人気金融商品の落とし穴

「オルカン」と「S&P500」。この2つの金融商品は、投資信託の一種です。投資信託というのは、そもそもが「分散投資」をしている商品なのです。金融のプロがいろんな銘柄を組み合わせるように買って運用しています。

「だったら、S&P500やオールカントリーでも分散投資していることになりませんか?」という声が聞こえてきそうですが、問題はこの2つの商品の投資対象の資産クラスが「株式」に限定されていることです。

これまで、投資対象は、大きく分けて株式、債券、為替商品、不動産、コモディティの5つがあるというお話をしましたが、S&P 500とオールカントリーは国と地域こそ違えども株式だけで構成されている投資信託なのです。

ですから、株式という資産クラスの中ではある程度分散されているけれども、投資対象全体で見ると株式だけに偏ってしまっているのです。株式に集中投資をしているとも言えます。 株式はハイリスク・ハイリターンという特徴があります。そのため、S&P500とオールカントリーはハイリターンが期待できる反面、ハイリスクな商品だということです。

かつて1929年に世界大恐慌というものがありました。当時、米国株がどれくらい下落したかご存じですか?

なんと9割も暴落したのです。

その後、回復するのにかかった期間はなんと25年。株式だけに投資するのはかなりハイリスクなのです。

もし、あなたが65歳のときに、世界大恐慌並の大暴落が起きたとしたら、それが元の価格に回復するころには、あなたは90歳になっているかもしれません。

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だそうですが

タイトルを見て、てっきりS&P500(米国株)に集中投資するのは「愚図な人間」みたいな話かと思ったら


●【質問】オールカントリーよりS&P500が優れているという検証、どう考えますか?
●【回答】データの前で立ち止まるのは「愚図な人間」

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なんと「1929年の世界大恐慌は90%も下がって、回復に25年かかったから、株式だけ投資するのはハイリスク」って話でした

1929年の世界大恐慌からの25年なら1929年~1954年で、列強各国のブロック経済と、マスコミによるフェイクニュースの流布と、それらを引き金とした第二次世界大戦(1939年~1945年)をまるっと含みますし、世界中がお互いのインフラを破壊し合ったんだから、回復が遅くなるのは当たり前です

1929年当時と変わったシステムとして、不況になる前に政府が貨幣に流通量などをコントロールできるようになったり、WTOやIMFといった世界レベルで貿易や通貨を管理する組織ができたり、金本位制から管理通貨制度に変わったりと、市場事態が大きく変わってます


また、1929年当時は投資信託の分別管理も法定義務になっておらず、運用会社が自社で資金管理しながら監査も受けずに客の金を使い込んでたりと、あまりに杜撰な管理状況だったからこそ、規制によって分別管理が徹底されたし、米国では「100万ドル超の純資産を持つ適格投資家(accredited investor)でないと私募は購入できない」等の規制が強化されました(ハワイが舞台の「金持ち父さん、貧乏父さん」に、昔の友人に豪邸で私募の魅力をさんざん語られたキヨサキ氏が「ぼくもその商品を買わせてくれ」と頼んだら、友人に「この商品は適格投資家しか買えない」と言われて「金持ちしか金持ちになれる商品を買えないなんて不公平じゃないか!」と切れるシーンがありました)

https://www.jonesday.com/ja/insights/2020/09/sec-expands-accredited-investor-and-qualified-institutional-buyer-categories

それならば、100年前の大恐慌から回復にかかった25年よりも、最近の〇〇ショックから復帰までの期間のほうがよっぽど参考になるはずです

 

 


1972年のオイルショック時は最大43%資産減少し、4年で回復。
1987年ブラックマンデー時は30%減少し、2年で回復。
2000年のITバブル崩壊と同時多発テロの時は45%減少し、6年で回復。
2007年の世界金融危機・リーマンショック時は50%減少し、5年で回復しました。

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ちなみに、2007年から2008年の金融危機で明るみに出た金融規制欠陥への対応としてバーゼルIIIが2015年までに導入されたように、金融危機を防止するシステムアップデートが繰り返されてます(そのおかげか、2023年のシリコンバレーバンク破綻は小粒に終わりました)

 


2020年コロナショックでは、約1か月間で31%下落しましたが、1年経たずに元の水準まで回復しましたし、次のブラックスワンが何なのかは判りませんが、100年前の大恐慌で回復にかかった25年よりも、近年の5年程度を覚悟したほうが現実的だと思います