これは図書館で借りたのではなく、なぜか実家にあったので子供の頃に読んだ。

加藤剛がお父さん役で、後に映画になったのを見たけれど、

「昔の子供って、あんなにきれいだったはずないよなー」

というのが映画の感想。

昭和初期の子供なんか、鼻水垂らしていたはずだし。

 

多分、ほとんど作者の自伝です。

幼児期から、青年期まで5巻あるけれど、作者が亡くなってしまって未完になったらしい。

 

子供の頃に読んだ感想は、

「なんて嫌なお母さんだ。」

 

昭和の初期、3人の男の子を設けたお母さんは、

ひとところで言われた「教育ママ」で、

「子供を立派な人間にして、『すごいお母さんだ』と言われたい」

という願望が(本人も気づかずに)あったらしく、

「子供には教育的環境が一番!」

ということで、なぜか長男と次男の次郎を小学校の用務員(だったかな)夫婦に里子に出してしまう。

 

ある程度育ったところで長男を引き取り、

「では次男の次郎も」と思ったところ、

次郎にとっては優しい里親(映画では泉ピン子がだったと思う)が本当の母で、実母は「たまに来ては、ヒステリックに何かわめいているよその女の人」にしか見えない。

 

実母はしびれを切らして、ある夜、引きずるようにして強引に次郎を実家に連れ戻してしまう。

「いい子」の兄と、里子に出されず甘えたい放題に育った弟にはさまれ、「なんとかして『理想の子供』に躾けよう」と躍起になる母と、兄を溺愛して自分を忌み嫌う祖母と暮らす、次郎にとっては地獄の始まり。

救いは、お父さんが(加藤剛が演じるくらいだから)「肝っ玉の大きい大人物」であること。

 

しかし、20歳を過ぎた頃読み返すと、お母さんの気持ちに思い切り感情移入してしまった。

 

1巻の後半、お父さんはいい人過ぎて(「保証人になった」とは、どなたかの書評)資産家の家を傾けてしまい、両親は町中の狭い家に引っ越すため、次郎を母親の実家に預けることにする。

祖父母といとこたちがのびやかで大好きだった次郎は、

「その方がいいや」

ぐらいに思ったのだが、母親がしんみりと言うのを聞いてしまう。

「わたし、あの子をいろんなところに預けて、申し訳なくて・・・」。

(と、いう意味だったと思う。うろ覚えでごめんなさい)

思いがけない母の心情に出会って、驚く次郎。

 

それから親子の間はだんだん「しっとりと」したものになっていき、

やがて病気になったお母さんは、祖母に忌み嫌われて実家に帰されてきてしまう。

 

次郎が心配するも、母はだんだん弱っていき、最後に

「お浜(次郎の里親)に会いたい」

と言う。

 

お浜が飛んでくると、母は、

「子供って、ただ、可愛がってやればいいのね。」

と言う。

お浜には、「その意味はわからないが、気持ちはよくわかった」。

母は続けて、

「わたし、自分が死ぬのは怖くないのよ。

でも、あの子を散々いやな目に遭わせて死ぬなんて、それが申し訳なくて・・・」。

 

21歳の私、ここで号泣。

 

そして母は亡くなり、次郎は偉大なマザコンになり、新しくきた継母にもなじめない。

 

映画は母の死で終わるのだが、2巻は思春期になってきたお兄さんが、

「上の弟ばかり冷たく扱われて、こんなの変だ」

と気づいて一生懸命弟を庇うのが、また良い。

このお兄さんは感受性が強すぎて、後に心を病んでしまう・・・

というのは、作品の最後の方だったか、実話だったか。

 

図書館で読めるのかどうかは知らないが、今amazonを見てみたら、絶版にはなっていないようで、電子書籍でも読めるようです。

 

「今読んでみると、どういう気持ちになるのかな。」

 

「人生で何度も読み返してみたい本」というのはあるようで、これはその中のひとつです。

 

ご興味を持たれた方は、読んでみて下さい。