「こらーっ!! 食べ物をまたぐなー」
ものすごい怒鳴り声です。一瞬、誰が怒鳴ったのか、また誰が怒鳴られたのかも分からず周囲はキョロキョロ見回します。
年配の女性の先生です。普段は優しく、いつもニコニコしている先生です。この事件の後も何事もなかったようにニコニコしていました。
悪ガキが、切り分けられた大量のスイカの入った大きなアルミケースをスイカを持ったまま飛び越えたのです。
本人は、「飛び越えなかったらスイカに足をつっこんでたよ」と心の中で思っていました。
黒姫山のキャンプ場にある大きなロッジでの出来事です。本人はその時の楽しい思い出と、大勢の前で怒鳴られたショックを半世紀たった現在でも忘れません。
しかし、彼はそれ以来どんなことがあっても食べ物をまたぐようなことはなくなりました。怒鳴られたことがトラウマになって心的障害を持ってしまったのかもしれませんが…。
最近では学校だけでなく、会社などでも体罰はもちろん、ちょっとした説教もパワハラなどといって訴えられたりするようです。そのことが世の中が発展した結果ではないということは、最近の耳を疑うような事件を見れば分かります。
どんなことがあっても子供を守るはずの親が幼い子供を虐待するし、時には生命すらも奪うような事件が後をたちません。このような状況から、事件にはなっていないが虐待に苦しむ子供たちは相当な数に上るのではないでしょうか。
それこそ生き地獄です。そのような酷い目にあっている子供達からすれば、多少の体罰などのお叱りも、愛があってのものとなれば羨ましく思うのではないでしょうか。