小泉八雲は「ふらっと日本に来て、たちまち日本を気に入って住み着いてしまった人」として知られているが、実はお母さんはギリシャ人、自身にはアラブ人の血も混じっており、アイルランドから出発して一時はアメリカはニューオーリンズに住み、と、なかなかややこしい経歴の持ち主です。

 

代表作はもちろん『怪談』なのだが、一番怖かったのが標題。

 

あらすじはまとめて言うと、

 

「侍が妻が病死する際、『絶対に再婚しないでくれ』と言われていたのに約束を破り、若い後妻を迎えてしまう。すると後妻のところに夜な夜な前妻が化けてでてきて『出て行け。それから私のことは誰にも言うな』と脅す。後妻は泣きながら侍に『離縁してくれ』と願うが、理由を問われて亡霊のことを喋ってしまう。前妻の亡霊は後妻の首を捻りきって殺す」。

 

子供の頃、これを「花村えい子」の挿絵付きで読んで、とても怖かった。

 

が、大人になって、改めて原作を読み直すと。

 

最後に「オチ」があるのである。

 

全部を聞き終わった「私」(八雲自身であろう)が、

 

「それは正しくない。復讐を受けるべきは約束を破った夫の方で、後妻ではない」

と言うと、語り手は、「それは、女の人の考え方ではありません」。

 

不倫を知った時、「男は裏切った妻を殺そうとするが、女は夫を奪った愛人を殺そうとする」そうで。

 

女には男のことはわからないし、男にも女のことはわからないようです。

 

永遠に。