「卒業生、退場」
その声に我に返った。皆に倣ってあたしも席を立つ。リハーサル通りに整然と退場が続く。
後ろをちょっと振り返る。
みんな進行方向を向いている中、つかさ一人だけが違う方向を見ていた。その視線の先にいるのは美里。確かめるまでもない。あたしたちの三年間は、こんな風に最後まで影踏みごっこの追いかけっこ。
ねえ、つかさ。
君が美里にふられたあの日、どうして君はあたしに会いに来たの? 君は知らないだろうけれど、あの時あたしは、そこにいたんだよ。ふられたって言うのに君は、ふった美里のことばかり気遣ってたね。最後まで。
だからね。
それを知っていたあたしは、君が試合で負けた時に、あたしの前だけで流した涙の意味が解ってしまったんだ。だってあの日の君は、なんていうか、前に進みたいのに進めない、そんな感じだったから。
ねえ、つかさ。
君は知らないだろうけど、あの試合、あたしは見に行っていたんだよ。君が一人で戦っているんだと思うと、いてもたってもいられなくて。走って走って。
聞こえた? 大きな声で「つかさーーー!!」って言ったの、あたしだよ。
出口を出たところで、つかさと目があった。
あたし達は互いに肩をすくめ、少しだけ笑った。
ねえ、つかさ。
それでもやっぱりあたしは、君の背中を追いかけるんじゃなくて、君と並んで、一緒に同じ方向を見て、笑って、泣いた三年間の方が良かったって思う。
君がいたから、君といたから、今、こうやって前を向いていける。ほんとうに思うんだ。
そして、君のことを好きになってよかったって。
ねえ、つかさ。
知ってた?