったので、それじゃあわたしと子供達はどうなるの・・・と妻絶句する。

 

何せ子供の頃に読んだので細かいエピソードは覚えていないのだが、印象に残ったのは食べるものに困って中国で「物乞い」する話である。

 

「あの・・・なにかください」死ぬ気で老婆に声をかけると、中国人の老婆、「なにも言うな」という仕草をして、

「皆の手前、日本人に食べ物をやることはできない。わたしがこれから捨てるものを拾いなさい」。

 

中国人、懐が深い。

 

中国については悪口を言う人もいるが、戦後中国に取り残された女性も、子供達もちゃんと中国人は世話して育ててくれたんだよね。

 

最後、やっと日本に帰り着き、知り合いの家に辿り着くと、あまりの悲惨な姿に知り合いはぎょっとして誰?という態度。

やっと自分の名を名乗ると、知り合いが、「まあ、あなた、よく・・・」慌てて走り回ってくれる知り合いを見て、「もう死んでもいいんだ」と呟くのは圧巻である。

 

浅田次郎、もともと作家志望だったのが奥さんがこれで有名になったので悔しがって張り合うように作家になったそうで(笑)。

冷たいけれど、「結構ロマンチックないい男」に書かれているんですけどね、あなたは。

 

どこかで見かけたら読んでみてください。