昼間がだんだん長くなる。

「早く働きたいよう」手足をじたばたさせているわたし。

 

BSは思いがけない時間にいい映画をやる。

 

標題は昭和の映画で、高倉健とか三国連太郎とかが出ている。

 

史実に基づいており、日露戦争に備えて青森の八甲田山で「じゃ、雪中行軍の演習やりましょかー。2軍分かれて、途中で会うってのはどうです」「あっ、それいい♪」てなノリで雪の冬山行軍を行った2隊のうち、1隊が悪天候で遭難してほぼ全滅してしまったという話である。

 

今でも名作として名高く、特に吹雪の中さまよって発狂者が出る件はすさまじく(突然笑い出して裸になり、雪の中にダイビングする。これを演じた役者さんは前日、奥さんに電話して「俺あした死ぬかもしれん」と言ったそうです)、睫や髭に氷柱がたっていく。

 

「いやー、あの雪を扇風機で吹雪かせるのは大変でしたでしょう?」

「いや、とんでもない!役者とスタッフ全員で吹雪を待ったんですよ!」

ということで、役者も命がけである。

 

冬山の怖さは冬山を知る者しかわからない・・・というので、2隊のうち高倉健が率いた方は天候がそれほど悪くなかったことと、ちゃんとガイドを頼んでいたことで助かるが、もう1隊の北大路欣也の方と途中で落ち合うはずが、死体の山を見て絶句する。

(これが後で実は死体は全部その前に回収されていたことがわかり、じゃあ、自分の見たものは何だったんだ・・・という、原作者の浅田次郎はこういうエピソードが好きなようである。)

 

収録してみたら4時間だったので苦労して3時間に縮めたということで。

「雪怖い冬山怖い雪山怖い怖い怖い」。

これを見た人は、一生「冬山なんか絶対に行くものか」と心に誓うことでしょう。

 

生き残った高倉健以下も日露戦争で戦死し、原作は確か「八甲田山はひとりも生かしては返さなかったのである」だったと思うが、映画ではただひとり生き残った緒方拳が老いて山を見つめる。この顔がなんともいえないので、「緒方拳、すごい役者さんだったんだな」。

 

ところで原作者の浅田次郎については実はわたしはちゃんと読んだことがないのだが、あまり評価していない。

なぜというに、奥さんが書いた「流れる星は生きている」というのが先にベストセラーになり、それで悔しがって自分も本気出して作家になった。で、会社員やりながら作家をしていたところ、同僚から「仕事しなくても作家で食えるからいいよな」てなことを言われて、泣いて悔しがって会社を辞めて専業作家になった・・・というのをどこかで読んで、

 

「器のちっちぇえ男だなあ。いちいち泣いて悔しがるなよ」

と思っていたのである。

 

この、浅田次郎の奥さんが書いた小説は次の記事で。