新聞に何度も広告が出た。
「もう一度この体でよい。そなたに会えるのならば」。
「話せず、歩いた後には尿の跡が残るため『まいまいつぶろ』(*かたつむり)と呼ばれた将軍がいた」。
2023年の5月に出て12月にもう14版。
めちゃくちゃ売れている。
よかった。
めちゃくちゃよかった。
わくわくしながら「大事に少しずつ読もう」と思っていたのに、2日で読み切ってしまった。
「暴れん坊将軍」で知られる徳川吉宗の長男は首に臍の緒が三重に巻き付いて生れてきてしまったため、重い障害を負ってしまった。足をひきずり、尿を漏らす上に喋る言葉がわからないので、「身体障害の上に知的障害?」と思われていた彼が、ある日その言葉を理解する少年=忠光に出会う。
「ー。」
「将棋がお好きなのですか?」
驚く一同。
「ー。」
「はい、わかりますとも。」
「ー。」
「ありがとうございます!」
当の少年は、「なぜ他の皆が殿のことばをわからない」のがわからないらしく、きょとんとしている。
彼を取り立てたのお大岡越前。
彼が仕えるようになって、家重が実は知的障害でも何でもなく、それどころか非常に賢いことがわかって涙にくれる乳母。
こうして主従は友情と忠誠心で結ばれていくのだが、「廃嫡にして、次男を将軍にしてやろう」という黒い企みが立ちこめる。
「あ、本命の面接の時間だ。」
現場に早く着いたので、カフェで前半の山場を読む。
お嫁さんがきた・・・はいいが、お漏らしをする家重を見て、さすがにショック。
が、陰で嘲笑する家臣達を見て、「ひどいわ!殿が可哀想だわ!」となるので、女心はわからない。
忠光に勧められて手紙を書いてみると、殿、逢い引きの場所に大事に懐に手紙を入れて来てくれるので感激。
「はい」なら手を一度握って。
「いいえ」なら二度握って。
「ロマンチックだなあ。」
姫が輿入れする前に、とげ抜きした薔薇を送り続けるエピソードもいい。
「あっ、面接の時間だ。」
面接を終えて、どこかでお昼を食べたかったが、早く続きを読みたかったので帰宅。
正室のお嫁さんは死んでしまったが、側室とのあいだに男の子(家治)をもうけ、では吉宗さまは引退して家重様が将軍に・・・というところでクライマックス。陰謀にはめられて絶対絶命の危機である。
これを救ったのが、超意外な人物。(教えません。知りたければ読んでね。)
その後も数々の危機を二人は乗り越えていき、相次いで生涯を終えるまでが描かれている。
ちゃんと「悪役」が描けているし、女心の描写もよかった。
直木賞候補作だそうで。
今夜は満足して眠りにつけます。
エンタメとしても、文学作品としても、星五つの作品です。
*追記:これを投稿してから検索して驚いたのだが、作者は女性だそうで。だから女性の気持ちがよく書けていたんですね。