明らかに広い道路とは?
「明らかに広い道路」って、交差点の事故では大切。
だって直線路が「明らかに広い道路」なら、8対2から交渉スタートで、
接道する道路が同じ道幅だと、7対3から交渉スタートとなるからです。
さて、以前もとり上げましたが、重要な判例があります。
最高裁 昭和45年11月10日
道路交通法36条にいう明らかに幅員の広い道路とは、交差点の入り口から、
交差点の入り口で徐行状態になるために必要な制動距離だけ手前の地点において、
自動車を運転中の通常の自動車運転者が、その判断により、道路の幅員が客観的に
かなり広いと一見して見分けられるもの
これが、一審では
・直接の見通しは著しく悪く、カーブミラーによる視認は
間接的かつその範囲及び明確性において相当程度制限
・丁字路交差点の入り口に角切りが存在すること
・原告車及び被告車が徐行していたこと
これで、客観的にかなり広いと一見して見分けられるものであるとは認められない、
とします。
これが、二審では
・角切りによって各道路の幅員が広がるような形状である
・角切りの内側に進入するまで突き当たり路から直線路への
見通しが著しく悪いこと
に減っています。しかしこの後()カッコ書きの中で、こちらの主張に対する
イイワケの文章が、何と12行にわたって出てきます。
抜粋、要約すると、
仮に控訴人が主張するような幅員となっているとしても、
証拠がないから認められない、です。
私がアニメキャラなら、顔から眼が飛びだして、三倍ぐらいの大きさになって
え~~~ッ
と叫んでいるところでした。
だって直線路の交差点手前、10m弱のところから
突き当たり路の交差点手前、7mと2mのところからそれぞれ、
映した写真を証拠として提出していて、一審ではそれを採用して
範囲及び明確性において相当程度制限、としているのに、
二審ではその証拠がないもの、として扱われているのですから。
しかも、「徐行していたから」という理由が二審では消え、
カーブミラー云々が完全に抜け落ちています。
そもそもカーブミラーが重要と考え、それを意識して写真を撮っています。
でも、裁判長が「見えない」や「不明瞭」とすると、
だったらどうして追加の証拠調べをして、その証拠を再提出させる
なりしなかったのか? と問題になるでしょう。
だから、判決では最初から「なかったもの」にしてしまったのですね。
もし私がアニメキャラだったら、「裁判長、怖ろしい子ッ!」
と叫んでいるところでした。
そして、もしこの判決を拡大解釈すると、カーブミラーで双方を確認するような
交差点では、「明らかに広い道路」など存在しない、となります。
なぜなら直接、目視できないから。
カーブミラーを判断から外すって、そういうこと。
目視で見える範囲しか判断対象にしない、と言っているのです。
特に、今回のように後退で、坂道を下ってきて、バックモニタ―でしか見ていない
被告は「見えないから、明らかに広い道路かなんて
分からないよ」と言えてしまうのですね。目視じゃないから。
でも、被告は
「お互い徐行だったから、交差点のその場限りの道幅で
判断すればいい」と主張していた。
一審は丸々それを採用したのですが、二審では被告の主張すら覆し、
「目視で『一見して』見分けられなきゃダメよ」と変わったのです。
それをカーブミラーには一切ふれず、証拠がないことにして……。
「裁判長、怖ろしい子ッ!」