いやー、面白かった!!

 

綿矢りさは19歳で金原ひとみと共に芥川賞を受賞して「史上最年少」と騒がれたが、今まで読んだことはなかった。

 

読んでみて、文章も確かに上手なのだが、

 

「なんてユーモラスな人なんだ!!」

 

作家でなくてもお友だちになりたい。

 

短編集です。

 

『眼帯のミニーマウス』:「プチ整形」をしていることが職場のネタになり、鬱陶しくて仕方がない。が、「こういう顔にしたら?」とアプリで変形された顔を見て気に入ってしまい、「これにする!」

「えっ。」

 

数日後、顔中ぐるぐる巻きにして出社した彼女に周囲はドン引き。

電車に乗っても皆ドン引きで、

「これがほんとの腫れ物扱い」。

 

きゃははははは。

 

先日ランチした友人が、「今、なに読んでるの?」と尋ねてきたので、この下りを教えたら爆笑していた。

 

で、実は整形なんてしていなかったのだが。

包帯を取った彼女に周囲は、「あ、ほんとだ、きれいになっている!」

 

『神田夕』:ツイッターでたまにDMがくると、すぐに「お友だちになりましょう!」

「写真を送ってよ!」の連絡が怒濤のように来て参るのだが。

 

私はネットとかYoutubeに自分の本名とか写真を晒す人の方々が信じられないのだが。

うーん、世の中こういうことになっていたのか・・・。

 

しかし被害に遭った本人が平然としているのがすごい。

で、加害者の方はというと、

 

「世の中、『ネットの中の誰かがいないと生きていけない』時代になっているのかな。」

 

『嫌いなら呼ぶなよ』:ふーん、こういうシチュエーション・・・と読んでいると、途中から流れが突然変わる。

「え?え?そういう設定だったの?(驚愕)」

 

「日本語には主語は必ず使わなくてよい、英語にある一度固有名詞が出てきたらあとは代名詞でよいというルールはない」という決まりがあるので、「そこのところを使ってトリッキーにして、途中から読者を驚かす」というのは私もやったことがあるのだが。

 

(あのですね、いろいろ責められるけど、こっちの頭の中は今こういうことになっていてですね)。

 

主人公の思惑と周囲のずれとがたまらなく可笑しい。

 

『老は害で若も輩』:これも「こちらの脳内が相手のリアクションについていけない」話。

 

作家「綿矢りさ」(*実際にこういうことがあったのかな?)と、ライターとの

「原稿直せ。私はそんなこと言ってない」

「やだ!私にだってライターの矜持がある!」

の怒りのCCメールが行き交う中、右往左往する編集者。

 

「ババァが好き勝手言って・・・」

いや、ババァッたって、二人ともまだ30代なんですけどね。

男性から見たら、30過ぎた女は皆ババアなのね(嘆息)。

 

やがて二人はヒートアップし、矛先は彼に向いていく。

「そもそも、あなたの意見はどうなの?」

「そうそう、それ、私も言いたかった!」

 

えっ、こっちにくるの(悲鳴)。

 

困惑した彼は「会社内で相談させて頂きたく・・・」と返信するのだが、いや、会社員だった私としてはこれは会社員としては至極まっとうな答えだと思うだが、これが二人の怒りに火に油を注ぐ。

 

「ふーん、会社のせいにするんだ!呆れた!!」

 

だってぇ~(悲鳴)。

編集者は会社員で、芸術家じゃないんだから!

会社員の立場っているものがあるんだから!

 

私だって今の仕事、

「あの、これって言ったらものすごく感じが悪いんじゃないかと・・・」

「駄目!会社が言った通りにしなさい!」

のやり取りで日々葛藤しているもの。

 

自分の部屋で慌てふためくうちにカップ麺のお湯がこぼれて停電して彼はパニックになり、

 

夜が明けてふと目が覚めて手元の送信メールを読むと、

「死ねババア」。

 

あーあ、やっちゃったのね(泣き笑い)。

 

話も面白いのだが、

 

「おおっそこ、うまい!」

 

と相の手を入れたくなる表現が盛りだくさん。

 

綿矢りさ、こんなにユーモアがある人だとは思わなかった!

 

ぜひぜひぜひ、もっともっともっと読んでみたいです。